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先輩「無駄話は好きかい?」後輩「…人並みには」

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:17:14 ID:0wcbV7dU0
―1―


先輩「昨日の夜空、眺めてみたかい?」

後輩「いえ、別に」

先輩「とても大きな満月だったんだよ」

後輩「そうですか」

先輩「一般的に『スーパームーン現象』というらしい」

後輩「へぇ」

先輩「真っ暗な空に大きな穴が開いているみたいで、なんだか不思議な気分になれたんだ」

後輩「詩的ですね」

先輩「とっても、綺麗だった」

後輩「良かったですね」

先輩「君にも見てほしかったなぁ」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:23:02 ID:0wcbV7dU0
先輩「月って、日本では造詣深いよね」

後輩「確かによく物語のモチーフや美しさの象徴で例に出ますよね」

先輩「そうだね。特に有名なのは…アレだよ」

後輩「ああ、『月が綺麗ですね』っていう夏目漱石の件ですか」

先輩「いやいや、普通に『かぐや姫』と言おうと思ったんだけど」

後輩「……」

先輩「私にも分かるよ、人と意思疎通がズレたときの絶妙な恥ずかしさ」

後輩「その空気を出す原因になった人が何を言ってるんですか」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:26:10 ID:0wcbV7dU0
―2―


先輩「もうすっかり春だね」

後輩「先輩、もう5月です」

先輩「今年の春は去年よりも暑い気がするよ」

後輩「それ去年も同じこと言ってませんでしたか?」

先輩「そうだっけ?」

後輩「なんかそんな気がします」

先輩「つまりは地球温暖化が年々進んでいるんだろうね」

後輩「僕が思うには、極端に夏と冬が長くなってる感じです」

先輩「ああ、確かにそんな感じはある」

後輩「その反動なのか代わりに春と秋が短くなってますね」

先輩「言えてるね。ちゃんと春めいてきたのが4月過ぎだったと思えば、
   あっという間に桜も散って既に暑さを感じているよ」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:28:57 ID:0wcbV7dU0
先輩「…ちなみにさ、私と君が出会ってから今年は何回目の春になる?」

後輩「なんで恋人同士みたいな話の振り方したんですか」

先輩「何となくだよ」

後輩「今年で3年目です」

先輩「君と初めて会ったのも今くらいの時期だったっけ」

後輩「あれから3年経ったと思うと妙に懐かしいですね」

先輩「最初はゼミの先輩と後輩っていう関係で出会ったなぁ」

後輩「今もその関係に変わりないですけど」

先輩「…つれないところも3年前と全然変わらないね、君は」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:33:57 ID:0wcbV7dU0
先輩「私たちの出会い、覚えてる?」

後輩「はぁ…それはまぁ覚えてないと言えば嘘になりますが」

先輩「回りくどい返事は私以外から嫌われるよ」

後輩「先輩以外の人には割と普通に接していますよ」

先輩「そういえばそうね」

後輩「それに『回りくどい言い回しは嫌いじゃない』って表し方がかなり回りくどいです、先輩」

先輩「いいじゃない、無駄話に回りくどさは付き物でしょう。
   喩えるならビール前のお通しみたいなもの」

後輩(……喩えが下手なのは流石に言っちゃダメだよな)

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:40:02 ID:0wcbV7dU0
先輩「それで、君はちゃんと私との出会いを覚えているんだよね」

後輩「覚えてますよ」

先輩「良かった…覚えていてくれて光栄だよ」

後輩「あんなの、忘れられるわけないでしょう……」




先輩「流石に私も食パンを銜えたまま人にぶつかったのは初めてだったから」

後輩「流石に僕も『遅刻ちこく~』って言いながら、学校内で食パン銜えた人にぶつかったのは初めてでした」

先輩「君の唖然とした顔、今でも目を瞑ると思い出すなぁ」

後輩「ツッコミどころ多すぎて何も考えられなかったんですよ」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:44:27 ID:0wcbV7dU0
―3―


先輩「無駄話の金字塔と言えば」

後輩「言えば?」

先輩「恋の話だね」

後輩「一概にそうとは言い切れないモノだと思うんですが…」

先輩「あの起承転結の『起』と『承』をエンドレスリピートする感じは不毛の一言に尽きると思うんだ。
   ガールズトークの中心部位にして無駄話の金字塔と位置づけてもいいだろう、恋バナは」

後輩「そのガールズに性別が位置づけられている先輩が言うと説得力が違いますね」

先輩「まぁ、そういうワケでだ。早速話そう、恋バナ!」

後輩「どういうワケでそうなったんですか」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:49:17 ID:0wcbV7dU0
後輩「言っときますけど僕は話すの嫌ですからね」

先輩「えー。ノリが悪いなぁ…全く、これだから可愛くない後輩は困る」

後輩「可愛い先輩と一緒にいるから差し引きゼロでいいじゃないですか」

先輩「いいや、それは違うね」

後輩「でしょうね」

先輩「塩分取りすぎた際、その分だけ砂糖取ったから体に問題ないなんて差し引き換算しないだろう?
   君が言ってるのはそういう事さ」

後輩「スイマセン、何を言っているのか割と本気で分かりません」


先輩「それに女の子に『可愛い』なんて平然と使っちゃいけません」

後輩「申し訳ない」

先輩「……照れるからさ」

後輩(あらかわいい)

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:53:49 ID:0wcbV7dU0
先輩「むぅ、そんなに分かりづらい喩えだったかな」

後輩「というよりもさっきの喩えは屁理屈です、先輩」

先輩「お、可愛くない」

後輩「なに『あ、そういえばそうだった』みたいなニュアンスで言ってるんですか」

先輩「うーん、こんな適当な話を適当に流さずに聞く素直さは好きなんだけど」

後輩「…勝手に言っててくださいよ」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 20:59:49 ID:0wcbV7dU0
―4―


