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隣国の姫「ねえ、起きて」

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 11:34:56 ID:HilPy9ek

童話の「眠り姫」を百合っぽくしたものです。
苦手な方は戻ってください。



むかしむかし、と言ってもそれほどむかしでは
ないくらいのむかしの話。


あるところのある国には、それはそれは
美しい姫がおりました。

どのくらい美しいかというと、周りの国じゅうから
求婚がくるほどです。それもまいにち。
なにしろ姫は、日向のようなあたたかい黄金色をした髪をもち、
瞳は朝露がきらめく若葉の色でした。

周囲の王子たちが日夜おくりものをしてくるのも
むりはありません。

ですが姫は、ひとりの魔女に魔法をかけられ、
100年の眠りについてしまいました。


これは、そんな眠り姫と、ひとりの隣国の姫のおはなしです。

2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 11:43:13 ID:HilPy9ek

隣国の姫は、うつくしいものがすきでした。

なぜかというと、じぶんがうつくしくないからです。

まわりからみるとそうでもないし、兄たちは、「あいつけっこういける
じゃん。隣の国の眠り姫ほどじゃないけど。」とおもっていました。

けれど姫はじぶんが大嫌いでした。

艶やかな黒い髪は夜空みたいで、瞳も、カワセミの羽根のように
澄み切ったあおいろでした。

でも、継母は姫が小さいころに、
「あなたは世界で一番おろかでみにくい、きたない子、いらない子」と
こっそり言い続けてきたので、やっぱり姫は、じぶんはおろかでみにくくて
きたない、いらない子なのだと思っていました。

