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少年「悪魔の娘?」 少女「人殺しの化物?」

※エロ注意

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:09:09 ID:5K6cN7w.
 昔々、人殺しの化物がありました。

 気の狂った魔術師に創られたそれは、人ではありません。
 その手は、剣を砕き、鎧を千切り、肉を握り潰します。
 その脚は弓撃つよりも疾く、一度出逢えば、背を向け逃げ出すことすら許しはしないのです。

 軍国主義からも淘汰された、余りに倫理から掛け離れた存在。
 人々は恐れ、何度も破壊を試みました。

 しかし、その全ては徒労に過ぎませんでした。
 人々が立ち上がった分だけ、戦った数だけ、屍が積み重なるだけだったのです。

 屍の数だけ、魔術師のおぞましい笑い声が世界に響きました。


 しかし、絶望に塗れたある日、魔術師と化物ははたとその姿を消してしまうのです。
 その行方を知る者は、誰一人居ませんでした。

 そして、世界に平和が訪れたのでした。


(本作品は、おまけ程度ではありますがアダルトシーンを含みます。フェチの要素も含みますので、閲覧の際はご注意ください)

2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:10:15 ID:5K6cN7w.
<とある町の外れ、そよ風吹く丘の上の教会>

司祭「皆様、本日はようこそお出でくださいました。皆様の温かなご協力、主もお喜びのことでしょう」


傭兵A「ぁー、どうも。御託は良いからさ、司祭さん。仕事の内容、早いとこ詳しく教えてくれないかな」

傭兵B「そうだぜぇ、ジジイ。少ねぇ報酬でわざわざ来てやってんだ」ケケッ

傭兵C「……お前、失礼だぞ」

傭兵B「そらすーませんねぇ」ヘッ


司祭「えぇ、えぇ。何分急なもので、資金が立ち回らなく、本当に申し訳ない限り……」ペコペコ

傭兵A「司祭さん。そうゆうのは良いから、早く仕事の内容を」

司祭「いやはや、本当に申し訳ございません。それでは、早速」ペコペコ

傭兵A(ったく、調子狂うぜ……)ハァ

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:10:55 ID:5K6cN7w.
司祭「……この教会には、『悪魔の娘』とされる少女がいます」

傭兵B「悪魔の娘ぇ? んだそりゃ、角がにょっきり飛び出た女でも居るのかよ」

司祭「こちらへ来なさい」


「……はい」


 静かな声が響く。

 傭兵たちが声の方を振り返ると、そこには、粗末な麻の服に身を包んだ少女が立っていた。
 柔らかそうな肌は、まるで丘に降り積もる新雪のように白く、触れば溶けてしまうような儚さを感じさせた。絹糸を梳いたような白銀の髪は、彼女の腰元までまっすぐに伸び煌めいている。
 少し釣りがちの双眼に包まれたルビー色の瞳と相まって、その姿は、一流の職人が手がけた人形かと錯覚してしまう程。
 それが故に、まだ成熟しきってはいない身体に包まれているぼろぼろの麻の服が、傭兵たちには不釣り合いに感じてならなかった。
 
 しかし、それにも関わらず、誰もが思うのだった。
 彼女は美しい、と。

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:11:39 ID:5K6cN7w.
コツ コツ コツ...

少女「…………」ペコリ

司祭「この娘です。名は、少女と申します」

傭兵A「この、嬢ちゃんが……?」

傭兵C「どう見ても、いや確かに美しいが、それ以外はただの年頃の町娘にしか見えないが」

司祭「詳しいことは申し上げられません。ただ確かなことは、彼女が確かに『悪魔の娘』だということ、それだけです」

傭兵C「あ、いや、済まない。疑うつもりはないんだ」

司祭「えぇ、えぇ。こちらこそ、詳しいことを申し上げられなくて誠に……」ペコペコ

傭兵A(まーた始まったよ……)

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:12:16 ID:5K6cN7w.
傭兵B「へへっ、どっちでも良いじゃねぇか! 見ろよぉ、こんな可愛い子ちゃん、町中探してもそうそう居ないぜぇ?」ズイッ

少女「っ」ビクッ

傭兵A「おい、止せ。怯えてるぞ」ハァ

少女「……っ」プルプル


傭兵C「あぁもう! お前はさっきから何なんだ!? やる気がないならここから出て行け!!」

傭兵B「ぁ? んだ、テメェ? やる気か……ッ?」ヘッ

傭兵C「それでお前が出て行ってくれるなら、いくらでもな……ッ!」キッ

司祭「おぉ、おぉ! お二方、争いはお止めを……」オロオロ

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:12:50 ID:5K6cN7w.
傭兵A「止せよ、お前ら」スッ

傭兵B「んだよ、オラ。横からしゃしゃり出てくんじゃ……」
傭兵C「しかし……ッ!」


傭兵A「そんなに喧嘩がしたいなら、俺が相手してやる……ッ」ギロッ

傭兵B・C「ッ!?」ビクッ

傭兵A「どっちからだ? それとも、まとめて相手してやろうか……ッ!?」

傭兵B「じょ、冗談に決まってるだろぉ? 本気にすんじゃねーよっ、旦那ぁ」ハハハ...
傭兵C「っ……。済まない、熱くなり過ぎた」

傭兵A「二度とすんな。くだらねぇ」ハァ

傭兵B・C「…………」


傭兵A「俺たちはここにかき集められたメンバー、全員が初対面だ。反りが合わないってのも無理はねぇ。それでも、仕事が始まれば一つのチームとして動く。相応の付き合い方ってモンがあるだろうよ」

傭兵A「傭兵"4"人、仲良くしなくちゃなぁ?」

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:13:26 ID:5K6cN7w.
傭兵A「なぁ、ボウズ。お前もそう思うよな?」ニッ

少年「……うん」コクッ

傭兵A「おぉ、分かるか! 偉いぞ」ワシワシ

少年「っんぅ、……止めて」グワングワン


傭兵B(こんな餓鬼がねぇ……傭兵ギルド、気でも狂ったか?)

傭兵C(この娘とほとんど変わらない年じゃないか……)


 二人の傭兵は、頭を乱暴に撫でられ目を回している少年を、訝しげな表情で見つめていた。
 彼らの眼差しに疑問の念が混じるのも無理はない。少年は、傭兵などとはおよそ思えない程、小さく可愛らしい容姿をしていたのだから。

 くりくりとした丸い眼、その中で静かに光る空色の瞳。肩の少し上まで伸びた亜麻色の髪は、散々撫でくり回されてぐしゃぐしゃに乱れてしまっていた。
 彼らがどう観察しても、少年が帯剣している様子はない。彼が身に纏う、厚手のもこもことしたハンターローブですら、戦闘用の物とは思えなくなってしまう。
 身体も細く、背丈も少女と同じ程。柔らかな雰囲気を纏っている分、少年の方が年下に見えてしまってならないのだった。

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:14:00 ID:5K6cN7w.
傭兵A「さぁ、司祭さん。話をぶった切って済まなかった。早いとこ、仕事の内容を教えてくれ」

司祭「えぇ、えぇ。それでは、皆様には」


司祭「彼女の、護衛をお願いしたいのでございます」

傭兵A「ほう?」


傭兵C「……護衛ってことは、誰かに狙われている、と言うことか?」

司祭「おっしゃる通りでございます。はっきり誰とまでは分かりませんが……。私共教会は、それ自体が巨大な組織。中には、良からぬことを考えている輩も……」

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:14:43 ID:5K6cN7w.
傭兵A「あぁ、良い良い。どこも事情はあるだろうさ。とにかく、何者かがこの嬢ちゃんを狙っている。俺たちはそれを護る。そうゆうことだろ?」

司祭「おぉ、おぉ! お引き受けくださいますか!」

傭兵A「その為に来てるんだしよ。で、お前らは?」

傭兵C「こんな若い娘が狙われているとあれば、引き受けない道理はない」

傭兵B「けっ、フェミニストが。……安かろう、楽かろうってか。まぁ、良いぜ」


傭兵A「ボウズ、お前は?」

少年「……僕も、受けるよ」

傭兵A「おぉ、そうか! 偉いぞ」ワシワシ

少年「っんぅ、……止めて」グワングワン


司祭「おぉ、おぉ! 皆様、誠に、誠にありがとうございます!」ペコペコ

少女「…………」

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:15:20 ID:5K6cN7w.
<町を見下ろす窓付きの部屋>

傭兵A「と言うわけで、おさらいだ」

傭兵B「……ったりぃ」

傭兵C「またお前は、そうやって……」

少年「…………」


傭兵A「任務は、娘の護衛。期限は未定、報酬は日毎に入る。飽きたからって、途中で抜け出すんじゃねーぞ、B」

傭兵B「な、何で俺に言うんだよ、旦那ぁ!」アセアセ

傭兵C「それで、具体的にどうするんだ?」

傭兵A「司祭さんから教会の見取り図を貰ってきた」バサッ

傭兵B(畜生、無視かよ……)

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:15:58 ID:5K6cN7w.
傭兵A「嬢ちゃんの部屋は、ここだ。この一件が落ち着くまで、部屋に篭もらせておくらしい」スッ

傭兵B「自由に出歩きも出来ないたぁ、難儀なこった」ヘッ

傭兵A「仕方ねぇさ。んで、この教会には二箇所出入り口がある。正門と、裏口だ」

傭兵C「まずは、そこを見張るということか」

傭兵A「そうゆうこと。後一人が嬢ちゃんの部屋、残り一人が休憩。たった四人だ、これぐらいしか出来ねぇ」

傭兵B「おう、分かったぜ! 俺が休憩役ってことだな!」

傭兵A「交代に決まってるだろうが、ダァホ!」


少年「…………」

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:16:34 ID:5K6cN7w.
<一本の蝋燭が仄かに照らす部屋>

司祭「それでは、何かあったら傭兵の皆様に」

少女「……はい」

司祭「皆様に失礼のないように」

少女「……はい」

ギッ...バタン...


