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はかせ「なのー、明日よつばととーちゃんがやってくるんだけど」

※日常とよつばとのクロスです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:04:51 ID:OOmjSCEA0

ある日、私が東雲研究所に帰ってくると、玄関先に郵便物があった。
書留郵便。やたらとかさばっている荷物だ。
「はかせ、ただいまー」
「あ、なのおかえりー」
「はかせ、はかせに荷物が届いてましたが。あ・・小岩井さんという人からです。はかせと…」
私が言い終わる前にはかせは引ったくるようにして荷物を手に取った。そして、ご機嫌に机の上に中身を出していく。
堅牢に装幀された分厚い本が1冊、そしてその脇には丁寧にまとめられた書類があった。
「はかせ、…それは、何ですか?」
はかせはすました顔で、はかせは勉強するのですとだけ答え、
椅子にちょこんと腰掛けて、机に身体を向けて本を読み始めた。



はかせ、なの、東雲家、日常

よつば、ぐぬぬ


2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:08:13 ID:OOmjSCEA0

「何の勉強しているんですか?はかせ」
私が机を覗き込むと、はかせは本を閉じてしまった。向こうを向いたまま、胸を張ってはかせは言う。
「これは、なのにはとても難しい勉強なのです」
「そんなに難しいんですか…はかせは何書いてるかわかるんですか」
そこではかせは目を輝かせて、もちろんわかります、はかせははかせなのですからと言った。
子供の無邪気な目だった。私は、まだはかせのこの子供っぽさと、その頭の中にある知識や知能に不思議さを感じたままだ。
まだはかせのことを多く知らない。
ただ私は、この少女の美しい目に惹かれてやまないのだ。


3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:10:00 ID:OOmjSCEA0

はかせは軽快なハミングで、ずっと本を読みふけっている。
阪本さんは我関せずとずっと寝ている。
私も制服を脱ぎ、こたつに入って寝っ転がることにした。
私の知らないはかせの楽しい世界。どんなところなんだろう。
そういえば、小岩井さんという人ははかせとどういう関係なんだろう。
はかせはこの人のこと、何て言ってたっけ…


4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:12:27 ID:OOmjSCEA0

「はかせ、ただいまー。」
「あ、なのおかえりー」
居間に行くと、はかせが居間に立っていた。またご機嫌な表情だ。
「あのねなの、明日とーちゃんがくるから、準備しといてー」
とーちゃんという言葉を聞くのは2度目だ。とーちゃんとは、父親のことだろうか。
だとしたら、はかせの父親のことだろうか。
「?なの何いってんの?とーちゃんはとーちゃんです」
「えっ、だってはかせ、とーちゃんっていうと普通はお父さん…」
「とーちゃんはとーちゃんなんだけど!なのはわけわかんないんだけど!」
はかせはまくしたてる。こうなったら私はもう手に負えないのだ。私は、はいはいと言ってキッチンへと向かった。
明日のお客さんのことについてはかせから色々聞きたかったんだけどな。


5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:15:47 ID:OOmjSCEA0

今日は休日だ。
はかせは朝から機嫌がいい。
「はかせ、今日のお客さんは何時くらいに来られるんですか?ご飯用意したらいいんですか?
だいたい何人来られるんですか?」
「えっとね、とーちゃんでしょ、よつばでしょ、ふたりー!」
「わかりました。じゃあご飯用意しておきます」
よつばというのは誰だろう。私はまず居間を片付けることにした。
はかせが話しかけてくる。
「あのねなの、よつばはね、はかせの親友でー、走るのがすっごく速いの。
こうね、これをこうやったら、うぇーって、こんなことするんだよ」
何か身振りをしてくれるが、よくわからない。話を聞いている限りでは、よつばという子ははかせと同じ歳か、もっと小さいらしい。


7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:18:17 ID:OOmjSCEA0

庭先で音がした。自動車が家の前で止まったようだ。
「とーちゃんだ!よつばが来た!」
はかせがこたつから飛び出す。阪本さんを踏んづけながら、裸足のまま戸口へ出ていく。
門の前のライトバンから人が降りてきた。大人の男性と、緑髪の小さい女の子。
女の子ははかせよりも幼いみたいだ。
「あー!!はかせだーー!!!」女の子がこちらへ全力疾走してくる。
「あ、よつばだー」
「はかせーーげんきにしてたかーーー?」
「はかせはとても元気です。」
「はかせは大きくなったなーーー!おとなのじょせいだなー!」


8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:19:32 ID:OOmjSCEA0

一緒に車を降りてきた背の高い男性が、はかせに軽く会釈をする。
「はかせ、久しぶりですねー。えっと、あれで良かったのかな?」
「あ、とーちゃん、ありがとうございました。」はかせはその人の方へ向き直り、おじぎをする。
はかせの言うとーちゃんとは、彼のことだったのだ。
とーちゃんと話すはかせは、どこか普段よりも大人びてみえた。
もしかしたら、二人の脇で声を張り上げて動き回っている、よつばという子供と比べて見るせいなのかもしれない。
私ははかせよりも幼い子供のことはあまりよくわからないが、もしはかせの代わりにあの子を育てることになれば、
もうちょっと大変なことになるだろうな、と思った。