それどころか継母は、いらない子のじぶんに親切にも忠告してくれた、
やさしいひとだとかんがえていました。

やっぱりちょっとおろかなのかもしれません。

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 11:50:39 ID:HilPy9ek

そんな隣国の姫が、うつくしいと評判の姫が
眠ってしまったことを知りました。

隣国の姫「あの黄金色の髪をした姫が呪いに?」

侍従「ええ、どうやら魔女の呪いで眠らされたようです」

隣国の姫「チャンスだわ」

侍従「どうしてですか?(まさか姫が眠っているうちに求婚にきていた
   一番お金持ちの王子とむりやり結婚しようと?やるなあ)」

隣国の姫「だって、姫が起きているときは人も多いし、それに
     はずかしくて直接お会いできなかったんだもの!」

侍従「ああ、そっちですか。(そうだった、うちの姫はこういう方だった
   ことを忘れていた)」

隣国の姫「そっちってどっちよ?」

侍従「いえなんでも」

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:02:17 ID:HilPy9ek

隣国の姫「ちょっと眠り姫に会えないかお父様に訊いてもらってくる」

侍従「いってらっしゃいませ(こういうときだけやたらアクティブ
   だよな・・・・)」


隣国の姫「駄目だって。お義母様が「あなたはそんなところに
     行って、わが城を恥さらしにするつもりですか!」って。」

侍従「また姫様はそのようなお戯れを本気でうけとって・・・・。
   (あのクソババアいつか殺す)」

隣国の姫「お義母様はお優しいから、わたしにほんとうのことを
     教えてくださってるのよ」

侍従「・・・・俺は、姫様のこと、かわいいと思います。
   (言ったーーーーー!!言っちゃった!!!ついに!!)」

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:04:27 ID:HilPy9ek

隣国の姫「・・・あなたはうそつきね」

侍従「・・・・。(決して嘘ではないけれど、こういうときの
   姫は何を言ってもききいれてくださらない)」

隣国の姫「気晴らしに散歩にでも行こうかしら」

侍従「お供します」

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:08:32 ID:HilPy9ek

~深い森~

隣国の姫「・・・あれは、なにかしら?」

そこには、たくさんの花で飾られた白い棺がありました。
そして、その中には眠っている美しい少女が。

侍従「姫様、お待ちくださいー!」

隣国の姫「!!」

隣国の姫「・・・帰る」

侍従「え?」

隣国の姫「もう疲れたから、帰るわ」

侍従「かしこまりました。(姫の様子が変だ)」

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:10:45 ID:HilPy9ek

~城~

侍従「姫、さきほどはどうかされたのですか?」

隣国の姫「なんでもないわ、放っておいて」

侍従「・・・・かしこまりました」バタン


隣国の姫「よし、行ったわね」

隣国の姫「・・・・行かなきゃ」

13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:15:22 ID:HilPy9ek

~深い森~

隣国の姫「見つけた・・・!!」

姫は、先ほど見つけた棺桶のガラスの蓋を開きました。
白いドレスをまとった、金髪の少女は、どうやら眠っているようです。

隣国の姫「きれい・・・・」

うつくしいものがだいすきな姫は、眠り姫のかがやくような髪に、
陶器のような肌に、眠り姫のそのすべてに目を奪われました。

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:20:14 ID:HilPy9ek
隣国の姫「あなたが、おとなりのお姫様?」

隣国の姫「きれいな髪ね・・・触れてもいいかしら?」

隣国の姫「ふふ、天然パーマなの?くるくるしてて、とても愛らしいわ」

隣国の姫「いったいどうしてここで眠っているのかしら?」

隣国の姫は、眠り姫に話しかけました。
何度も、何度も。
答えが返ってくることはないというのに。

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:23:45 ID:HilPy9ek

隣国の姫「あなたが目覚めるまで、あと百年もあるのね・・・」

隣国の姫「わたしそれまで生きていられるかしら」

隣国の姫「かなうなら、あなたの宝石のような緑の瞳を見たいな」

隣国の姫「それで、この森で2人だけでおしゃべりして・・・・」

と、そのとき。

がさがさと草木をかきわける音がしました。

隣国の姫「誰?」


魔女「おやおや、かわいらしい姫様だこと」

それは、眠り姫に呪いをかけた魔女でした。

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:29:42 ID:HilPy9ek
隣国の姫「あなたは・・・?」

魔女「わたくしはただのあわれな老婆でございます」

隣国の姫「そうは、見えないのだけれど」

魔女「姫様は勘が鋭くていらっしゃるようですねぇ」

魔女は、にちゃりとわらいました。

魔女「ここでお会いしたのも何かのご縁、姫様の願いを
   叶えて差し上げましょうか?」

隣国の姫「そんなことできるの?」

魔女「ええ。姫様は、そこの眠り姫のために、どんなことでも
  できますか?」

隣国の姫「ええ、もちろんよ!この子の声がきけるなら、
    みにくいわたしなんか死んだって構わない!」

魔女「さようでございますか。では、このわたくしめにおまかせを・・・」

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:37:59 ID:HilPy9ek

魔女は、姫が100日間ずっとここにくることができたなら、
眠り姫をめざめさせる、といいました。

姫の命を対価として。

もちろん、100日かかさずくることができなかったならば、
その時点で命をいただきにくる、と言い残し、魔女は
姫がまばたきをした間に、煙のようにいなくなりました。

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:44:06 ID:HilPy9ek

隣国の姫「大丈夫、あなたはわたしが助けるから」



侍従「・・・姫」

隣国の姫「!!」

侍従「聞いていましたよ、すべてを」

隣国の姫「だって、でも・・・・わたしは・・・」

侍従「言い訳は無用です。帰りますよ」

隣国の姫「・・・・・」

侍従「・・・はぁ。てこでもうごかないつもりですか?」

隣国の姫「わたしは、あのことずっとお話ししてみたかったの・・・!!」

侍従「ですが、魔女との契約は絶対です!取り消すことなどできないし、
   100日たったらあなたは死んでしまうんですよ!?」

隣国の姫「それでも、かまわないわ」

19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:51:02 ID:HilPy9ek
隣国の姫「わたしはあのこのことが、ずっとすきだった!」

侍従「っすこしは、あなたを慕っている者たちのことも
   考えてください・・・・!!」

隣国の姫「そんな人いないわ。わたしは、みにくくて、おろかな
     城の飾りにもならないどうしようもないお姫さまだもの」

隣国の姫「知っていた?あなた、女中たちの間じゃ、「姫さまの犬」なんて
     呼ばれているのよ」

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:54:37 ID:HilPy9ek
侍従「そんなこと、知っています」