少女「……はぁ」ギシッ

13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:17:09 ID:5K6cN7w.
少女「護衛、か……」

少女(そんなの、要らない……)


少女(私は、これからどうなるの?)

少女(誰かにさらわれる。誰かに殺される。このまま、教会でいつもの日々)


少女(なんだ。どれも変わらないじゃない……)

少女(結局、死んでも、生きても、変わらない)

少女(……どれも、最悪の日々)

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:17:45 ID:5K6cN7w.
コン コン

少女「……はい」

ガチャッ...ギィッ...


少年「こんにちは」

少女「……こんにちは」

少年「…………」

少女「…………」

少年「…………」

少女「……何か、ご用ですか」

少年「ぇ? あっ、えぇと」

少女「えぇ」

少年「今日から君を護衛する、傭兵の一人だよ。よろしく」

少女「知ってます。私、あの場に居たでしょう」

少年「ぇ、あっ。そうか」

少女(何だって言うの)ハァ

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:18:22 ID:5K6cN7w.
少年「君は、僕たちが護るから。だから、安心して」ニコッ

少女「……それは、どうも」


少女「部屋の中じゃなくちゃ、いけないんですか」

少年「ぇ?」

少女「この部屋、見ての通り窓がありません。別に、部屋の中に居て貰わなくても」

少年「そうだね」

少女「そうだね、って……」

少年「外に居たら、退屈でしょ?」

少女「そうですね」

少年「中に居たら、君が居るでしょ?」

少女「そうですね。で?」

少年「話し相手が居る」ニコッ

少女「……はぁ」


少女(この人、変……)

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:19:04 ID:5K6cN7w.
少年「…………」

少女「…………」

少年「…………」

少女「…………」

少年「…………」

少女(……話したいんじゃなかったっけ)イライラ


少年「……君は」

少女「何です」


少年「どうして、外に出ないの?」

少女「……は?」ピクッ

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:19:36 ID:5K6cN7w.
少年「君は、本当に悪魔の娘? 僕には、ただの人間にしか見えない」

少女「…………」

少年「君への扱いは、絶対におかしいよ」

少女「…………」

少年「ここに居るから、おかしくなっちゃったんじゃないかな」

少女「……で……」

少年「君は、外に出れば良い。好きに歩いて、好きに生きてゆけば良い。そうすれば、今のように不自由はしないはずだよ」

少女「……け……いで……ッ」

少年「だって、君は人間なんだか――」


少女「――ふざけないでッッ!!!」

少年「っ!?」

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:20:32 ID:5K6cN7w.
少女「貴方、何様のつもり……ッ!!?」ガタッ

少年「そんな、僕は、別に……」

少女「人の気も知らないで、突然都合の良いことをべらべらと……ッ!!」


少女「私だって、私だって……ッ!! そんなこと、そんな、こ……と……?」

少年「……?」

少女「……私は。私、は…………?」

少年「……大丈夫? 気分でも」

少女「っ! 触らないで」

少年「っ……!」ピクッ

少女「……お願い。出て行って」

少年「っ……ぁ……」

少女「見張りなら、部屋の外でして」

少年「…………」


少年「……うん」

19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:21:07 ID:5K6cN7w.
ギィッ...バタン...

『だって、君は人間なんだか――』

少女「ッ……!」ギリッ

少女「出来る訳、ないじゃない……ッ」


少女「私は、『人間』じゃないんだから……ッ!」


少女「…………」ドサッ

『君は、外に出れば良い。好きに歩いて、好きに生きてゆけば良い』

少女「……私」

『……どれも、最悪の日々』


少女「そんなこと、考えたこともなかった」

少女「外、か……」ギシッ

少女「ぁ……。窓、ないんだった……」

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:21:42 ID:5K6cN7w.
<燭台が整列する石造りの廊下>

少年「……はぁ」

『触らないで』

少年「っ……」ギュッ...

少年「……違う」フルフル

少年「そう言う意味で言われたんじゃない……」

少年「大丈夫」

少年「……大丈夫…………」


少年「……ふぅ」

『人の気も知らないで、都合の良いことをべらべらと……ッ!!』

少年「本当、だよね」


少年「『人間』の気持ちなんて、僕には分からないよ……」

21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:22:19 ID:5K6cN7w.
<町を見下ろす窓付きの部屋>

ガチャッ バタンッ

傭兵A「くぁ゛ーっ! ったくよぉ……」ガシガシ

少年「あれ? えぇと……A? もう交代の時間だっけ?」

傭兵A「いや、違ぇ。ちょいと計画の変更だ」

少年「ふぅん……?」

傭兵A「ぁ゛ー。ボウズにゃ、どう説明したもんか」

少年「……?」キョトン

22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:22:51 ID:5K6cN7w.
傭兵A「とにかく、だ。夜は、娘の部屋を見張らなくて良い」

少年「えっ? そんな、危ないんじゃ……。どうして?」


傭兵A「……夜は、儀式をするんだとよ」

少年「儀式……?」

傭兵A「あぁ。司祭曰く、悪魔の娘が教会に居られる為の、儀式だとさ」

少年「ふぅん……?」

傭兵A「見取り図の、……この部屋だ。地下の一番奥の部屋。ここで、司祭立ち会いの元、毎晩夜明けまで行うって話だ」

少年「ふんふん」

傭兵A「だから、夜は見張りの位置が変わる。一人が、地下への入り口。もう一人が、裏口から続く道と入り口から続く道の交差点、ここだ」スッ

少年「ふーん……?」

23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:23:21 ID:5K6cN7w.
少年「ねぇ、A」

傭兵A「ん、どうした」

少年「どうして、儀式の部屋の前で見張りをしないの?」

傭兵A「ぁ゛ー……」ガシガシ

少年「……?」キョトン


傭兵A「司祭が言ったんだよ。儀式の時は、部屋に近付かないでくれって」

少年「……ふぅん?」

傭兵A「悪いな、ボウズ。これ以上の質問はなしだ。余計な詮索をするのは、傭兵としてタブーだ。それに、今回の一件については、俺もお前も困る」

少年「……? 分かった……」

24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:23:56 ID:5K6cN7w.
傭兵A「胸糞悪ぃ話だが、そう言う訳だ」ハァ

少年「Aは、どうしてか知ってるの?」

傭兵A「知らない。が、分かる。今まで、そう言う場で何度も仕事してきた。あのジジイもご多分に漏れずって訳だ」

少年「……教えてくれないんだね」シュン

傭兵A「ボウズが知る必要はない。済まないが、分かってくれ」ワシワシ

少年「っんぅ、分かったから……止めて」グワングワン

25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:24:30 ID:5K6cN7w.
傭兵A「そう言う訳だ。ボウズはそろそろ寝ろ」

少年「えっ?」

傭兵A「えっ? じゃねぇ。子供は寝なきゃ育たねーぞ? 見ろ、そんなひょろくて小っちぇ身体じゃあ、女一人護れねぇ」クカカッ

少年「んぅ」ムッ

傭兵A「おまけに自分が女みてーな顔してるしよぉ?」

少年「それ、関係ないでしょっ」ムッスー


少年「もしかして、見張りが二人しか居ないのって、そう言う理由?」ムスッ

傭兵A「あっははっ! そんな気ぃ悪くすんなよっ!」

傭兵A(武器もねぇ、鎧もねぇ。こんな子供に見張りを任せられっか……)ハァ

26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:25:08 ID:5K6cN7w.
少年「僕だって、チームの一人なんだからっ。ちゃんと仕事するっ」

傭兵A「ほぉ? 夜は眠ぃぞぉ? ちゃーんと起きてられっかぁ?」

少年「子供扱いしないでよっ」ムッスー


傭兵A「よーし分かった! 見張りは俺と一緒にしようじゃねーか!」

少年「良いのっ?」

傭兵A「おう! 一緒に頑張ろうぜ?」

少年「うんっ!」パァッ


傭兵A(俺、案外子育ての才能ある?)

27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:25:39 ID:5K6cN7w.
<闇が纏わり付く地下の一本道>

少年「ねぇ、A」

傭兵A「何だ?」


少年「少女って、本当に悪魔の娘?」

傭兵A「……ボウズ。余計な詮索はタブーだと言ったはずだ」

少年「でも……」

傭兵A「傭兵は、ただ言われたことをやりゃ良いんだ」

少年「……うん」


少年「…………」

傭兵A「…………」

28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:26:13 ID:5K6cN7w.
傭兵A「ボウズ」

少年「何?」

傭兵A「お前は、字ぃ書けるか?」

少年「うん。……それが?」


ゴソゴソ...

傭兵A「こいつは、何だ?」スッ

少年「……ペン?」

傭兵A「俺が、違うと言ったら?」

少年「えっ?」

傭兵A「俺が、『これは剣です』って言ったら?」

少年「そんなの、おかしい」キョトン

29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:26:46 ID:5K6cN7w.
傭兵A「だが、俺は『これは剣です』と言う。俺だけじゃねぇ、BもCも、司祭も、あの嬢ちゃんも、皆皆、俺が手に持っているこれを見れば、『これは剣です』と言うんだ」

少年「……ぇ? え……?」

傭兵A「それだけじゃねぇ。皆、俺を指差して言うんだ。『この人は剣を持っている。あぁ、この人は凶暴な人だ。今すぐにでもこの剣を振りかぶって、私たちに斬り掛かろうとしている。危険だ。この人は危険な人だ』ってな」

少年「あれ……? そんな、え……?」

傭兵A「結局、そんな話だ」

少年「……?」


傭兵A「ボウズには難しい話だったな」ワシワシ

少年「っんぅ、難しいけど……止めて」グワングワン

30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:27:17 ID:5K6cN7w.
傭兵A「まぁ、嬢ちゃんとは仲良くやるこった。話し相手が居るってのは良いこったろうさ」

少年「……もしかして」ジッ

傭兵A「ん? ど、どうした?」

少年「僕を少女の部屋に行かせたのって、そう言う理由?」ムッ

傭兵A「あっははっ! 気ぃ悪くすんなよっ! 年頃の娘と二人っきりなんて、羨ましくって仕方ねぇ!」

傭兵A(だーかーらー! こんな子供にまともな見張りさせられっか!?)