先輩「やぁ、今帰り?」

後輩「はい。 今日はサークル早上がりだったので」

先輩「丁度いい。今から一緒に図書館に行かないかい?」

後輩「まぁ別にいいですけど。何か探している文献でもあるんですか?」

先輩「うん」

後輩「どんな本を探してるんですか?
   著者やタイトルが分かっているなら用件も早く済んで助かるんですけれど」

先輩「その辺りに抜かりは無いよ。著者・タイトルの双方はしっかりメモってあるからね」

後輩「へぇ。ちなみにどんなタイトルの本なんですか?」

先輩「『ラヴクラフト全集』さ。家で読み耽るのが今から楽しみだ♪」

後輩(ヤだな……クトゥルフ神話をしれっと探して読み耽ろうとする22歳……)

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:03:57 ID:0wcbV7dU0
―5―


先輩「今度の日曜日に一緒に洋服買いに行こう」

後輩「は?」

先輩「デートしよう、って言ってるのさ」

後輩「何ですか藪から棒に。
   嫌ですよ、僕。一人で行ってきてください」

先輩「えー。 一人だと外出してもつまらないじゃないか」

後輩「知りませんよ……」

先輩「それにメグたんは日曜どうせ暇なんだろう?
   いいじゃないか、寂しい者同士でお揃いの下着でも一緒に買いに行ってみようよ」

後輩「今から無理やりにでも日曜の予定作るんでちょっと待っててください」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:13:30 ID:0wcbV7dU0
先輩「ほぅ、君は私に誘われて嬉しくないのかい?」

後輩「どんだけ自信があればそんな発言が出来るんですか」

先輩「いいじゃないか。暇してるんだろ、暇なんだろ?」

後輩「いやまぁ、それ以上に面倒というか何というか」

先輩「だったら私に構ってもいいだろう。
   私は暇、でも予定有り。君は暇、時間をただただ浪費するだけ。ああ、若い身空でなんと勿体無い。

後輩「えらい言われようですね、僕」

先輩「互いにWIN-WINの提案と思うんだかなぁ。
   様々な点を考慮したとして、効率や生産性を考えると私に付き合うのは妥当。うん、妥当だ」

後輩「……はぁ。それで、集合場所はどうするんですか?」

先輩「お! ようやく観念したか!」

後輩「貴女がこういう絶妙なときだけ頑固なのも、いい加減慣れましたんで」

先輩「はっはっは。諦観は大人への第一歩だ、観念して私に付き合ってくれ、暇人」

後輩「はいはい」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:22:48 ID:0wcbV7dU0
【そして、日曜日】


後輩「遅っそいなぁ、先輩」

後輩「待ち合わせの時間と場所を指定しておきながら、30分も遅刻か」

後輩「……あの人の遅刻って考えると、どうしても食パンが頭を過ぎってしまうのは考え物だな」


「おーい、待たせてすまない」


後輩(お、先輩の声だ)

後輩「全く、遅いですよ、。昼食くらい奢ってくださいよ、せん、ぱ、い………」


先輩「いや、本当にすまない。久々に服をコーディネートしたら遅くなってしまった」


後輩「せ、先輩……」

先輩「ん、どうした? あ、もしかして私のファッションセンスに驚嘆しているのかな」

後輩「……」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:26:24 ID:0wcbV7dU0
先輩「おや、絶句しているところを見ると正解のようだね」

後輩「……」

先輩「まぁ、普段は簡素な上着にGパンだからな。私が本気を出して色気を出すとこんなもんさ。
   あれか、ギャップ萌えというのを感じているのかい?」

後輩「……」


後輩(森ガールっぽいゆるふわ服に、皮ジャンとブーツ重ねるとか……)

後輩(ダサいとか似合わないとか通り越して…凄まじいセンスすぎる……)



後輩「先輩、こういうのも何ですが」

先輩「ん? 何だい? 褒めるのは程ほどにしてくれよ」

後輩「今日は半径3メートル内で歩くをお互い禁止する、というのはどうでしょうか?」

先輩「なんで!?」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:29:57 ID:0wcbV7dU0
―6―


後輩「今更ですけれど」

先輩「なんだい?」

後輩「先輩って、美人ですよね」

先輩「どうしたの? 今日はお金が無いから何もご馳走できないよ」

後輩「いや、別にゴマすったわけじゃなくて。
   少なくとも見てくれは良いのに、何で彼氏いないのかなーって」

先輩「そういう所を本人に聞くのはデリカシーと女子力が足りてないなぁ、君は」

後輩「……言った矢先にアレなんですが、大方の予想はついているんですよ」

先輩「私に彼氏が出来ない理由かい?」

後輩「はい」

先輩「面白いね、とりあえずその理由をオブラートに包んで言ってもらおうか」


後輩「だって先輩、変人ですから」

先輩「『オブラートに包んで』、って言ったじゃないか……」

後輩(変人だという自覚はあったのか……)

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:35:12 ID:0wcbV7dU0
―7―


先輩「春爛漫、だねぇ…」

後輩「だからもう5月ですって」

先輩「お茶の美味しい季節になったもんだ」

後輩「そうですね。お茶の不味い季節があれば教えてほしいくらいです」

先輩「君は緑茶とコーヒー、どっちが好き?」

後輩「難しい質問ですね…強いて言うならコーヒー派でしょうか」

先輩「そうかい」

後輩「ええ」


先輩「ところでさ、美味しい紅茶がある店を見つけたから帰りに寄ってみないかい?」

後輩「メチャクチャどうでもいい二択をさっき答えてしまったんですね、僕」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:43:34 ID:0wcbV7dU0
【店内にて】



後輩「お洒落な喫茶店ですね」

先輩「そうだろう? 外装を一目見たときから気に入ってたんだ」

後輩「へぇ。まぁ外装が綺麗な喫茶店にハズレは少ないですよね」

先輩「あとは…店外のポップとか、外の看板のアンティークさがツボだね」

後輩「どんだけ外装が気に入ってたんですね。店を話す内容のほぼ10割が外ばかりってどうなんですか」

先輩「まぁまぁ。ほら、お薦めの紅茶でも飲んで落ち着きなさい。 すいませーん、注文願います」

後輩「全く……」



店員「ご注文はお決まりですか?」

後輩「オレンジペコ」

店員「そちらのお客様はどうされますか?」

先輩「あ、コーヒーで」

後輩「当人が紅茶を飲まずにどうするんですか」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:46:46 ID:0wcbV7dU0
―8―


ppp~♪ ppp~♪

後輩「……ん? 先輩からメール?」

後輩「『電話した方が早いからメール要らない』とか言ってる人なのに、珍しいこともあるもんだ」

後輩「どれどれ、どんな内容だろう?」



【件名】今暇だよね?