侍従「姫様は、いつも俺の言葉をきいてはくださらない」

侍従「ですが、今回だけは別です。どうか、俺の話を聞いてください」


そうして侍従ははなしはじめました。

自分が、じつは未来からきた人間であること。

童話として語り継がれている「眠り姫」を一目みたくて
この世界にやってきたこと。

童話では、隣国の姫がでてこないこと。

すべてを、はなしました。

21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 12:59:28 ID:HilPy9ek
侍従「姫様には、恩義を感じています。なのにいままで黙っていて、
   申し訳ありませんでした。」

隣国の姫「そう。あなたはわたしが、村はずれでぼろぼろになっているところを
     ひろったのよね」

侍従「ええ。あの時はこの世界に来たばかりでしたので、姫にひろわれたことは
   ほんとうに幸運でした」

隣国の姫「で、はなしというのはそれだけ?」

22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 13:08:19 ID:HilPy9ek

侍従「いいえ。ですがこの話は、城に帰ってからにいたしましょう。
   もうじき日が沈みます」

隣国の姫「ねえ、魔女と約束したこと、だれにも話さないでくれる?」

侍従「ええ。もちろん」

侍従「ですが姫様も、俺が未来からきたこと、はなさないでくださいますね?」

隣国の姫「当然よ。今もまだ半信半疑だもの」

侍従「ではなぜ信じてくださるのですか?」

隣国の姫「なんか、あなたってそういう感じするもの。
     人と違う、誰も知らないことをしっているような」

25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 13:40:12 ID:HilPy9ek

~城~

それから侍従は、「眠り姫」の童話のあらすじを
姫にはなしました

隣国の姫「じゃあ、明日からあの棺のまわりには、茨が生えるのね」

侍従「はい、おそらくは」

隣国の姫「かまわないわ。どうせ、あと100日もしたら死ぬんだもの。
      私は眠り姫とお話しできればそれでいいの」

26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 13:41:11 ID:HilPy9ek
侍従「・・・では、もう行かなければ」

隣国の姫「どこへ行くの?」

侍従「俺は、未来の人間であることを知られてしまった。だから、
   もう帰らなくてはいけないんです」

侍従「さようなら、姫」

隣国の姫「ええ。あなたのいれる紅茶、おいしかったわ」

侍従「光栄です。・・・・・では、お元気で」

隣国の姫「死ぬ人間に対してお元気で、なんて変わってるわね」

侍従「・・・・俺は、あなたの幸せを祈っています」



侍従(姫に幸せになってほしいからこそ、言えない。
   100年の眠りから王子の口づけで目覚めた眠り姫は、
   王子と結婚して幸せに暮らしました・・・・なんて、残酷なハッピーエンドは。)