31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:27:53 ID:5K6cN7w.
少年「……でも」

傭兵A「ん?」

少年「今日、喧嘩した」

傭兵A「ぅーえ、早っ」

少年「部屋から出てけって言われた。どうしよう……」シュン

傭兵A「そりゃまた……」


傭兵A「どうして嬢ちゃんが怒ったか、ボウズは分かるか?」

少年「うん。何となく、だけど……」

32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:28:25 ID:5K6cN7w.
傭兵A「なら、ちゃんと謝るこったな」

少年「謝る……」

傭兵A「そうだ。ちゃんと相手の目ぇ見て、自分の『申し訳ない』って気持ちを相手に伝えるんだ」


少年「気持ち……」

傭兵A「おぉ、そうだ。ボウズは、嬢ちゃんと仲直りしたいと思ってるんだろ?」

少年「うん……、そうだね」


少年「明日、ちゃんと謝ってみる」

傭兵A「おう、頑張れよ!」ワシワシ

少年「っんぅ、分かったから……止めて」グワングワン

33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:28:59 ID:5K6cN7w.
<一本の蝋燭が仄かに照らす部屋>

コン コン

少女「……はい」


ギィッ...バタン...

少年「おはよう」

少女「……おはよう」


少年「…………」

少女「…………」

少年「…………」

少女「…………」

34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:29:35 ID:5K6cN7w.
少年「……昨日は、ごめんなさい」ペコ

少女「…………」


少年「…………」ジッ

少女「…………」

少年「…………」ジー

少女「…………」

35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:30:06 ID:5K6cN7w.
少年「…………」ジ--

少女「…………」

少年「…………」ジ-...

少女「…………」


少年「……えぇと、その」

少女「貴方」

少年「ぁうんっ!?」


少女「教えて」

少年「う、うん……」

36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:30:41 ID:5K6cN7w.
少女「……外って、良い所?」

少年「…………」


少年「うん」ニコッ

少女「……そう」

少年「とても、良い所だよ」

少女「お話してくれる? 貴方のこと」

少年「うん! ぁ……っ」

少女「……?」


少年「これって、仲直り?」

少女「…………」ジト

少年「ぇ?」


少女「……そう。貴方は、単にデリカシーがないんだね」

少年「……?」キョトン

少女「独り言だよ」ハァ

37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:35:30 ID:5K6cN7w.
少女「貴方は、何をしている人なの? 傭兵にしては、随分と弱そうだけど」

少年「んぅ、失礼なっ」ムッ

少女「私と変わらない体格で、女の子みたいな顔してるくせに」ニヤ

少年「それ、Aにも言われた……」

少女「でしょうね」クスクス


少年「僕、戦ったら強いよ」フンス

少女「はいはい」

少年「むぅ」


少年「僕は、元々傭兵じゃないよ。今、旅費が尽きちゃって、それで仕方なく」

少女「旅費? 貴方、旅でもしてるの?」

少年「そうだよ。そろそろ、三年目に入るかな」

少女「三年っ!? ……貴方、よく今まで野犬に食べられなかったね」

少年「それ、どうゆう意味っ」ムッスー

少女「そのままの意味」クスクス

38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:36:05 ID:5K6cN7w.
少女「三年も……。貴方は、どうして旅をしているの?」

少年「……探しもの、かな」

少女「探しもの?」

少年「うん」


少年「探してる。ずっと、ずっと……」

少女「……貴方の探しものって、何?」

少年「秘密」ニコッ

少女「むぅ」

39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:36:51 ID:5K6cN7w.
少女「そんな理由で三年も旅なんて……。家族は? どうして親は、そんな無茶を許したの?」

少年「……家族は、居ないよ」

少女「えっ……?」

少年「生みの親は、もう死んだ。だから、旅に出たんだ」

少女「……ごめん、なさい…………」

少年「ううん、良いんだ」ニコッ

少女「……むぅ」

40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:37:28 ID:5K6cN7w.
少年「君は?」

少女「私?」キョトン

少年「君は、どうして、その……」

少女「…………」

少年「えぇと、その、教会に……」

少女「……良いよ」クスッ

少年「えっ?」

少女「教えてあげるから、そんなにびくびくしないで」クスクス

少年「むぅ」


少女「私は、物心付いたときから、もうここに居たの」

少年「ずっと、ずっと?」

少女「そう、ずっと。生まれは、丘の下の町なんだけどね」

少年「どうして、それで教会に……」


少女「私が、『悪魔の娘』だから……」

41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:38:08 ID:5K6cN7w.
少年「ぁ……」

少女「両親は、私を生むなり教会に預けた。それから、一度も会ったことがない」

少年「…………」

少女「私、親の顔知らないんだ」

少年「……そう、なんだ」


少女「私たち、何だか似ているね」ニコッ

少年「僕たちが……?」

少女「お互い、早くに親を失った同士」

少年「…………」


 その言葉に、何も言えなくなった
 僕は思ったんだ。僕たちは、とてもよく似ている。だけど、似ている所は"そこ"ではない。

 そして、僕たちには一つ、どうしようもない違いがあった。

 君は……。
 そして、僕は……。

42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:38:48 ID:5K6cN7w.
<白き主に見守られた聖堂>

司祭「おぉ、おぉ。これはこれは、少年様」

少年「司祭さん」

司祭「少女の身を護るだけではなく、話し相手にまでなってくださり、誠にありがとうございます。天におわす主も、貴方のご厚意にお喜びのことでしょう。正面に見えますこの彫像はご存知でしょうか? この彫像こそ、我らが主であり……」ペコペコ

少年「ぇっと、あ、うん……」


少年「ねぇ、司祭さん」

司祭「何でしょうか?」

少年「どうして、少女は外に出られないのかな」

司祭「と、言いますと?」

少年「外に出られないのは、可哀想……」

司祭「……成程」

43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:39:19 ID:5K6cN7w.
司祭「少年様は、とても優しい方なのですね」

少年「僕が、優しい……?」

司祭「えぇ、とても。自分以外の身を案じることが出来るというのは、優しさ以外の何物でもございません」


司祭「ですが、彼女を外に出すことは出来ません」

少年「……どうして?」

司祭「彼女が、『悪魔の娘』だからです」

少年「…………」

44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:40:20 ID:5K6cN7w.
司祭「本来、『悪魔の娘』はこの世に生きて居て良い存在ではありません。外に出れば必ず悪さをする。彼女は、早急に滅するべき存在なのです」

少年「滅す……? なっ、そんな……!?」

司祭「嫌でしょう? 私だって、嫌なのですよ。だって、彼女は見ての通り、小さな女の子でもあるのですから」


司祭「だから、私は彼女を救うことにしたのです。毎晩儀式を行い、悪魔の力を封じる。そうしたからこそ彼女は、今日までこの世界で生きてゆけたのです」

少年「…………」

司祭「彼女は、外に出ることは出来ません。もしそうなったら、我々は彼女を滅さなければなりません……」


司祭「……少女は、『人間』ではないのですから」

少年「…………」


少年「……僕、部屋に戻るね」

司祭「えぇ。これからも、どうぞよろしくお願い致します」

コツ コツ コツ...

45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:40:51 ID:5K6cN7w.
司祭「……さて。私も部屋に」

パチパチパチパチッ

司祭「……誰ですか?」

傭兵B「いやぁ~。良いお話だったぜ。悲劇的過ぎて涙が出らぁ」

司祭「これはこれは、B様。……何か、ご用でしょうか?」

傭兵B「いんやぁ? ただ、世のエロジジイはこうやって餓鬼を丸め込むんだなぁって関心してた所さ。お決まりのパターンって凄ぇなぁ」

司祭「私には、貴方が何を仰っているのかさっぱり……」

傭兵B「あぁ、良い良い。そうゆうのは要らねぇ。あんたらみてぇな奴、こんな仕事してたらいくらでも会うんだわ、これが」ハッ

司祭「…………」

46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:41:23 ID:5K6cN7w.
司祭「B様。よろしければ、今晩……」

傭兵B「ジジイのお下がりなんているかよ。じゃあな」ザッ

司祭「お待ちを!」

傭兵B「安心しろ。金さえ貰えりゃ、ちゃんと仕事はするさ」

スタスタスタ...