【本文】だから来たんだ



< ピンポーン



後輩「……居留守しよう」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:51:30 ID:0wcbV7dU0
―9―


先輩「やぁ、おはよう」

後輩「おはようございます」

先輩「奇遇だね。今日は講義ないのかい?」

後輩「無いですよ。だからこのままサークルに顔でも出そうかなと」

先輩「もし良かったら少し手伝ってくれない?」

後輩「何をですか?」

先輩「TAの準備」  
        ※Teaching Assistantの略。先生や教授の補助をする事で金一封が貰えるシステム。

後輩「…晩ご飯奢ってくれますか?」

先輩「もちろん!」

後輩「仕方ないですね、ちょっとくらいなら手伝いますよ」

先輩「ああ、やっぱり頼りになる後輩が居てくれると助かるなぁ」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 21:55:15 ID:0wcbV7dU0
後輩「ちなみに、晩ご飯の予定って何なんですか?」

先輩「ん? そりゃもちろん私の作る手料理に決まっているだろう」

後輩「…スイマセン、手伝うのやっぱり無しで」

先輩「なんで!?」

後輩「貴方の作った料理を食べて、毎回お腹を下す僕の身にもなってください」

先輩「むぅ……」


先輩「いつも残さず食べてくれるから、つい作りすぎてしまうのがいけないのかな」

後輩「貴女の作ってくれた料理なら、完食するのが僕の義務です」

先輩「おお、格好いい事を言うねぇ」

後輩(たとえ…どんなに不味くても……)

先輩「何か言ったかい?」

後輩「いいえ、別に」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 22:13:07 ID:0wcbV7dU0
―10―


先輩「この間、DVDの半額レンタル期間を利用して映画を4本観てみたんだ」

後輩「へぇ」

先輩「その内の1本はラブロマンス。タイトルは『ただ君を愛してる』。
   凄くいい映画だったよ」

後輩「借りるチョイスがまるで女の子ですね」

先輩「失敬だな君は。私のどこが女らしくないというんだ」

後輩「…まぁ、確かに見てくれはしっかり女性らしいんですが、何かこう色々残念というか……」

先輩「ゴホン。 まぁ、ただ君と一緒に観たかったなぁというだけの話なんだが」

後輩「…そうですか。何かスイマセン」


後輩「ちなみに、借りた残り3本はどんな映画だったんですか」

先輩「『ベン・ハー』、『ライムライト』、『雨に唄えば』だよ」

後輩「……随分とまぁ渋いチョイスですね。むしろなんで『ただ君を愛してる』を選んだか気になります」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 22:17:21 ID:0wcbV7dU0
―11―


先輩「突然の頼みで申し訳ない、資料製作に必要な計算を手伝ってくれないか」

後輩「…今度どこかでお茶でも奢ってくれれば」

先輩「御安いご用さ」


カリカリカリカリ……カリカリカリカリ……


後輩「内容自体は単純で助かりましたが、これは流石に量が多いですね。
   こんなギリギリまで仕事を溜めちゃダメですよ」

先輩「面目ない」

後輩「またバイトで忙しかったんですか?」

先輩「うん」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 22:20:24 ID:0wcbV7dU0
カリカリカリカリ……カリカリカリカリ……


先輩「君は」

後輩「?」

先輩「なんだかんだ言いながら、いつも助けてくれるね」

後輩「気まぐれです」

先輩「そういう所が大好きだよ」

後輩「馬鹿言ってないで手を動かしてください」

先輩「しかして、何と言うか君はアレだね」

後輩「何ですか」

先輩「芯は良い人なのに、どうにも素直じゃない。 言葉と行動の不一致。これってつまりツンデ(ry

後輩「手ぇ動かせっつってるでしょう」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 22:27:22 ID:0wcbV7dU0
―12―


先輩「寒くなるとね、人は温かいものが恋しくなると言うじゃないか」

後輩「最近はもう暑いって領域に差し掛かってますけれど」

先輩「その理由を知っているかい?」

後輩「…寒いと体に悪いから、暖かいものを欲しがるのは本能的なものじゃないんですか」

先輩「一理あるね」

後輩「勿体ぶらずに教えてくださいよ」

先輩「……まぁ、それは君の心の中に答えがあるんだよ」

後輩「はぐらかし方が下手にも程があるでしょう」


後輩「……ひょっとして、僕の答えが正解だったんですか?」

先輩「……可愛くないなぁ、君は」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 22:37:16 ID:0wcbV7dU0
―13―


先輩「君は音楽とか聴くのかい?」

後輩「気が向いた時に聞く程度ですね」

先輩「なるほどね」

後輩「先輩って音楽に興味ありましたっけ?」

先輩「いや、全然」

後輩「…じゃあ何で話を振ったんですか」

先輩「最近、某大手レンタルショップのCD半額クーポンを手に入れてね。
   せっかくの機会だから君のお薦めでも聞いてみようかと思ってさ」

後輩「先輩ってTSU○AYAとか行くんですね、意外です」

先輩「こういう機会にしか行かないよ。だからこそ、行くときにガッツリ借りてしまうんだ…」

後輩「よくある話じゃないですか」

先輩「貧乏性ならではの苦しみってあるんだね……」

後輩(ああ、あのガッカリ顔…またこの前の、DVD半額4枚を2週間延滞したときを思い出してるんだな……)