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:22:17 ID:OOmjSCEA0

私は、親しそうに話をする3人を見ながら、つい考え事にふけってしまっていた。そうだ、お客さんなんだから、私もあの2人に挨拶しないと。
「えっと…小岩井さん…でしたよね…?」
私は「とーちゃん」と呼ばれる男性がそんな名前であったことを、ようやく記憶の底からたぐり寄せてきた。
ふと気がつくと、はかせとよつばちゃんはもう家の中に入ってしまっていた。外には私と彼しかいない。
「あっ、うん…あいつの父親です。うるさくしてしまって悪いねー…」
間近で見ると、より背が高く見えた。長い髪で、遠くを見るような目だった。
何を話していいかわからない。何か言うことがあったはずだが、すっかり忘れてしまった。
私はこういう時に、焦って取り乱してしまう。
「こ、小岩井さん…あの荷物は…何だったん、ですか?」
「ん?あああれ?…はかせが分厚い英語の本持ってきて、それで俺が訳した。
なんせ専門外の本だからねー。こちらもわからん単語がしょっちゅう出てきて、ネットで検索して訳したりしたけど。
ロボットのことなんて、大学の教養でしか習ってねーからなあ…」
はかせはロボットの本を読んでいたのか。はかせはあの時、ロボットの本を読んでいたんだ。私には教えてくれなかったけれど、はかせはロボットについて勉強していたんだ。


12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:24:59 ID:OOmjSCEA0

はかせはどうしてロボットの本を読んでいたんだろう。また私の身体にいたずらをしかけるつもりなんだろうか。

それともまた新しいロボットを作るつもりなんだろうか。ロボットを作るのには、あんな難しい本を読まないと駄目なんだろうか。

私は、そんな難しい本にある知識の集合体なんだろうか。


13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:27:09 ID:OOmjSCEA0

私はまた黙りこくっていたみたいだ。小岩井さんが私にまた話しかける。

「…というわけで、ちょっとお邪魔してもいいかな?」

「あ、はい!すみません、ちょっと長々と立ち話を…」

小岩井さんはちょっと考えたあと、私に尋ねた。

「…もしかして、君が…その、はかせが作ったロボットなの?」

「は、はい!・・あ、あやや、違います!私はですねhks
・・・・どうしてわかったんですか?」

「いや、そのネジ見てそうかなーと思ったんだけど」

あっ!ああ・・・そうだった・・今日の私は一体どうしちゃってるんだろう・・・

「そうか…、ふうん」

「…なのと言います。はかせの研究のお手伝いをしています。よろしくお願いします」

そう、それを初めに言えばよかったんだ。余計な長話なんかしないで。


14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:28:52 ID:OOmjSCEA0

居間はすでに活気にあふれていた。私が部屋をのぞいた時、よつばちゃんははかせのワニの人形を振り回して遊んでいた。

阪本さんはすでに居間を離れ、縁側か和室の方にでも退散していった後だった。

「あ、なのー。よつばになの紹介するねー。
あ、よつばー。はかせの大発明、なのです!じゃっじゃーん」

「おおぉぉ・・・ロボットか?!ロボットなのか?!!!」

「はかせが作ったのです。高性能ロボットなのです」

「すげーーーーーー!!!!!!はかせてんさいだな!!!
なにかうてるのか?!な、はかせ、なにかずばーんてうったりするのか?!」


15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:32:01 ID:OOmjSCEA0

.