司祭「…………」

司祭「……ッ……!!」

47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:41:56 ID:5K6cN7w.
<二つの月光が交差する廊下>

傭兵A「ふぁーぁ……。夜の番は暇で仕方がねぇ」

少年「…………」

傭兵A「どうした、ボウズ? ずーっとだんまり決め込んじまって。また、嬢ちゃんと喧嘩したか?」

少年「……ねぇ、A」

傭兵A「ぉ、どうした? 恋の悩みか、おじさんに何でも相談し――」


少年「『人間』って、何?」

傭兵A「……おう、哲学的ぃ…………」

48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:42:28 ID:5K6cN7w.
傭兵A「ん゛ー、ぁ゛ー……。そう来たかぁー……」ウーム

少年「A?」

傭兵A「そうだなぁ……」


傭兵A「手と脚が二本ずつあって、二本脚で立って歩く。肌は薄橙色で濃かったり薄かったり、体毛の濃さもまちまちだ」

少年「え、え……?」

傭兵A「目は二つ、耳も二つ、鼻の穴も二つだが、口は一つ。子供の頃はお菓子が好きで、大人になれば酒を飲むようになる。お菓子と酒が沢山出る祭りが大好きな生き物。それが、人間だ」

少年「…………」キョトン

傭兵A「そうでなけりゃ人間じゃない」キッパリ

49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:43:08 ID:5K6cN7w.
傭兵A「要するに、そんな格好してりゃ皆人間だ。だからぱっと見、あの嬢ちゃんも人間って訳だ」

少年「ぁー、ぅ、うん……?」

傭兵A「……だが、ボウズが訊いている『人間』ってのは、そうゆう意味じゃねぇんだろ? 現に、嬢ちゃんは『人間』じゃない。どんなにその形をしようとも、どんなに心を持とうとも、『人間』になれない奴が居る」

少年「た、多分……」

傭兵A「多分、ねぇ」フゥ

50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 18:43:42 ID:5K6cN7w.
傭兵A「ボウズの言う『人間』ってのは、何だ?」

少年「僕の言う、『人間』……」


少年「……分からない」

傭兵A「だろうなぁ」ワシワシ

少年「っんぅ、分からないけど……止めて」

傭兵A「ホント、難しいもんだよなぁ。『人間』ってのは」

少年「…………」

52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:32:49 ID:5K6cN7w.
<一本の蝋燭が仄かに照らす部屋>

ギィッ ガチャ...

少女「……おはよう」

少年「おはよ――ど、どうしたの!? そのほっぺの傷!?」


少女「……ちょっと、廊下で転んじゃって。大丈夫、腫れているだけだから……」

少年「そんな、大丈夫って……! ちょっと待ってて、救急箱を……っ」ダッ

少女「あ、ちょっと……っ」

少年「どこかに、ないかな……」ガサガサッ

少女「ちょっ、貴方! 人の部屋を勝手に……」

少女(本当にデリカシーのない人!?)

ガサガサッ ゴソゴソゴソッ

少年「君はそこで座っててっ。今見つけるからっ」

少女「…………」


少女「……何だって言うの」

53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:33:35 ID:5K6cN7w.
少女「ぃつっ……」

少年「少しだけだから、我慢して」ポンポン

少女「うん……」

少女(あぁ、痛い。早く終わって……)ハァ


少女(この部屋、救急箱あったんだ。知らなかった……)

少女(自分の部屋なのに)

少女(まぁ、そもそもあまり怪我なんてしないもんね)

少女(外、歩けないし)

少女(それに、怪我したって、誰も……)

少女(誰、も……?)

54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:34:05 ID:5K6cN7w.
少年「大丈夫? 痛くない?」

少女「ぇ……?」

少年「あ、痛い? 大丈夫?」

少女「ぁ、うん……。大丈夫……」

少年「そっか、良かった」ニコッ

少女「…………」

少女(……あぁ、そっか。知らない訳だ)

少女(怪我の手当てなんて、私、生まれて初めて……)

55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:34:36 ID:5K6cN7w.
ポタッ...

少年「ぇ……?」

少女「……ぐすっ…………」

少年「ぇ、ぇえ……?」

少女「っく……、ぅ……っぐす……」


少年「ど、どどどどうしたの!? 消毒、しみた!? 傷痛む!!?」

少女「ぅくっ……。……ふふ、違うよ……」

少年「じゃ、じゃあどうして……っ!!?」


少女「嬉しくって」ニコッ

少年「っ……」

少女「こんなに優しくして貰ったの、初めてで。だから」

少年「…………」

56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:35:08 ID:5K6cN7w.
少年「……少女」

少女「……何?」


少年「……外に、出ない?」

少女「無理だよ。私は、『人間』じゃないもの」

少年「そんな……! だって……!」

少女「私は、『人間』じゃない。"皆、そう言ってるよ"」

少年「――っ!」


少女「ふふっ……。私、貴方と居ると、凄く辛い」

少年「…………」

少女「貴方と居ると、自分のこと、忘れちゃう」

少年「…………」

少女「ごめんなさい。部屋から出て行って。もう、入って来ないで」


少年「……うん」

57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:35:40 ID:5K6cN7w.
<燭台が整列する石造りの廊下>

少年「…………」

『俺が、『これは剣です』って言ったら?』 『……少女は、『人間』ではないのですから』 『私は、『人間』じゃない。"皆、そう言ってるよ"』


少年「……少女は」


『知ってます。私、あの場に居たでしょう』  『――ふざけないでッッ!!!』  『傭兵にしては、随分と弱そうだけど』 『……貴方、よく今まで野犬に食べられなかったね』
  『私たち、何だか似ているね』『嬉しくって』  『こんなに優しくして貰ったの、初めてで』


   『私は、『人間』じゃない。"皆、そう言ってるよ"』


少年「少女は……っ」

58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:36:17 ID:5K6cN7w.
<町を見下ろす窓付きの部屋>

傭兵A「くぁ゛ーったく、疲れたぜぇー……。ボウズも、毎晩最後まで起きていて偉いな」ワシワシ

少年「……うん」

傭兵A「うーっし! 残りは二人に任せて、俺らはとっとと夢の中でバカンスだ!」バサッ

少年「…………」ゴソゴソッ

傭兵A「おーやすみぃ」

少年「おやすみ」


――――
――


少年(寝たかな……)ゴソッ

傭兵A「ぐぉー……、ぐがぁ……」Zzz...

少年(……ごめんなさい、A)

ギシッ...スタ...スタ...

59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:36:49 ID:5K6cN7w.
傭兵A「――よう、ボウズ。便所か」

少年「ッ!?」バッ

ギシッ

傭兵A「ボウズ。今日はまた、一段と様子がおかしかったじゃねーか」

少年「…………」


傭兵A「俺らの仕事、何だか分かるか」

少年「……少女の、護衛」

傭兵A「おぉ、そうだ。俺ぁ、嬢ちゃんの安全を護らなくちゃいけねぇ」


傭兵A「……それが、誰が相手だとしてもなぁ……ッ」ギロッ

少年「っ……」

60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:37:20 ID:5K6cN7w.
少年「……この前、お話してくれたよね」

傭兵A「…………」

少年「僕は、やっぱりおかしいと思うんだ」

傭兵A「…………」


少年「僕は、言うよ。『違う。これはペンだよ』って」キッ

傭兵A「そんなこと言っても、誰も認めちゃくれねーぞ」

少年「それでも、皆がどんなに反対しても、僕は絶対に諦めない。『これはペンだよ』って言い続ける」

傭兵A「やがて、自身も異端と扱われ、淘汰されるとしてもか」

少年「絶対に、諦めない……!」


少年「皆が危険だと言うのなら、僕が証明してみせる……! ペンが危険じゃないって、証明してみせる! だって、それは剣じゃないんだから! 僕がそれを認める!! 僕が、最初の一人になってみせる!!!」

傭兵A「…………」


傭兵A「……そうか」

61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:37:52 ID:5K6cN7w.
傭兵A「……俺たちの仕事は、嬢ちゃんの護衛だ」

傭兵A「だが……」

ゴロン...


傭兵A「この通り眠ってちゃ、それも出来ねぇわなぁ……」

少年「A……」

傭兵A「ふん。ただの寝言だ」

少年「……ありがとう」

傭兵A「うっせ。起きんぞ」


ガチャ...パタン...


傭兵A「……ったく。眩しくて仕方がねぇ」ギシッ

傭兵A「…………」

『『人間』って、何?』


傭兵A「……あの嬢ちゃんは、『人間』になれるのかねぇ」ゴロン

62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:38:27 ID:5K6cN7w.
少年「……待ってて、少女」

 そう。僕が最初の一人になる。
 君は、『人間』だよ。
 僕が、それを認める、最初の一人になってみせる。

 だから、だから……。


少年「…………」スッ

63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:38:59 ID:5K6cN7w.
<二つの月光が交差する廊下>

傭兵B「……っ? ……気のせいか」

.
.
.


<闇が纏わり付く地下の一本道>

傭兵C「…………」

.
.
.


.
.
.

<欲望と絶望に塗れた部屋>

65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:50:10 ID:5K6cN7w.
 酷く、簡素な部屋だ。

 天井、壁、床。その全てが白い石、石、石。
 荘厳な聖堂とは正反対、そこは、まるで牢獄のような部屋だった。

 いや。事実、そこは牢獄だった。
 今晩もまた、一人の少女をそこに幽しているのだから。

 それは、毎晩行われる儀式。
 欲望を糧に、絶望だけを産み出し続ける儀式。

66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:50:42 ID:5K6cN7w.
「っ……! く……!? はぁ……っ!」

 牢獄の隅に置かれているのは、まさにこの部屋にふさわしい、古く不潔極まりないベッド。
 その中心で、一人の少女が苦悶の声を上げ続けていた。

 彼女の赤い瞳が、涙で滲む。小さな口から熱い吐息が漏れ、白い肌に朱色が浮かぶのは、紛れもなく絶えず送られ続ける快楽によるもの。
 それでも、彼女の表情は快楽に蕩けることはない。彼女は、ただ儚く虚しい抵抗として、表情をくしゃりと歪め続けるのだった。


「やぁ……っ!? ぁ、あぁぁぁ……っ」
「ふふふふっ。貴女も、最近は一層敏感になりましたね……」

 少女の上に、一人の男が覆い被さっている。
 膨らんだ脂肪は、彼の年齢を記す皺を隠し切ることなど出来ない。太く、皺だらけで、ぬるぬるとした指が、少女の身体を這い姦り続けていた。

――気持ち悪い――
 彼の指が動く度に、得も言われぬ嫌悪感が少女の胸を満たす。どす黒い感情が、今にも喉を伝って吐き出されてしまいそうな程。

67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:51:19 ID:5K6cN7w.
「ひゃうぅぅっ!?」

 しかし、小さな胸の頂を指先で弾かれてしまえば、彼女は抵抗すら出来なくなってしまう。彼女は、背筋を仰け反らせて甲高い悲鳴を上げた。
 胸に溜まった感情も、快楽の海に溶けて消えていってしまうのだった。