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 22:41:47 ID:0wcbV7dU0
後輩「じゃあ、1枚か2枚だけ借りてみてはどうですか?
   借りた枚数が少なければ、万が一返し忘れた際の金銭的ダメージも少ないでしょう?」

先輩「おいおい。私がそんな陳腐なミスを犯すわけないだろう」

後輩「この前『DVD4枚をちょっと返しそびれただけで、あんなにお金取らなくてもいいじゃないか』って
   涙目でブツブツ言ってた知人に聞かせてあげたい台詞ですね」

先輩「……今回は音楽聞く時間が取れそうにないし、1枚だけにしておこうかな」

後輩「賢明です」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 22:49:48 ID:0wcbV7dU0
先輩「それじゃあ、君のお薦め曲かお気に入りアーティストを教えてほしいんだが」

後輩「う~ん。先輩に合うかどうか分からないですが…」

先輩「構わないよ。君の趣味嗜好を知るのは割と好きなんだ」

後輩「……そりゃどうも」



【先輩の自室】

先輩「さて、薦められるままにCDを借りてきたわけだが」

先輩「どんな曲が聴けるんだろうか…存外楽しみだ」

先輩「では早速…CDラジカセ、スイッチ・オン」





http://www.youtube.com/watch?v=naRutIIc_DI




先輩「………」

先輩「うん、確かに、たしかに素晴らしく良い曲だけれど……」

先輩「チョイスが渋すぎるのではないだろうか……」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 22:54:33 ID:0wcbV7dU0
―14―


先輩「ねぇ」

後輩「何ですか?」

先輩「呼んだだけさ」

後輩「そうですか」

先輩「ねぇねぇ」

後輩「はいはい」

先輩「君はいつになれば、私を固有名詞で呼んでくれるのかな?」

後輩「…同じ言葉をそっくりそのまま返していいですか?」

先輩「いつでも呼んでくれていいだんぞ」

後輩「……人の名前呼ぶの、なんか照れくさいんで」

先輩「ふふん」

後輩「何ですか?」

先輩「君のそういう不器用さ。私は好きだよ」

後輩「……その言葉も、そっくりそのまま返します」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:01:56 ID:0wcbV7dU0
―15―


後輩「先輩って、なんか小さい頃があまり想像できませんね」

先輩「失敬だね。昔の私も相当可愛かったぞ」

後輩「まるで今も可愛いみたいに言い切りましたね…」

先輩「なんだ、君は私が可愛くないというのかい?」

後輩「まぁ先輩は可愛いというよりも綺麗ですから」

先輩「………」

後輩「なんで口ごもってるんですか」

先輩「あー、なんだ」

後輩「?」

先輩「…ありがと」

後輩「こっちまで照れくさくなるから勘弁してください」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:05:14 ID:0wcbV7dU0
―16―


先輩「いやしかし、春が来たかと思えば急に暑くなったね」

後輩「そうですね。街中で厚着の人を全然見かけなくなりましたし」

先輩「そろそろ夏に向けての対策をしなければいけないね」

後輩「例えば?」

先輩「クーラーと扇風機の準備かな。あと蚊取り線香」

後輩「あぁ。確かに夏の必須アイテムですね、それ」

先輩「ただこれを準備してしまうと弊害があってね…」

後輩「?」

先輩「快適さのあまり外に出れなくなって引き篭もる。
   コーラを飲んだらゲップが出るくらい確実に」

後輩「ジョセフ乙、って言ってればいいんですかね。この場合は」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:09:00 ID:0wcbV7dU0
―17―


先輩「君はネットゲームで遊んだ事があるかい?」

後輩「いいえ、別に」

先輩「勿体無い。あんな楽しいものは稀有だよ」

後輩「いやいや、一般的に『ダメ人間製造機』みたいな扱いのモノに手を出す気になれませんよ」

先輩「む、それは失礼だな。
   ネットゲームで遊ぶことによって、日々のストレスから解放されている人だっているんだぞ」

後輩「なるほど。そう考えるとさっきの発言は考え無しでした…申し訳ない」

先輩「ネトゲを楽しみ現実逃避…かく言う私もその一人でね」

後輩「よぅ、ダメ人間」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:14:05 ID:0wcbV7dU0
先輩「むぅ…面白いのに」

後輩「一応聞いておきますけれど、一体どんなゲームにハマっちゃってるんですか?」

先輩「これはメグたんもルール覚えたら一発でハマると思うんだけどなぁ……」

後輩「へぇ」

先輩「モノは試しにやってみないかい?」

後輩「タイトルは何ていうんですか?」

先輩「『天鳳』さ。
   自慢じゃないが、コレにハマって学校を1週間自主休校したことだってあるんだぞ」

後輩「僕以外の人前で絶対に自慢しないでくださいね」

先輩「むぅ…そうか」

後輩「とりあえず帰ったら『天鳳』検索してみます」


~帰宅後~


後輩「…………麻雀にハマって学校を1週間サボるって、どうなのさ」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:19:59 ID:0wcbV7dU0
―18―


先輩「この前、新しい漫画の発掘に某古本屋に行ったんだ」

後輩「ブッ○オフですか」

先輩「でもああいう場所に行くと、新規発掘よりも以前見た本に手が伸びちゃって」

後輩「ああ、そういう気持ち分かります」

先輩「そこで懐かしい本を見つけてね。一度読んでいる筈なのについ一気読みしてしまったんだ」

後輩「ちなみに、その本のタイトルは何ていうんですか?」

先輩「『ゴルゴ13』と『カムイ外伝』だよ」

後輩「……チョイスが素敵ですね」

先輩「そうかい? いやぁ、君ならそう言ってくれると思ったよ」

後輩「………はい」

先輩「…苦虫を噛み潰すような顔をしているのは何故なんだい?」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:25:32 ID:0wcbV7dU0
先輩「君はあまり漫画とか読みそうにない感じだね」