27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 13:43:51 ID:HilPy9ek

~翌日~

侍従「おはようございます。本日から姫様のお世話をさせていただきます」

隣国の姫「ええ。よろしく」

侍従「朝食はどうなさいますか?」

隣国の姫「紅茶だけでいいわ」

侍従「かしこまりました」カチャカチャ

隣国の姫「・・・・まず」

28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 13:54:41 ID:HilPy9ek

~深い森~

隣国の姫「きゃっ、茨が・・・」

隣国の姫「痛い・・・」


侍従のいったとおり、茨が眠り姫をつつむようにはえていました。

それでも姫は、服が裂け、体が傷ついても、毎日、毎日、眠り姫のもとにかよいます。

隣国の姫「あなたの瞳は、輝いた新緑の色をしていたわね」

隣国の姫「とても、とてもきれいだった・・・・」

隣国の姫「あなたよりきれいな人間なんて、きっとこの世にいないわ」

29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:01:56 ID:HilPy9ek

姫はそれからもずっと、朝起きてすぐ森に行き、
日がしずむころかえってきました。

いつもぼろぼろのすがたでかえってくる姫をみて、従者たちだけでなく、
国王や姫の兄たちもきみわるがりました。

もともと内向的な姫にはなしかけるものはおりませんでしたが、
とうとう城では、だれも姫にかかわろうとしなくなりました。

国王は姫が森でないをしているのかたずねましたが、姫が
「止めるのならば、わたしはいまここででも死にましょう」というと
それ以上はもうなにもいいませんでした。

それに、継母にできた赤子のことで、城全体がさわがしかったのです。

だから姫はそれからもまいにち森へいきました。

30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:06:18 ID:HilPy9ek

そうした生活がつづくうちに、姫はどんどんやつれていきました。

ごはんもあまりたべず、茨がどんどんはえてくるせいで、姫の体にはいまや
無数の傷跡がついています。

それでも姫は、森へゆき、まいにち眠り姫にはなしかけたり、
世話をしたりしてすごしました。

そんな、あるひのこと。

31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:13:08 ID:HilPy9ek

がさがさと、茨をかきわけてだれかがやってくる音に、姫は気がつきました。

他国の領地に勝手に侵入していたとなれば、姫でもただではすみません。

とっさに、近くの木の陰に身をひそめました。

茨をきりすてながらやってきた人物は、どうやら海のむこうの王子のようでした。

姫も、一度だけ本で、王子のような服装のものをみたことがあります。

王子「おや、こんなところにうつくしい姫が眠っている」

王子「いったいどうして?」

姫は、眠り姫に近づかないで、とさけびたかったけれど、みつかって
切り殺されては、眠り姫を助けるチャンスをうしなってしまいます。

それに、やつれはてた姫には、もう大声をだすちからもありませんでした。

32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:14:07 ID:HilPy9ek
王子「それにしてもうつくしい。こっそりキスしてしまおうか」

そういった王子が、棺のふたをあけるのを、姫はただぼうぜんとみていることしか
できません。なにしろ、さけんでいるつもりでも、のどからはかすれた音しか
でないのです。

33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:20:39 ID:HilPy9ek

王子が口づけたその瞬間、眠り姫がぱちりと目をあけました。

姫は、しんじられないおもいで、眠り姫がおきるのをみていました。

隣国の姫「どうして?・・・そういえば、今日は何日だったかしら?」

姫が魔女と契約してから、今日でちょうど100日でした。

隣国の姫「どうして、わたしじゃないの・・・・!!」

ああ、どうしてあの王子がわたしではないのだろう?

どうして、眠り姫が笑いかけているのはわたしではないのだろう?

どうして、侍従はこの結末を教えてくれなかったのだろう?

どうして?

そのことばだけが、姫のあたまのなかをぐるぐるとまわっていました。

34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:28:20 ID:HilPy9ek
そんな姫に、現実はどこまでも残酷です。

眠り姫「わたしをおこしてくれてありがとう!あなたはどなたかしら?」

王子「海の向こうの国の第一王子です。姫、わたしと一緒にきませんか?」

眠り姫「うれしい!ご一緒いたしますわ」


あんなに眠り姫の声をきくことを望んでいたのに、姫はちっとも
うれしくありませんでした。


ぽろぽろ、ぽろぽろ。

姫の目から透明な滴がこぼれます。

「ああ、あの子は、小鳥がさえずるような声で、すきとおった目をもっているけれど、
わたしにはなしかけてくれることも、瞳にうつしてくれることもないんだわ」

35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:33:09 ID:HilPy9ek

いつしか、眠り姫も王子もいなくなっていました。

あるのはただ、茨とからっぽになった棺だけ。

姫は、かつて眠り姫が眠っていた色とりどりの花で飾られた棺に、
そっと体を横たわらせて、ふかくふかく眠るのでした。


夜になり、城から姫を探しにきた兵たちが棺を見つけた時には、
そこにはもう、だれもいませんでした。

おしまい!

36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:35:41 ID:HilPy9ek

百合というか隣国の姫の一方通行になってしまいました。

ここまで読んでくださったかたありがとう!

38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/01/07(火) 14:42:57 ID:jVJhRp/k
乙!!
面白かった!

ねむりひめ

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引用元: 隣国の姫「ねえ、起きて」

[ 2014年01月07日 17:04 ] [オリジナル]その他 | TB(0) | CM(0)
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