「明日はまた、聖水を一つ強い物にしましょうか」
「んくぅ……! 嫌、止め……」
「儀式は、止められません。貴女は、『悪魔の娘』なのですから」
「ひぁあぁぁぁっ!!? ぁ、あ、ぁあぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「おやおや。また、軽く達してしまいましたか」

 少女の言葉が、乳首を強く摘まれることで強制的に中断させられる。びりびりと電流を流したかのような強い快楽に、少女の口端からは涎がたらりと零れた。

68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:51:51 ID:5K6cN7w.
 儀式。
 毎晩毎晩、聖水という名の媚薬を全身に塗り付けられる。
 そう。これが、儀式だった。

 幼い頃から快楽に漬け込まれ、今では胸を摘まれただけで何度も達してしまう程開発され。

――これが、儀式なものか。こんな、馬鹿げた話があるものか――
 幼くして檻に投げ込まれた少女には、そんな疑問も抱くことは出来ない。

 これは、欲望を糧に、絶望だけを産み出し続ける儀式。
 とうの昔から、希望などなかったのだから。

69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:52:46 ID:5K6cN7w.
「そう言えば」

 男の声音が変わる。
 何か思い出し笑いをするような、それでいて、どこか苛ついているような。酷く不安定で、泥水のように汚い声だった。

「先日、あの子供にこう訊かれましてね。『どうして、少女は外に出られないのかな』と……」
「っ……」

 少女の脳裏に、彼の姿が思い浮かぶ。
 小さくて、可愛らしくて、無神経で、優しくて。
 今彼を思い出すのは、少女にとって酷く辛かった。快楽が溶け込んだ涙に、ほんの少しだけ、別のものが混じり込んだ。

70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:53:18 ID:5K6cN7w.
「くくくっ。傑作ですよねぇ……?」
「っひぃぃッ!!?」

 しかし、少女は身体をびくりと跳ねさせて、その涙を振り払ってしまう。
 まるで、横殴りされるかのような快楽。胸を摘まれるよりも、ずっと強く、無情な快楽。

 男が乱暴に握りこんだ、それは……。

71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:53:51 ID:5K6cN7w.
「こんな物を生やしておいて、『人間』の顔をして外を歩けますか……?」

 それは、男性器だった。


 若い少女には酷く不釣り合いな、大人のものとほぼ同じ大きさであろうそれは、決して張り型などではなかった。紛れもなく、少女の脚の付け根から生えていて。紛れもなく、それは血の通った男性器で。

「そろそろ、ここにも聖水を塗りましょうか」
「お願……、止め……――ふぁ、あぁぁぁぁっ!!?」

 少女の男性器が、ぬるぬるとした媚薬に包まれる。
 まるで神経を直接犯されるような快楽。少女の指が、シーツに強く喰い込んだ。

「まったく、毎晩こうされなければ満足出来ないようになってしまって。本当に淫らだ」
「ひゃめ……っ!!? さきっぽ、にぎら……ぁひッ!? あぁあぁぁぁぁぁッ!!?」

 男は、彼女の耳元で囁きながら、少女の男性器を乱暴に扱き続ける。
 陰茎を潰してしまう程に強く握り、かり首に爪を立て、亀頭を削れる程に何度も擦り姦す。
 彼の手は余りに乱暴、それでも、彼女はそれに快楽を感じてしまう。

 それが、酷く屈辱だった。

72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:54:21 ID:5K6cN7w.
「『悪魔の娘』よ。貴女は、そんな身体で、外を歩きたいでしょうか……?」
「――っ」

 それは、彼が少女に何度も問うた言葉。既に聞き飽きた言葉だった。
 それが、今の彼女には、酷く心に響いた。

『……外に、出ない?』

 再び、少年の姿が浮かび上がる。
 出会ってたった数日。たったそれだけの間に交わした沢山の言葉が、彼女の中で何度も、何度も反響する。

 希望なんて、とうに捨てたはずだった。
 さらわれるか、殺されるか。それとも、こうして犯され続けるか。
 それだけだと思っていた。

 だけど、彼が教えてくれた。
 暗い部屋の中で、外の眩しさを、教えてくれてしまった。

『外を歩きたいでしょうか……?』

――そんなの、決まっているじゃない……――

73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:54:51 ID:5K6cN7w.
「……ぐすっ……」

 少女の目から、一筋の涙が零れた。
 流れる涙は、感情の呼び水に。そして、沸き上がる感情は、また涙を生み出す。
 ぽろりぽろりと、涙が溢れ出す。

「ぅえ……ぇぇえぇ……っ。ぁ……ぅあぁぁ……っ!」

 いつしか、彼女は嗚咽を上げて泣き出していた。


「……出たい……」

 そして、少女の口から、初めて明確な意志が紡がれる。

「出たいよ……っ! 私だって……外を、歩きたい……っ!! あの人みたいに、外を――ぁがッ!!?」

 しかし、男はその言葉を無理やり中断させた。
 拳を以って。頬を殴り飛ばすことで。

「――ッ!!? ~~~~ッ!!」
「……あぁ、済みません。昨日、叩いた所でしたね。そこは」

 腫れが引いていた頬が、また熱を帯び出す。
 まるで刺されたかのような痛みに、少女の目からまた涙が溢れた。

74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:55:27 ID:5K6cN7w.
「貴女には、念入りに調教をしておく必要がありそうですね」
「ひ……ッ!!? ぁ……! 嫌……ッ!!?」

 余りに冷たい声に、少女の背筋がぞくりと冷えた。

 少女の両脚が掴まれ、無理やり持ち上げられる。
 脚を開かれ、性器が露出する。
 
 痛みに喘いだ少女の男性器は、少しばかり萎えてしまっている。それでも、一度濡れた部分は早々乾きはしない。少女は、自らの膣に何かが押し当てられる感触に悲鳴を上げた。

 それは、毎晩行われて来たこと。
 それでも、今回は、今回だけは、酷く、嫌だった。


「嫌……ッ!!! お願い、もう止めて!! 嫌だ!! もう、嫌だ!!!」
「えぇい……ッ!! 大人しくしろ!!!」
「ぐぅうぅッ!!? 嫌だッ!!! 助けてッ!!!?」
「黙れッ!!!」

 少女の抵抗も虚しく、彼女は男に無理やり押え付けられる。
 もう失ったはずのもの。それなのに感じる得体の知れない喪失感に、少女は目をぎゅっと瞑った。


 まぶたの裏に浮かんだのは、やはり彼。
 こんな時でも、彼は、小さくて、可愛らしくて、無神経で、優しくて。

75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:56:04 ID:5K6cN7w.
 部屋の扉が突然勢い良く開かれたのは、その時だった。

77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:56:55 ID:5K6cN7w.
司祭「なッ!!?」

少女「――ッ!!?」

ギッ...ガチャンッ


少年「……こんばんは」ザッ

司祭「……きさっ、何故……ッ!?」

少女「ぇ、ぁ……ぁ……?」

少年「司祭さん。報酬は、もう要らない」ザッ

78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:57:41 ID:5K6cN7w.
ザッザッ...

ザッ

少年「少女」

少女「えっ……?」

少年「ここに来る間に、考えてたんだ」

少年「……そしたら、僕、間違ってた」


少年「『どうして、外に出ないの?』、『……外に、出ない?』。違うよね。そんなこと言われても、君は困っちゃうよね」

少女「…………」

少年「僕が、教えてあげるよ」

少女「っ……」

少年「僕が、外の世界を教えてあげる。町のこと、村のこと。綺麗なガラス細工を売ってるお店や、面白いお話をしてくれる吟遊詩人さんが居る広場。皆皆、教えてあげる。……だから……」

79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:58:21 ID:5K6cN7w.
少年「――一緒に、外に出ようよ。君は、『人間』なんだから」

少女「……っ!」


司祭「……はは」

少年「司祭さん。少女から、離れて」

司祭「ははは……! ハハハ、ハハハハハハハハハハハハハッ!!」

少年「どいて、司祭さん」


司祭「小僧が……!! ふざけたことばかり抜かしおって……!!」グイッ

少女「ぁっ……!!?」

80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:58:55 ID:5K6cN7w.
司祭「見ろ、小僧!! この娘の、この身体を!!!」

少女「ひ……ッ!!? 嫌……!! 止めて!!」

少年「……その、身体は」

司祭「はは、ははは!! 貴様はこの娘を『人間』と呼ぶのか!? この二形の!! 異形の者を!! 『人間』と呼ぶ!!?」

少女「止めて!!? 放して!!! 嫌ぁぁぁッ!!!?」

少年「…………」


司祭「この娘は『悪魔の娘』だ……ッ!! 『人間』ではない……!! 小僧が、ふざけたことばかり――」

81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 19:59:32 ID:5K6cN7w.
少年「先天的マナ性性分化疾患」

司祭「――ッ」

少女「えっ……? 何を……」


少年「母体が汚染されたマナに晒された時に、出産時稀に起きる病気だよ。稀だけど、決して起きない訳ではない。調べれば、すぐに分かるはず」

司祭「~~~~ッ!!?」

少年「司祭さんは、そうやって、少女を騙して来たんだね……ッ!」ギリッ


司祭「……この、糞餓鬼が――」

少年「――――ッ!!!」

司祭「――おがッ!!?」ズドォッ

ドサッ

82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 20:00:03 ID:5K6cN7w.
少年「少女」

少女「……ぁ」ポカン

少年「……君は、元から人間だった。だけど、『人間』じゃなかった」

少年「僕には、それが赦せない。だから、僕が最初の一人になる」



少年「君は、『人間』だよ」



少女「…………」

少年「…………」

少女「……っ……」

少年「…………」

少女「……ぐすっ、ぅぇ……っ、ぇえぇぇ……っ!」

少年「君は、結構泣き虫だね」クスッ

少女「うるさぃ……っ! だって、だってぇ、ぅあ、ぁあぁぁぁ……っ!」

83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 20:00:33 ID:5K6cN7w.
少年「……落ち着いた?」

少女「うん。ありがとう……」


少女「貴方は、さっきのその、病気。どうして知っていたの?」

少年「家の本に書いてあった。人体に関する本は、結構あったんだ」

少女「……貴方の家って、お医者さん?」

少年「……ううん、違うよ。だけど、あったんだ」

少女「ふぅん……」

84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 20:01:05 ID:5K6cN7w.
少女「それと、その……」

少年「ん、どうしたの?」

少女「そろそろ、こっち見ないでくれると、嬉しいんだけど……」モジモジ

少年「えっ?」

少女「…………」ジト


少年「……あっ。そうか、君、今裸――」

少女「言わないっ!!」カァッ

少年「大丈夫だよ、僕、そうゆうの慣れて――」

少女「関係ないっ!!!」マッカッカ


少女(やっぱり、デリカシーがない……)ハァ

少女(……慣れて…………?)