後輩「まぁまぁ好きですよ」

先輩「へぇ、意外」

後輩「僕から言わせてもらえば先輩が漫画読むのも意外ですよ」

先輩「そうかな?」

後輩「……愛読書は『はだしのゲン』とかですか?」

先輩「君は私を一体どういう風に捉えているんだ?」

後輩「失礼しました」

先輩「そりゃ私だって年頃の女子だぞ。少女漫画や青年漫画も嗜む程度には読んでいるさ」

後輩「例えば?」

先輩「少女漫画なら『ガラスの仮面』,青年漫画なら『AKIRA』とか好きだなぁ」

後輩「……流石ですね」

先輩「なんで憐憫と諦観の混ざった優しい目で私を見つめてくるんだ、君は」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:33:15 ID:0wcbV7dU0
先輩「そういう君はどんな漫画を読んでいるんだい?」

後輩「そうですねぇ、何があったかなぁ」

先輩「もし君が良ければ何冊か貸してくれないかな?」

後輩「論文やレポートは大丈夫なんですか」

先輩「それはそれ、これはこれさ」

後輩「……さいですか。まさかとは思いますが、僕の貸した漫画が原因で単位落とさないでくださいよ」

先輩「その時は君に責任でも取ってもらおうかな」

後輩「先輩、『自己責任』を前提として漫画をお貸ししますね」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:36:56 ID:0wcbV7dU0
【先輩の自室】

先輩「さて、早速漫画を借りてきたわけだが」

先輩「全部で3冊。どれも全1巻。長く読み耽らないように、という気配りを感じるなぁ」

先輩「1冊目は『さよならさよなら、またあした』」

先輩「2冊目は『Love,Hate,Love』」

先輩「3冊目は『くらしのいずみ』」

先輩「うん、実に楽しみだ。重畳、重畳」


先輩「しかして、ほんといつも世話になってばかりだな…私は」

先輩「この間のCDの時だってそう、ついつい甘えてしまうのは…あの子の人徳って事にしておこう」

先輩「……ん?  しー・でぃー・・・?」


先輩「………やらかした」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:44:06 ID:0wcbV7dU0
~翌日~


後輩「先輩、貸した漫画読みました?」

先輩「ああ。特に1冊目は思わず最後の5ページで涙が零れてしまった。
   本当に良い本をチョイスしてくれたんだね、君は」

後輩「楽しんでいただけたようで何よりです」


後輩「ところで…」

先輩「?」

後輩「なんでそんなに渋々とした顔しているんですか?」

先輩「……1750円」

後輩「はい?」

先輩「……愚かな私が差し出す金額さ」

後輩「……ああ。なるほど。しっかりしているような外見なのに、どんだけおっちょこちょいなんですか」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:50:56 ID:0wcbV7dU0
―19―


先輩「ふと思ったんだけれど」

後輩「はい」

先輩「君は女の子の友人は多いほうかい?」

後輩「いや、いつも貴女と一緒であまり意識した事無いんで分かりませんが。
   まぁ普通じゃないですか」

先輩「あぁ、それは私に友達が少ないというのを揶揄しているのかね?」

後輩「どんな思考でそういう結論になったんですか」

先輩「友達が多いのはいい事だけれど、いつしか恋人が出来るのは些か困るね。
   どうだいメグたん。私と一緒になってみないかい」

後輩「先輩、どうか正気に戻ってください」


後輩「ちなみに今日で徹夜何日目ですか?」

先輩「4日。論文が終わらなくてね」

後輩「…ホットミルクでも作るから少し待っててください」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:56:24 ID:0wcbV7dU0
―20―


先輩「いい天気だね」

後輩「雨ですけど」

先輩「晴れの日ばかりでは、青空の素晴らしさが分からないだろう。
   小さな日々の変化にはこんな雨の日もたまには必要なんだ」

後輩「もう一週間くらい雨模様が続いてますけど」

先輩「それだけ待っていれば、明日くらいに見える青空はさぞ美しいだろうね」

後輩「時期外れの台風来てるから、青空が見えるのなんて当分先ですよ」

先輩「………外で遊べないのは暇だなぁ」

後輩「それが本音ですか。ていうか外に出れないで暇を持て余すとか、貴女本当に何歳ですか」

先輩「むぅ、年頃の女性に年齢の話は禁句だろう。
   それじゃあ君が何か面白い事でも提供してくれると期待していいんだね?」

後輩「別に何も無いですよ。本を読んだり音楽聴いていれば、それだけで楽しいじゃないですか」

先輩「一人上手はいけないな。今こうして二人で居るから出来ることとか無いのかい?」

後輩「無いです」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/10 23:58:53 ID:0wcbV7dU0
先輩「あーあ。君が構ってくれないから、寂しがり屋の私は不貞腐れちゃうぞ」

後輩「勝手に人の家に上がりこんでおきながら、なんちゅう暴君ですか」

先輩「このままだと君の家のタンス漁るくらいしか私の渇きを満たしてくれなさそうだ」

後輩「外は雨だから、雨水でも飲んで渇き癒してくださいよ」

先輩「ついでに口を開けて埃でも食べてかろうじて生きてろってのかい、君は」

後輩「願わくばそのまま帰ってください」

先輩「…ホントにやること無いと眠くなるね」

後輩「それこそ自分の家で寝てくださいよ。僕まだ残しているレポートあるんで」

先輩「終わったら起こしてね」

後輩「いやいや、だから自分の家で」

先輩「zzz……zzz……zzz……」

後輩「の○太くんと肩並べる早さで寝ちゃったよ……」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 00:06:27 ID:0wcbV7dU0
後輩「全く……」


ファサッ


先輩「……おお、あったかい」

後輩「起きたのならそのまま帰ってください」

先輩「……へへ、なんか嬉しいなぁ」

後輩「……さいですか」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 00:10:26 ID:VJc4jOxP0
先輩「君はねぇ、とっても優しいねぇ」

後輩「何ですかそのこっちまで眠くなりそうな声は」

先輩「だから、きっと、君はモテモテになるよ……zz……うん……」

後輩(寝言?)