16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:33:18 ID:OOmjSCEA0

そこからしばらく先のことは、よく覚えていない。

いつもの事だけど、私はこんな時、無意識に思考をやめるのだ。

とりあえず、笑って、小さいお客さんを楽しませてあげればいいと考えていたかもしれない。

はかせが、数少ない訪問客に嬉々として話す姿を見て、胸が熱くなる心地もしていたかもしれない。

ただ私はこんな時、メモリーにその鮮やかな情景を再び思い返すことができないのだ。

私は考えるのを一時的にやめてしまっていたのだ。なぜかはわからない。

私の右腕からは豆が雨あられと飛び出していたはず。左腕や、頭からも何かが顔を出していた気がする。

背中のネジも重たく感じたこともあった気がする。

ただ、私はこの日も、居間であったことはあんまり覚えていない。

破顔するはかせとよつばちゃん、傍らで見つめる小岩井さんの顔がぼんやりと浮かんでくるだけだ。

そんなに私が気にすることでもないのかもしれないけれど、どうして私はいつもこうなんだろうか…


18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:36:18 ID:OOmjSCEA0

はかせとよつばちゃんは別の遊びに興じ始めた。

私は居間を離れ、小岩井さんを連れてひとしきり部屋の案内をしてから、一緒に縁側に腰掛けた。

阪本さんは案の定縁側の隅に寝そべっていた。スカーフを巻いたままで、また面倒なことになると思ったけど、

さっきの派手すぎる自己紹介の後で、もう何があってもいいという気持ちの方が強かった。

阪本さんは結局、一言もしゃべらないまま、寝そべっていた。


19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:38:02 ID:OOmjSCEA0

小岩井さんは、私に少しずつ話しかけてくれた。高校での日常、テレビの話や、料理のこと。

私は、大人の人とこうして二人で会話をするのは初めてだった。こういう話題でおしゃべりをするのも、とても新鮮なことに思えた。

私がロボットであること、ロボットの姿として日常を生きていることについて、小岩井さんが私に尋ねてくることはなかった。

どうしてかはわからないけれど、驚くほど普通の、平凡な暮らしについての他愛もない話ばかりだった。

でも、小岩井さんと話しているうちに、ずっと心のどこかで身構えていたものが、少しずつずり落ちていった心地がした。

小岩井さんは、まるで私が完全に普通の女子高生であるように、立派な人間として、接してくれた。

それは私にとって、どうしようもなく、嬉しかった。


20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:40:02 ID:OOmjSCEA0

最後に、小岩井さんは最近のはかせのことも少し尋ねてきた。

ネクタイが前と違う色だったね、とか後ろ髪は相変わらず伸ばしたままだね、とか。サメのポスターは相変わらずだね、とか。

少しだけど顔が明るくなったような気がする、あんなに元気いっぱいに話す姿は初めて見たとも言ってくれた。

毎日騒がしい子の面倒をみているので、たまにはお淑やかなお嬢ちゃんとも会ってみたいと思っていたら、普段とそれほど変わらなさそうだった、と。

私が知らない、この人だけが知っているはかせの顔。いつも私を振り回す、あの無邪気でわがままなはかせの元気さが、
私の知らない昔には影を潜めていたというのだろうか。

私が産まれる前のはかせは、一体どんなはかせだったのだろう。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:41:48 ID:OOmjSCEA0

居間には、てんでんばらばらに寝そべる2人の姿があった。

床には、おびただしいサメの絵、それから、見たこともない様々な動物たち、人間たちの描かれた絵が散乱していた。

こたつの周りには用意したコーヒーカップからケーキ皿、スプーン。そしてロールケーキやクッキーの食べかすが床一面に残っていた。

お菓子を落ち着いて食べるひまもなく、2人ではしゃいでいたんだろう。ああ、これから片付けが大変だ。

私は、ふとはかせの机に目をやった。

こたつ周りの惨状とは対照的に、資料が整然と重ねられてある。

真ん中には、英語が書かれた例のいかめしい書物と、日本語で書かれたプリントの紙が半分開かれて置かれていた。

そこに何が書かれているか私にはわからなかったけれど、はかせはこの難解な文章から、
ロボットを創りだす方法を身につけていくのだろう。

私を作ったときのように。


22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:42:57 ID:OOmjSCEA0

机の右の隅っこには、小さな画用紙いっぱいに書かれた、一人の少女の絵があった。
細かな線で、何度も何度も上から書き加えられている。

白と青のセーラー服姿で、背中に大きなネジを付けた、ショートカットの少女。

真下には、大きく「なの」と書かれてあった。

はかせが描いた、私の姿だった。


24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:45:54 ID:OOmjSCEA0

「こんな遠くまでわざわざ来て頂いて、ありがとうございました」

「いやあー、楽しかったよ。よつばもはかせと会えて嬉しそうだったし」

「なのーーーー!!またあおうなーー!!もっとしょうじんするんだぞーーーー!!」

「あ、はい。よつばちゃん、また一緒に遊びましょうね」

「はかせーー!きょうははかせちょっとみなおしたぞー!またこいよーーー!!」

「にへへ。よつばもしっかり勉強して、はかせみたいに賢くなるんですよ」

今日のはかせは、どこかお姉さんぽい。
相生さんが来てくれたときは、抱きついてあんなに名残惜しそうにしていたのに。

「じゃあなーーーーーーー!はかせーーーー!なのーーーー!」


26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:47:59 ID:OOmjSCEA0

「はかせ、よつばちゃん行っちゃいましたね」

「…行っちゃった」

「やっぱり寂しいですか?」

「んー。よつばはいないけど、

…今はなのがいるからさびしくないのです。」

「ふふふ。私もですよ、はかせ。さあ、晩ご飯の買い物に行きましょうね」


たぶん私は、はかせがいるから、大丈夫だろう。

よくわからないけど、はかせがいるから、何とかやっていけると思う。


27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:48:51 ID:OOmjSCEA0

これで終わりっす。
拙作にお付き合いいただきありがとうございました。


29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05 23:56:28 ID:SVUziO3U0

乙乙
良かった


引用元: はかせ「なのー、明日よつばととーちゃんがやってくるんだけど」

[ 2013年04月29日 21:39 ] [二次創作 ナ行]日常 | TB(0) | CM(0)
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