85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 20:01:43 ID:5K6cN7w.
少年「ぇと……。もう、良い?」

少女「えぇ、お陰様で」プンプン

少年「えぇと、怒ってる?」

少女「少しだけねっ」

少年「……その、少女っ」

少女「何」


少年「ごめんなさいっ」ペコ

少女「えっ?」

少年「…………」ジッ

少女「ぇ、ちょっと……」

少年「…………」ジー

少女「そ、そんな見られても」

少年「…………」ジーー

少女「…………」

86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/22(日) 20:02:14 ID:5K6cN7w.
少女「……もう、分かったから」フイッ

少年「ぁ、えぇと、仲直り?」パァッ

少女「はいはい。仲直り仲直り」カァ


少女「それで、これからどうするの? もたもたしてたら、司祭様起きちゃうよ」

少年「あぁ、そっか。外に出たら、BとCが見張りを……。……っ」

少女「そう言えば、貴方どうやって見張りが居る所を――」


少年「――静かに」

少女「えっ……?」


少年「……戦ってる…………」

90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:33:02 ID:13AzIdiA
<白き主が紅く装飾された聖堂>

傭兵A「ッ!! くっそがぁッ!!」グォッ

ギィイィィィンッ!

頬傷の男「っ」ザザッ

隻腕の男「っ」バッ

傭兵A「ぉおぉぉぉぉッ!!」

キィイィィンッ ギキキキキィイィィィンッ!!

隻腕の男「っ」ザッ

傭兵A「ハッ、……ハァ……!!」

91: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:33:41 ID:13AzIdiA
傭兵A「畜生……ッ!! おいB!! C!! 寝てる場合じゃねーぞォッ!! 起きろォッ!!!」

傭兵C「…………」

傭兵B「……ぁ゛ー……、っそぉ……。割に合わねぇ仕事だ――」

頬傷の男「っ」ヒュッ

傭兵B「が……ッ!!」ドスッ

傭兵A「っ!! てめぇ……ッ!!!」

傭兵B「…………」


傭兵A(楽な仕事だと思ったら、最悪のタイミングでご登場とはな……っ)

92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:34:22 ID:13AzIdiA
覆面の男「とっとと死んでくれねぇかなぁ。おっさん」ハァ

傭兵A「ご生憎、そうは行かねーなぁ」ハッ

覆面の男「解せねぇな。勝てねぇ相手に楯突いて何になる? ただの死にたがりか?」

傭兵A「っへ、別に死にたかねーよ、俺だって……」

覆面の男「仕事熱心な奴だ」フン

傭兵A「……さて、どうかね」

覆面の男「は?」


ザッ

傭兵A「死なせたくない奴が二人程居る。仕事じゃなくても、命張るにゃ十分だ」ギッ

覆面の男「……あぁ、成程。テメェが馬鹿だって話か」

傭兵A「違いねぇ」ハッ

93: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:34:54 ID:13AzIdiA
頬傷の男「…………」

隻腕の男「…………」

傭兵A「まーったく、愛想のねぇ気持ち悪い奴だ」

傭兵A(おまけに、気持ちが悪い程に強ぇ)

覆面の男「仕事熱心だろ?」ニヤ

傭兵A「給料安そうだな。傭兵やるかい? 紹介してやるぜ」ハッ


覆面の男「まぁ、もう良いよ。おっさんとの会話は」

傭兵A「チッ、つれねぇな。こっちは朝まで付き合ってやるってのによ」

傭兵A(はぁ……。本格的に、終わりかなぁ……)

傭兵A(ボウズと嬢ちゃんは、どうなったかねぇ……)


覆面の男「よし、殺――待て」

傭兵A「ぁ? 何――」

94: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:35:43 ID:13AzIdiA
ザッザッザッザッ

少年「…………」

少女「…………」


覆面の男「へぇ」ニヤ

傭兵A「馬鹿……!! お前ら、どうして逃げ……ッ!!?」


少女「…………」ブルブル...


『僕の服の裾を握って。ぎゅっと、強く』

『こ、こう……?』

『そう。良い? 聞いて』

『う、うん……』

『これから、君が想像しているよりもずっと、ずっと恐いことが起きる』

『外に居るの、私を狙って来た人たちだよね? それよりも?』

『うん。それよりも、ずっと』

『…………』

95: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:36:16 ID:13AzIdiA
『一つは、どんなに恐くても絶対に、この手を放さないで欲しい』

『この手を……』

『護れなく、なっちゃうから』

『貴方が何を……っ!? ……信じて、良いの…………?』

『お願い。信じて』

『……うん。分かった』

『それと、もう一つ』

『もう一つ?』

『……僕の手には、絶対に触らないで…………』


少女「…………」ブルブル...

少女「っ」ギュッ...

96: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:36:53 ID:13AzIdiA
覆面の男「『悪魔の娘』だな?」

少年「……二つだけ、言わせて」

覆面の男「聞いてやろう」


少年「少女は、『悪魔の娘』なんかじゃない。『人間』だ」

覆面の男「どっちでも良い。どのみち死ぬ」

少年「っ……」ギリッ

覆面の男「もう一つは」


少年「……少女を狙うなら…………」


少年「殺すよ」


覆面の男「…………」


覆面の男「――殺せ――」

97: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:37:56 ID:13AzIdiA
 覆面の男がそう呟く。
 彼の傍に居た二人の男が、霞へと消える。

 その疾さは、傭兵すらもその姿を捉えることが出来ない程。彼が再びその姿を確認した時には、二人は既に少年のすぐ前に。
 月夜に照らされた二つの刃が不気味に煌めいた。
 そして、刃は真っ直ぐに伸びて行く。一つは少年の首筋に、一つは少年の胸元に。

 刃が彼にめり込む。最悪の光景に傭兵が叫び声を上げようとした、その時だった。


「――――ッ」

 誰がその光景を予想出来ただろう。
 少女も、傭兵も、覆面の男も。刃を突き立てようとした暗殺者共すら、きっと出来はしなかった。

 少年以外は。


 小さな両手が真っ赤に染まる。
 右手で首を捻じり切る。左手で頭蓋骨ごと握り潰す。
 ブヂリという気持ちの悪い音が、聖堂を響かせた。
 
 少年が、二人の暗殺者を何とも呆気なく殺してしまったのだから。

98: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:39:08 ID:13AzIdiA
「……はっ」

 グロテスクな光景に、辛うじて動けたのは覆面の男。
 二つの死骸が未だ宙を舞う最中、彼は目にも映らぬ疾さで左手を振るった。

 指先から放たれたのは一本の短剣。
 石の扉ですら貫いてしまう程に、その銀刃は疾く鋭い。

「――――」

 しかし、少年は軽く左手を振るう。
 空を一直線に描いていた軌跡が、彼の小さな指に掻き消されてしまう。
 いつの間にだろうか、短剣は少年の手のひらの中にすっぽりと収まってしまっていた。

(だろうな)

 覆面の男の動きは止まらない。
 とうに予測はしてあった。短剣は、ただの布石に過ぎない。
 彼の居る場所は、既に少年の懐。

「おらァッッ!!!!」

 そして、彼は右手に携えていた剣を諸手に構え、その幼い顔に全力で叩き込んだ。

 全身全霊を込めた、必殺の一撃。
 その脚は、少女はおろか、傭兵の目にすら映らぬ程に疾く。
 またその腕は、少年の足元が、ひび入り吹き飛ぶ程に強く。


 その一撃の後、覆面の男は思わず目を見開いた。

99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:40:36 ID:13AzIdiA
 その一撃の後、覆面の男は思わず目を見開いた。

「……マジかよ」
「…………」

 果たして、叩き込まれた刃を文字通り"握り潰す"ものなど、どう相手をすれば良いのだろうか。
 ぽつりと言葉が溢れる程、覆面の男は困惑していた。

「っ、――ッ!!?」

 しかし、彼の全身にぞわりと悪寒が走る。
 覆面の男は、両手に握った武器を躊躇いなく手放し、その場を全力で飛び退いた。

 空中で彼は、半瞬前に自分の首があった場所を垣間見ることが出来た。
 そこにあるのは、肌と紅の不気味なコントラスト。
 少年の小さく細い指が、今の彼には死神の鎌のように見えたのだった。

 少年はその場から動かず、静かな瞳で彼を見つめ続ける。
 その背後には、己のターゲット。震え続ける少女の姿。
 少年は、彼女を護る為に戦っていた。動かないのではない、動けなかった。

 もしも、少年が殺す為に戦っていたら、どうなっただろうか。
 余りに絶望的な相手。規格外が過ぎる相手。


 そんな少年に、覆面の男は。

「……ハハ」

 口を裂いて笑った。

100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:41:28 ID:13AzIdiA
覆面の男「ハハ、ハハハ……」