先輩「いつかねぇ……zzz……きっと、ハーレムとか、出来ちゃうかも……」

後輩「いやいや、ありえませんって」

先輩「その時はね、私の………zzz……zzz……」

後輩「先輩?」


先輩「25歳までに、作る予定の、私のハーレムと………勝負しようね……zzz……zzz……」

後輩「何この野心家。とんでもねぇ」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 00:19:28 ID:VJc4jOxP0
―21―


友人「よぅ」

後輩「なんだ、君か」

友人「なんだとはつれないな。久々に会うってのに」

後輩「週4で授業が被っている奴に久々も何も無いだろう」

友人「ははっ、そりゃ言えてるわ」


友人「で、どうなんだよ?」

後輩「何が?」

友人「とぼけんなって。あの『高嶺の百合』といつも一緒に居るんだろ?
   どっちから告白したんだよ?」

後輩「……ゴメン、誰のこと言っているのか全くピンと来ないんだけれど」

友人「いやいや、先輩の事に決まっているだろが」

後輩「……『高嶺の百合』? あの人が? 君も面白い冗談を言うようになったんだね」

友人「いやマジだって! …ていうか俺ってお前にとって普段どんだけ面白くない奴なんだっつうの」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 00:25:17 ID:VJc4jOxP0
後輩「僕、先輩が高嶺の花みたいな扱いされているのを初めて知ったんだけれど」

友人「まぁあの人の周りに普段から居れば、聞こえる噂も聞こえないわな」

後輩「周りからはどんな点で注目されているのさ?」

友人「まずは…そうだな、端的に言うなら」

後輩「言うなら?」

友人「注目されるのは服だな」

後輩「やっぱりね」

友人「あの人時々果てしなくダサい服を着てくるだろ。まずはそこが評判の切り口か」

後輩「この前は下半身をゴスロリ固めで登校してきたよね」

友人「何故か上半身はレディススーツだったよな」

後輩「あれは流石に僕も衝撃だった」

友人「ああ……見た目が美人なだけに、えげつない衝撃だったぜ」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 00:29:41 ID:VJc4jOxP0
友人「でも普段はジーンズにシャツだろ」

後輩「先輩のユニフォームだから、あのスタイルは」

友人「普通だと野暮ったい感じになるけれど、あの人が着ると様になるんだよな」

後輩「顔立ち綺麗だし、凛としている姿勢だから格好いいよね」

友人「さらに仏頂面がそれを際立たせているんだよなぁ」

後輩「仏頂面、ねぇ…そんな事ないんだけど」

友人「近寄りがたいオーラを醸し出す美人、そりゃ高嶺の花みたいな噂になるだろう」

後輩「……なるほどね」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 00:35:50 ID:VJc4jOxP0
後輩「一つ疑問があるんだ」

友人「おぅ?」

後輩「なんで呼び名が『高嶺の<百合>』なの?」

友人「ああ、それはな。あの人の噂が広がる前に、何人か男共がアプローチに行ったんだよ」

後輩「へぇ」

友人「その中には結構チャラい奴もいたりしてさ」

後輩「…へぇ」

友人「何で面白くない顔してんだよ」

後輩「気にしないで、続けてどうぞ」

友人「へいへい。でな、チャラ男が先輩にアプローチかけた次の日、そいつが校門前で倒れていたんだ」

後輩「急にきな臭くなったね」

友人「半殺しになっていたそいつの顔が真っ白になっててさ。
   うわ言で(すいません…もう近づきません…変なことしそうになってスイマセン…)って言ってたんだとさ」

後輩「『百合』って犠牲者の顔色から捩ってたのか。地味にえげつないあだ名だね……」

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 00:41:03 ID:VJc4jOxP0
友人「ま、そういうワケだ。
   俺はお前の恋路を邪魔するつもりなんぞ微塵もないから、その辺は安心しておきな」

後輩「誤解するなってば」

友人「ははは、悪い悪い」

後輩「全く……」


~数時間後~

先輩「やぁ、授業終わったのかい?」

後輩「はい。今から帰宅するところです」

先輩「じゃあ今から暇って事だね。図書館に付き合ってくれないか」

後輩「いいですけれど、なんでまた?」

先輩「この前の『ラヴクラフト全集』、返却してなくて呼び出されたんだ……」

後輩「僕は貴女ほどの残念美人を見た事ありませんよ…」

先輩「私が美人とかお世辞も上手になったね、君」

後輩「なにサラッと『美人』の前についている二文字を無かったことにしているんですか」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:00:41 ID:VJc4jOxP0
―22―


後輩「それで、結局どうなったんですか?」

先輩「特定文庫の貸し出し2週間禁止だって」

後輩「軽い感じで済んで良かったですね」

先輩「むぅ…もう少しだけ読み漁りたかったんだけど」

後輩「何を読み漁ろうと思っていたんですか?」

先輩「クトゥルフだけど?」

後輩「いや、『何言ってるの当たり前じゃん』みたいな雰囲気だされても困るんですが」

先輩「次はダーレスの小説でも、と思った矢先にこれだよ」

後輩「返却期限を過ぎている時点で矢先どころか矢に刺さっている事に気づいてください」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:06:44 ID:VJc4jOxP0
後輩「そもそも、なんで先輩がクトゥルフに嵌まっているのか謎すぎます」