少年「…………」

覆面の男「アハハハハハ、アッハッハハハハハハハハハハハ!!!」

傭兵A「気でも狂ったか、この野郎……ッ!」

傭兵A(もっとも、俺が狂っちまいそうだが。……どうゆうこった、こいつぁ……)


覆面の男「うっせぇよ、外野」クククッ

少女「っ……!? ッ……!」ガタガタガタッ


覆面の男「あぁー……、分かった。分かったわ……ッ」

傭兵A「てめぇは、へらへら笑いやがって、一体何だと……」


覆面の男「"こんな所に居やがったのか、『化物』"」

101: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:42:02 ID:13AzIdiA
少年「っ」ピクッ

覆面の男「成程、成程ねぇ? くくっ……! 『少女は、『悪魔の娘』なんかじゃない。『人間』だ』……あぁ、確かにそうだな、そうだよなぁ?」ニヤニヤ


傭兵A「てめぇッッ!! いい加減にしやがれッ!!!」

覆面の男「ぁ゛ーもう! うっせぇなぁ! こっちは面白ぇことになってんのによぉ」

傭兵A「どうゆうことだ……ッ!!」

覆面の男「ん゛ー、仕方ねぇなぁ」ハァ


覆面の男「教えてやろうじゃねーの。後ろでぶるぶる震えちまってる『人間』ちゃんも一緒になぁ?」

少女「ッ……!」ビクッ

102: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:42:38 ID:13AzIdiA
覆面の男「事のあらましはこうだ。むかーしむかし」


 そして、男は語り始める。
 両手を振って、仰々しい口調で、その場に居る全員を見下しながら。

 昔々。そんなものは、ただの決まり文句に過ぎない。
 それが起きたのは、ほんの数年前。
 そして、それが終わったのは、ほんの三年前のことだった。

103: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:43:09 ID:13AzIdiA
 昔々、人殺しの化物がありました。

 気の狂った魔術師に創られたそれは、人ではありません。
 その手は、剣を砕き、鎧を千切り、肉を握り潰します。
 その脚は弓撃つよりも疾く、一度出逢えば、背を向け逃げ出すことすら許しはしないのです。

 軍国主義からも淘汰された、余りに倫理から掛け離れた存在。
 人々は恐れ、何度も破壊を試みました。

 しかし、その全ては徒労に過ぎませんでした。
 人々が立ち上がった分だけ、戦った数だけ、屍が積み重なるだけだったのです。

 屍の数だけ、魔術師のおぞましい笑い声が世界に響きました。


 しかし、絶望に塗れたある日、魔術師と化物ははたとその姿を消してしまうのです。
 その行方を知る者は、誰一人居ませんでした。

 そして、世界に平和が訪れたのでした。

104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:43:47 ID:13AzIdiA
覆面の男「……とまぁ、傭兵稼業やってりゃ、噂程度には聞ける話だ」

傭兵A「確かに、……聞いたことはある」

少女「…………」ブルブル...

覆面の男「しかしまぁ、こいつぁ一つ間違いがある」

傭兵A「何だと……?」


覆面の男「『魔術師と化物ははたとその姿を消してしまうのです』と言ったが、真相は違ぇ。開発者である魔術師は殺されたんだ。素性も知れねぇ一人の剣士になぁ」

傭兵A「……それを、テメェがどうして知っている」

覆面の男「そりゃ、傭兵如きと違って、俺たちは事情通だからなぁ? さて、今回の本題はそっちじゃねぇ」


覆面の男「肝心の化物は、どこに行った……ッ?」ニヤァ

傭兵A「……まさか…………ッ」

覆面の男「そうさ……! その、まさかだ……ッ!!」

105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:44:19 ID:13AzIdiA
覆面の男「……ハハ、アッハハハハハ!!! まさか、遠く離れた国のちっぽけな教会で、たかが小娘なんぞを護衛してたなんてよぉッッ!!!? アハハハハハ!! アッハッハハハハハハ!!!」

傭兵A「テメェ……ッッ!!! ごちゃごちゃデタラメ抜かすんじゃ……!!」

覆面の男「デタラメな訳あるかボケ。見ろよ、俺の駒二人があっという間に肉塊だぜ?」

傭兵A「……チィッ…………!」

覆面の男「あぁ、ったく、傑作だ……ッ! 確かに、お前に比べりゃ、その娘は十分『人間』の範疇だろうなぁ」



覆面の男「……なぁ? 『人殺しの化物』……ッッ!!!!?」

少年「…………」

106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:45:06 ID:13AzIdiA
少女「貴方、そんな……!!?」

少年「少女」


少年「……ごめんね」

少女「――ッ!!?」


 今更、何だと思った。
 だって、僕が『化物』なのは、本当のことじゃないか。
 そう。僕は、『人殺しの化物』として生まれてきた。


 僕の裾を引っ張る力が、少しずつ弱くなってゆく。

『私たち、何だか似ているね』

 君は、そう言った。
 僕たちは二人とも、『人間』を求めて生きて来た。
 そう。僕たちは、似ているね。

 だけどね、少女。
 僕たちには一つ、どうしようもない違いがあるんだよ。

 君は、本当は『人間』。
 そして、僕は、本当の本当に『化物』なんだ。

107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:46:00 ID:13AzIdiA
 三年前のことを思い出す。

 飛び散る血痕、崩れ落ちる身体。
 僕の目の前で、主が斬られ、倒れたとき。


 どうしてだろう、僕は全身が震えたんだ。
 鋭い眼光、一文字に結ばれた口。立ち塞がる巨体、振り上げられた刃。
 僕の顔面に刃が振り下ろされた瞬間、僕は思わず悲鳴を上げていた。

 だけど、刃は僕の身体にめり込みはしなかった。
 代わりに、彼の言葉が僕の心に入り込んだ。


――お前、恐いのか?――

『……恐、い…………?』

――人に創られた癖に、感情があるのか?――

『ぇ……? な、何……?』

――……そらっ――

『ひ……ッ!!?』

――……ふぅん…………――

『嫌……ッ!!? 壊れたく、僕は……!?』

108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:46:36 ID:13AzIdiA
――止めだ――

『えっ……?』

――お前を殺すのは、止めだ。死にたければ、勝手に死ね――

『ぇ、あ……!? そ、そんな……』

――元々、俺は慈善事業家じゃない。お前が野に放たれようか何しようが、俺には関係ない――

『ぁ……』

――じゃあな――

『…………』


『……待って!!』

――……何だ――

『僕、どうやって生きていけば、良いの……?』

――知るか、自分で決めろ――

『だって、僕、何も出来なくて……。ずっと、主の所に居て、それで……』

――……仕方ないな――

109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:47:15 ID:13AzIdiA
――外に出ろ――

『……外?』

――外に出て、好きに歩いて、好きに生きてゆけば良い。それだけだ、じゃあな――

『あ、ちょ……!?』

――……そうだ。それと、折角感情があるんだ――

『えっ? ぁ……』


――『人間』になることを、目標にしてみれば良いんじゃないか――

110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:47:47 ID:13AzIdiA
少女「…………」スッ

 裾を掴む手が、完全に離れた。

少年「…………」

少年(……僕には、やっぱり無理みたいだよ)

少年(『人間』なんて、なれっこない)

少年(だって、僕は『化物』なんだから)

少年(『人殺しの化物』……)

111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:48:18 ID:13AzIdiA
ザッ

少年「……ぇ…………?」

少女「…………」ザッ


覆面の男「何のつもりだ? テメェが『化物』の盾にでもなるのか? 『人間』ちゃん」

傭兵A「おい馬鹿……ッ!! 下がれ!!!」


少女「…………」ブルブル...

少年「……少女…………?」

少女「…………」スゥ



少女「彼は、『人間』だよ」

112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:48:52 ID:13AzIdiA
覆面の男「ハハハハッ! テメェ、さっきの話聞いてたか? そいつぁ、『化物』だ、『人殺しの化物』」

少女「彼は、『人間』だ」

覆面の男「あっぶねぇぜー? さっきの見たろ? そいつぁ、人の頭握り潰しちまうような奴だ。ほらっ、後ろ、後ろー! そいつ、お前の頭握り潰そうと――」


少女「――ふざけないでッッ!!! 彼はッ!! 『人間』だッッ!!!!」


覆面の男「……チッ」

113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:49:25 ID:13AzIdiA
覆面の男「『化物』が『人間』を名乗ろうたぁ、随分都合の良い話じゃねーか」

少女「うるさいうるさいッ!! 『人間』だッ!!!」

覆面の男「そいつが今まで殺して来た人数知ってるか? 数人数十人って話じゃねーぞ?」

少女「それでもッ!! 彼は『人間』だ!!!」

覆面の男「そいつぁ『化物』だ。餓鬼がどんなに駄々こねたって、覆るこたぁねぇ」

少女「それでもッ!! それでも……ッ!!」


少女「彼は……ッ!! 『人間』だ……ッ!!!」グスッ


少年「…………」

『『人間』って、何?』

114: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:49:58 ID:13AzIdiA
少年「もう、良いよ」

少女「ぐす……! でもぉ……っ!!」

少年「僕は、『人間』じゃない」

少女「そんな、貴方まで……!!」

少年「そんなの、僕自身が一番よく分かっている。僕は、『人殺しの化物』」

覆面の男「アッハハ!! ほーら見ろ! 本人が一番よく分かってるぜぇ!?」


少年「だけどね……」

少女「ぇっ……?」

覆面の男「ぁ……?」

115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:50:38 ID:13AzIdiA
 僕はずっと、がむしゃらに『人間』になる方法を探して来た。
 だけど、それは間違いだったみたいだ。

『君は、『人間』だよ』
 僕は、一人の少女を『人間』にすることで、初めてその間違いに気が付いた。

『『人間』って、何?』
 その答えは、まだ見つからない。

『彼は、『人間』だよ』
 だけど、少女が言ってくれた言葉。
 僕は『人殺しの化物』それは、絶対に変わらない。
 それでも、少女が訴え続けてくれた言葉。
 どんなに矛盾していても、間違ったことを言ってるとしても。
 それが、僕の心の中に響き続けている。

『これはペンだよ』
 きっと、僕が求めてきた『人間』は、そこにある。


 だから……。



少年「それでも僕は、『人間』になりたいんだ」

116: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:51:15 ID:13AzIdiA
少女「……っ、ぁ……」グスッ

傭兵A「……ボウズ…………」

少年「…………」

覆面の男「…………」


覆面の男「……チッ。『化物』の戯言に付き合ってられっか。傷の舐め合いでもしてろ」ザッ

傭兵A「待て……ッ!! てめぇ、どこに……!!」

覆面の男「帰るに決まってんだろーが。もう、仕事は済ませたしなぁ?」ニヤ

傭兵A「何ぃ……ッ!?」


少年「逃すと、思ってる?」ザッ

覆面の男「逃がすさ、……ほぉら」

117: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:51:48 ID:13AzIdiA
黒目の男「っ」ザッ!

傭兵A「ッ!!? 嬢ちゃんッ!!!」

少女「――きゃあぁッ!!?」

少年「――ッ」ヒュッ

黒目の男「――かヒゅ……ッ!!?」ミ゛ヂィッッ!


ザザッ!

少年「怪我は!?」

少女「だ、大丈夫……」

少年「そっか、良かった……」ホッ


少年「……逃しちゃったね」

118: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:52:26 ID:13AzIdiA
傭兵A「……もう、残党は、居ねぇか…………?」

少年「多分、さっきのが、最後」

傭兵A「……そうか」ハァ


傭兵A「……ったく、酷ぇ仕事だったぜぇ……ッ」ヨロッ

少年「A? どこに……」

傭兵A「さっきの男、『仕事は済ませた』と言ってた。だが、嬢ちゃんは無事だ」

少女「ぁ……」

少年「……どうゆうこと?」

119: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:53:11 ID:13AzIdiA
傭兵A「この教会で他に殺されそうな奴って言ったら、司祭ぐらいしかいねぇだろ」

少年「……少女のことは、最初から眼中になかったんだね」

傭兵A「陽動か、情報の誤認か、そんなとこだ。とにかく、司祭の様子を……ッ」グッ

少年「A! そんな傷で! なら僕が……ッ」

傭兵A「お前は、部屋に戻って嬢ちゃんに着いていてやれ。ここもあっちも、スプラッタが過ぎる」


少年「ぁ……」

少女「っ……」カタカタ...

傭兵A「……二人の亡骸も、どうにかしてやんなきゃな…………」


傭兵A「じゃな、よろしく頼んだぜ」

少年「……A…………」

120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:53:51 ID:13AzIdiA
少年「大丈夫?」

少女「うん、大丈夫」

少年「恐くない?」

少女「恐くない」


少年「ねぇ」

少女「何?」

少年「僕は、『化物』だよ。そんなにくっつくと……」

少女「『人間』だよ」

少年「……でも」

121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:54:29 ID:13AzIdiA
少女「じゃあ、貴方が『人間』じゃないなら、私も『人間』じゃない」

少年「えっ!? そんな……っ!」

少女「嫌?」

少年「嫌だよ……!」

少女「なら、貴方も『人間』で居て」クスッ

少年「ぇ、ぇえぇ……?」

少女「そう。貴方は――」


少女「小さくて、可愛らしくて、無神経で。そして、優しい『人間』」

少年「……そうなの?」

少女「そう」

少年「……そっか、無神経……。僕、『人間』の気持ちって良く分からないから……」

少女「貴方が分からないのは、乙女の気持ちじゃないの?」クスクス

少年「……ふふっ」

少女「ふふふっ」

122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:55:41 ID:13AzIdiA
 司祭は、あの部屋で首を斬られて死んでいた。
 護衛していた少女は生きていて、依頼者の司祭は死んだ。
 僕たちは、こうして仕事を終えたんだ。

 凄く、後味が悪くて。
 それでも、何だか満たされいて。

123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:56:31 ID:13AzIdiA
<そよ風吹く丘の上の教会>

傭兵A「んぁ゛ーっ……。結局、今回は奴らにしてやられちまった訳だ」

少年「教会は、これからどうなるの?」

傭兵A「さぁな、色々ごたごたするだろうさ。まぁ、俺らには関係ねぇ」

少女「……そう、だね」

傭兵A「良かったじゃねーか、嬢ちゃん。ちゃーんと教会を出られて」

少女「ほとんど、追い出される形だったけどね。私のこと閉じ込めてたのは、全部司祭様の独断だったし」

傭兵A「話に聞くと、どうやらあのジジイはそれだけじゃねぇらしい。賄賂、恐喝、エトセトラ、探せば探す程黒い話の山。こりゃ、殺されても文句言えねーわ」ハァ


傭兵A「……行くんだろ? もう、大丈夫か?」

少女「えぇ。もう、大丈夫。ありがとう」

傭兵A「仕事だ。気にすんな」

少女「それでも、だよ。ありがとう」

傭兵A「ぁ゛ー、良い子過ぎて涙出らぁ」

124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:57:14 ID:13AzIdiA
傭兵A「ボウズ、まだ言ってなかったな」

少年「え……?」

傭兵A「……助けてくれて、ありがとうよ」スッ

ガシッ


少年「ぁ、手……」

傭兵A「握手って言うんだ、覚えとけ」

少年「手握られたの、初めてで……」

傭兵A「どうせ、お前が拒んで来たってオチだろ?」

少年「……そうかも、しれない…………」

傭兵A「なら、今度からは止めておけ。その手は、嬢ちゃんを護った手だ。誇りに思え」

少年「A……」

傭兵A「それに、握手求められて拒むたぁ、マナーがなってねぇからよ」ニッ

少年「……うん」

125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:57:53 ID:13AzIdiA
傭兵A「ボウズ。『人間』って、何だ?」

少年「『人間』……」

傭兵A「あぁ。お前が探している、『人間』だ」

少年「…………」


少年「まだ、分からない」

傭兵A「……そうかい」ククッ

少年「これから、探す」

傭兵A「おう、頑張れよ!」ワシワシ

少年「っんぅ、……うん、頑張る」ニコッ


傭兵A「したら、俺ぁお前たちの二人目になろうじゃねぇか」

少年「僕たちの……」

少女「二人目……?」

傭兵A「あぁ」ニッ

126: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:58:25 ID:13AzIdiA
傭兵A「お前たちは、二人とも『人間』だよ」

少年・少女「っ……」


少年「……そっか」

少女「……ありがとう」

127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:59:41 ID:13AzIdiA
少年「それじゃ、そろそろ行くね」

少女「お達者で」

傭兵A「おう! 俺ぁ、仕事がなけりゃ、丘の下の町に居る。良かったら遊びに来いよ!」


――――
――


傭兵A「……行ったか」

傭兵A「まーったく、ヘビーな仕事だったぜ……」フゥ

傭兵A「痛つつ……。くぅ゛ー……、まずは怪我治さねぇとなー……」

傭兵A「やれやれだ……」


『『人間』って、何?』

傭兵A「くくっ。何てこたぁねぇ、単純な答えじゃねーか」

傭兵A「あいつらは、見つけられるのかねぇ」

傭兵A「…………」


傭兵A「むかーし、むかし――」

128: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 16:00:20 ID:13AzIdiA
 昔々、人殺しの化物が居ました。

 彼は、人々を沢山殺しました。魔術師の元で、罪のない人々を沢山殺しました。
 その罪は、決して消えることはありません。

 それでも、彼は優しい人でした。
 小さくて、可愛らしくて、優しい男の子でした。


 やがて、彼は旅に出ます。
 『人間』を求めて、旅に出ます。

 彼はきっと、苦悩することでしょう。
 消えない罪に、『人間』でないことに、幾度となく悩むことでしょう。

 それでも、彼は探し続けるのです。
 彼の存在を認めてくれる人々を、愛してくれる人々を、ずっとずっと探し続けるのです。


 彼を初めて愛してくれた、小さな少女と一緒に。
 ずっと、ずっと。

129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 16:00:52 ID:13AzIdiA
 少年「悪魔の娘?」 少女「人殺しの化物?」

 おしまい。

130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 16:13:30 ID:VMc9kz0.
おつ、まとまっててよかった

131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 16:20:39 ID:hlLy/HOw

A良いキャラしてんなぁ

132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 21:01:13 ID:bSUCS9Fw

Bもなにげに良いキャラしてんなぁ

134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 21:56:35 ID:13AzIdiA

 作者です。ご覧いただき誠にありがとうございます。
 エロSS作家は、エロを書かないと過呼吸に陥る。このスレで引き続き、次のお話に入ります。

・次回は、アダルトシーンメインになります。
・アダルトシーンは、フェチ要素を多分に含みます。早い話、ふたなりとショタです。
・ふたなりは突っ込みます。ショタは突っ込まれます。何故と訊かれても困ります。そう書きたいからです。
・ぼくはふたなりフェチじゃありません。くすぐりフェチです。

 物語自体は、一応の所完結しておりますので、以後の展開はほとんど蛇足です。趣味です。
 また、アダルトシーンも大分色の濃いものになるかと思います。
 以上の事柄を十分注意の上、今後の作品をお楽しみいただければ幸いです。

 次回予告混じりの注意書きは以上。引き続き書いてきます。


 とにもかくも、作品をご覧いただきありがとうございました。





少年「したい?」 少女「されたい?」



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引用元: 少年「悪魔の娘?」 少女「人殺しの化物?」

[ 2013年12月26日 00:23 ] [オリジナル]少年・少女 | TB(0) | CM(0)
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