先輩「ペルソナってゲームでクトゥルフ神話の存在を知ってね」

後輩「はぁ」

先輩「ちょっと気になって調べてみると、どうやら世界で一番新しい神話のようじゃないか」

後輩「……少し語弊はありますが」

先輩「それが私にとっての興味のトリガー」

後輩「ジャンル問わずで雑食なのは結構ですが、あんまりのめりこみ過ぎないようにしてくださいね」

先輩「大丈夫、私がのめり込むのは君だけさ☆」

後輩「……」

先輩「な、なんちゃって……」

後輩「いやもう冗談だって分かってますから。
   その『やっちゃった感』満載で照れるのは勘弁してください」

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:12:09 ID:VJc4jOxP0
―23―


先輩「知ってるかい?」

後輩「知りませんでした」

先輩「……まだ何も言ってないよ」

後輩「意地悪でした、スイマセン。 それで、何がですか?」

先輩「大学で最近話題になっている噂」

後輩「へぇ、その手の話には疎いので全然分からないですね」

先輩「なんでも、チャラチャラした男を襲う化け物が出ているそうだ」

後輩「おお、怖い」

先輩「その化け物の名前っていうのがだね」

後輩「はい」


先輩「【高嶺の百合】というそうだ」

後輩「………ん?」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:15:52 ID:VJc4jOxP0
先輩「なんでも、夜半から朝方にかけて現れるようでね」

後輩「……」

先輩「その間に校門前にいるチャラチャラした男を標的として、襲い掛かるそうだ」

後輩「……」

先輩「私は最近知ったんだが、どうやらこの噂は私の入学当初よりあった話だそうで」

後輩「……」

先輩「いやぁ、流言というのは耳に入らない限り全く分からないものだね」

後輩「……」



後輩「……先輩」

先輩「ん?」

後輩「今日、なんか美味しいものでも奢りますよ」

先輩「なんでそんな優しそうな目で私を見つめてくるんだ、君は」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:20:32 ID:VJc4jOxP0
―24―


先輩「君は友情と愛情の境界を考えた事があるかい?」

後輩「男女間の問題で、永遠のテーゼですね。考えた事だけはあります」

先輩「と、いうと?」

後輩「結論は出ませんでした」

先輩「まぁ、得てしてこういう事柄に明確な答えなんて存在しない。
   人間の感情にまつわるロジックみたいなものだからね」

後輩「そうですね」

先輩「でも、君のことだから自分なりの区別はsているんだろう?」

後輩「まぁ…していないと言えば嘘になります」

先輩「君はこの問題をどんな着地点で捉えているんだい?」

後輩「僕は…そうですね」

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:25:15 ID:VJc4jOxP0
後輩「友情は、信用です」

先輩「ほぅ」

後輩「愛情は、信頼です」

先輩「なるほどね」

後輩「もう少し言葉を変えると…友情は後出しジャンケン、愛情は先出しジャンケンって感じですね」

先輩「む、ちょっと分かりづらいな」

後輩「前者は相手の手の筋が分かるから信用できる。
   後者は信頼しているから自分の手を見せることが出来る、でどうでしょう」

先輩「なるほどね。言わんとしている事柄は理解できたよ」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:33:34 ID:VJc4jOxP0
後輩「先輩は友情と愛情の境界をどう捉えているんですか?」

先輩「私は…そうだね。こう聞かれると言葉に戸惑って、何とも歯痒いなぁ」


先輩「私が思うに、友情と愛情は距離感の問題じゃないかな」

後輩「?」

先輩「例えば、とても親しい間柄の人が二人居たとする」

後輩「はい」

先輩「両方とも死ぬまで一緒に居たいくらい大事な人だ」

後輩「はい」

先輩「でも、片方とは一緒に寝食を共にせず、もう片方とは墓場まで寄り添う」

後輩「……」

先輩「この『差』というか、心の距離感が境界の一つだと私は思うよ」

後輩「曖昧というか、ファジーな回答ですねぇ」

先輩「仕方ないさ。明確な愛が分かれば詩人なんて存在しないんだ」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:38:14 ID:VJc4jOxP0
先輩「それに、今の回答は私の考える『愛』の言葉じゃない」

後輩「そのうちの一つ、みたいな言い回しをしていましたしね」

先輩「お、耳ざといねぇ」

後輩「……はいはい」

先輩「ま、先達もこう言ってるじゃないか」

後輩「?」

先輩「愛は、この世に存在する。きっと、ある。見つからぬのは愛の表現である。その作法である」

後輩「太宰治ですね」

先輩「よく知っているねぇ。久々に図書館で太宰治でも読んでみるかい?」

後輩「先輩、今貸し出し禁止でしょうに」

先輩「……よく覚えてたねぇ」

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:42:53 ID:VJc4jOxP0
―25―

先輩「昨日、変な夢を見たんだ」

後輩「どんな夢ですか?」

先輩「君と私が。こう、アレだよ…」

後輩「アレって何ですか」

先輩「き…あー、いや、せっ……」

後輩「き? せ?」

先輩「せっ………ぷ………んを、だね」

後輩「なんですか、それ」

先輩「な、なんですかとは辛辣だねぇ…けっこう恥ずかしい夢だったんだよ」

後輩「でもですね、先輩」

先輩「ん?」

後輩「夢というのは記憶処理と願望処理を脳内で繰り広げているらしいですよ」

先輩「……」

後輩「だから、僕とですね……」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:46:06 ID:VJc4jOxP0
先輩「あー! ちょ、ちょっと待ってくれ!」

後輩「なんですか?」

先輩「いやだってホラ、そういうのはそういう関係じゃないと駄目だろう!」

後輩「何を言ってるんですか。僕らはそういう関係でしょう?」

先輩「あ、あれ? そ、そうだっけ?」

後輩「だから…ほら、いいですよね」

先輩「え、あ、ちょ、まっ………」



pppp~♪  pppp~♪


先輩「待ってえええええええええええ~~~!!」

先輩「……はぁ」

先輩「……夢、か」

先輩「びびった、メチャクチャびびってしまった……」

108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:49:09 ID:VJc4jOxP0
先輩「ってな夢を見てしまったんだよ」

後輩「先輩……夢というのは記憶処理と願望処理を脳内で繰り広げているらしいですよ」

先輩「へっ?」

後輩「だから、僕とですね……」

先輩「え、あ、ちょ、何なんだこれ」

後輩「だから…ほら、いいですよね」

先輩「え、あ、ちょ、まっ………」


pppp~♪  pppp~♪


先輩「待ってえええええええええええ~~~!!」

先輩「……また、夢か」


――――――


先輩「と、いう夢を24回ほど繰り返し見続けてしまったんだ」

後輩「もう完全に『世にも奇妙な物語』の世界ですよ、それ」

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 01:57:18 ID:VJc4jOxP0
―26―


【喫茶店にて】


先輩「君は甘いものが好きかい?」

後輩「いや、まぁ嫌いではないですが」

先輩「私は大好きだ」

後輩「さいですか」

先輩「ぶっちゃけると、今君が食べようとしているショートケーキが凄く食べたい」

後輩「さっき思いっきりモンブラン食べていたじゃないですか」

先輩「勿論タダで奪おうというワケじゃない、ちょっとしたゲームをしよう」

後輩「奪うとか物騒ですね…で、そのゲームっての何ですか?」

先輩「単純な内容だ。
   『私はショートケーキの苺は先に食べる派か最後に食べる派かどうか』を当てるだけさ」

後輩「いや、それだと僕思いっきり不利じゃないですか。
   僕が答えを言った後で逆の答えを言えば先輩勝ちでしょう」

先輩「そんなズルはしないよ。まず答えを先にナプキンに書いて裏返しておくのをルールに加えよう」

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 02:02:58 ID:VJc4jOxP0
後輩「それで、もう少し詳細を話しましょう」

先輩「よし、ではこうしよう。
   君は1つだけ質問をしていい。私はそれにYESかNOで正直に答える」

後輩「……質問内容は?」

先輩「制限無し。君なりに1つだけで回答を導き出せるものを考えてくれ」

後輩「なるほど、じゃあ僕の質問は一つだけです」

先輩「……ほぅ。いいんだね、確認するけど間違えたらケーキ貰うよ」

後輩「ご自由に」

先輩「随分自信あるみたいだね、受けて立とうじゃないか」

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 02:06:21 ID:VJc4jOxP0
後輩「先輩、『ケーキの苺は先に食べますか?』」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……NO、だ」

後輩「はい、じゃあ先輩はケーキの苺を最後に取っておく派でファイナルアンサー」

先輩「……」

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 02:10:01 ID:VJc4jOxP0
~数分後~


先輩「いや、美味しかった。やっぱりショートケーキとコーヒーは相性ばっちりだな」

後輩「……」

先輩「ん、どうしたんだい? 苦瓜を初めて食べた子供みたいな顔をして」

後輩「……納得いかない」

先輩「何を言ってるんだ。そういうゲームだったじゃないか」

後輩「……それでも、納得いかない」

先輩「言っただろう、苺を食べるのは先か後か『どうか』って♪」

後輩「屁理屈だぁー!」



つ 【答え】  ケーキと苺を一緒に食べる派 

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 02:15:07 ID:VJc4jOxP0
―LAST―


先輩「今日はこの辺で帰ろうか」

後輩「そうですね」

先輩「なんだかんだで、君とはいつも一緒に居る気がするなぁ」

後輩「そうですか?」

先輩「気のせいかな」

後輩「どうでしょう」

先輩「これだけ一緒に居ると、夢でも会いそうだね」

後輩「僕は結構な頻度で会ってますけどね」

先輩「へぇ」

後輩「はい」

先輩「……なんでだろうね。ほんと、なんでだろう」

後輩「?」

先輩「今の君の一言、なんだか、凄く……嬉しかったんだ」

後輩「さいですか」

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 02:18:48 ID:VJc4jOxP0
先輩「夢の中での私と君は、どんな感じなの?」

後輩「どんなもこんなも、いつもどおりですよ」

先輩「例えば?」

後輩「どっかで座って話したり、休日に出かけて喋ってたり、あとは…何か会話したり」

先輩「はは、なんだいそれ。結局ずっと喋ってばかりじゃないか」

後輩「……言われてみれば、そうですね」

先輩「つまるところ、君は寝ても覚めても夢を見ている感覚なのかな?」

後輩「むしろ、眠りながら現実を生きている感じですね」

先輩「いいね、それ。なんだか……凄くいいね」

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 02:23:16 ID:VJc4jOxP0
先輩「たまには私の夢の中に出てきてもいいんだよ?」

後輩「聞いたところだと、同じ内容で先輩の夢に僕はかなり出てきてたみたいですが」

先輩「……あれは君じゃないね。あんなに強引な君は、君じゃないなぁ」

後輩「…よく分からないけれど、そうなんですか」

先輩「また、夢の中で君とくだらない話を繰り広げたいなぁ」

後輩「僕はそろそろ夢の中でも雑談なんて勘弁願いたいもんです」

先輩「ねぇ、メグたん」

後輩「なんですか?」


先輩「無駄話は、好きかい?」

後輩「…人並みには」



―FIN―

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 02:31:40 ID:VJc4jOxP0
ネタがあればいくらでも話は続き、
話のどこかで引き際があれば収束する。

寄せては返す波によく似ていて。
無駄話っていうのは、得てしてそういうものです。

久々に書いたSSで非常に楽しかったです。
お付き合い頂いて有難う御座いました。
おやすみなさい。

【スレの〆曲】


http://www.youtube.com/watch?v=J1IjJaHJL-g


123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/11 02:41:54 ID:qe5rsgBx0
最高だった

引用元: 先輩「無駄話は好きかい?」後輩「…人並みには」

[ 2013年10月13日 12:00 ] [オリジナル]先輩・後輩 | TB(0) | CM(0)
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