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市松人形「私……呪われてますから」

1: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 14:56:42 ID:PYH1hmFC0

満開の桜が風に吹かれ舞い散る。

高校三年になった始業式の日に俺は、
家の前に落ちていた変な日本人形を拾った。

朱色の着物。腰まで伸びた長い黒髪、思いのほか、可愛らしい顔立ち。

まじまじと眺めていると突然、薄透明な少女が出てきて、
空中で三つ指をついて正座をした。

市「初めまして。私は市松人形の霊の"市"と申します」

市「唐突ですが、この度これから居候させて頂きます」

驚き、口を開けたままの自分に、少女の霊は続いてこう言った。

市「先に申し上げておきますと、私、呪われてますから」ニコッ

それから、俺と市の"呪われた"生活が始まった。


4: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 14:59:53 ID:PYH1hmFC0

▼某日/夕方/男宅

男「ただいま~」ガチャッ

市「おかえりなさい。ご勉学お疲れ様です」

男「ハァ……」

市「どうしました?」

男「登下校の度、野良犬に追いかけられ野良猫には噛みつかれ……」

男「挙句の果てにはカラスにまで襲われて……」

男「ため息の一つも出るだろ」


5: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:03:40 ID:PYH1hmFC0

市「すみません。私が呪われてるばかりに……」シクシク

男「そのことなんだけどさ」

市「はい?」

男「呪いの市松人形って、ただ人形の髪の毛が伸びるだけなんじゃないの?」

市「それはもう初めてお会いした時にお話ししたじゃないですか。もう忘れたんですか?」

男(そういえばそんな話してたっけな……)

………
……


6: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:07:07 ID:PYH1hmFC0

▼数ヶ月前/男宅

市「――ようするにですね、私の呪いが人形の持ち主に不運や不幸を呼び」

市「その度にこの人形の髪が伸びていくんです」

市「それが呪いの市松人形であり、私、"市"なのです!」

男「…………」

市「先ほどキミが私を拾ったことで、私の新しい所有者はキミに決まりました」

市「なのでつまり、キミは私に呪われてしまったのです!」

男「…………」

市「……おわかり頂けました?」

男「……あぁ。なんとなく」


7: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:10:28 ID:PYH1hmFC0

男「それはそれは恐ろしい話だ。あー恐い。バイトの支度しなくちゃ」

市「……こんなに力説したのに信じてませんね?」

男「だってなぁ……」

市「現にこうして霊が出てきてるんですよ!? 驚きませんか!?」

男「そりゃ驚いたけど、アンタ全然怖くないし霊っぽくないし」

市「ガーン!」


9: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:13:51 ID:PYH1hmFC0

男「それで呪いだ何だとか言われても……う~ん」

市「呪いですよ!? それこそ怖くないんですか!?」

男「どうせ大したことないんだろ?」

市「むぅ~!」


12: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:17:37 ID:PYH1hmFC0

市「せっかく説明してあげたのに!」

男「お手間をおかけして悪うございました」

市「むむぅ~! そんな風に呪いをナメてると痛い目見ますよ!?」

男「はいそうですか。話の続きは帰ったら聞――」

――ドゴォ。

男「足の小指ぶつけ○△%$+■*!!!!!」ジタバタ

市「ほら早速来ましたよ。あ~痛そう。だから言ったじゃないですか」

男(こんなのが呪いなのかよ……#)




……
………


14: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:22:04 ID:PYH1hmFC0


……
………

市「どうですか? 思い出しました?」

男「あぁ、思い出した……。正直呪いをナメてたわ」

市「ほら! だから言ったじゃないですか!『呪いをナメると痛い目見ますよ』って!」

男「お前の言ったことに間違いはなかったよ」

市「ふふん。当たり前です」

男「つまり、お前を捨てれば呪いも消えて万事解決ってことだな」

市「ダ、ダメー!捨てないでー!」


16: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:25:47 ID:PYH1hmFC0

呪いの市松人形。そんな怪談話が実在するとは思わなかったが、
市が来て早数ヶ月、毎日の小さな不幸が訪れている。

足の小指をやたらとぶつける。
野良犬たちに追いかけられる。
ゴミが降ってくる。
車に泥を撥ねられる。
……etc.

不幸と呼ぶにはとてつもなく小さくてくだらないが、
そんなことがほぼ毎日起きている。

本当に、何でこんなの拾っちゃったんだか……。


17: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:30:15 ID:PYH1hmFC0

▼某日/昼/街中

「おかーさん! あそこにモモタローさんがいるー!」

「えー? どこー?」


男「うおおぉぉーー!ついてくんなー!」ダダダッ

犬「ワンワン!」タッタッタ

猫「ニャア~!」タッタッタ

カラス「カァーカァー!」バサバサ


「皆でこれからオニガシマ行くんだねー! すごいねー!」

「そうねー。お兄さんも大変ねー」


18: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:34:05 ID:PYH1hmFC0

▼某日/夕方/男宅/玄関

男「ただいま……」

市「おかえりなさーい。今日も一段とご不幸があったみたいですね」

男「わかるのか?」

市「はい! 男さんから不幸パワーがひしひしと伝わってきます!」

男「そんなのどこで受信してんだよ……」


19: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:38:29 ID:PYH1hmFC0

市「なんとなくわかるんです!」

男「そうですか……」

市「 でもほら、今朝より髪も伸びてますし、そもそも、私といるから不幸に遭うのは間違いないはずです! いよ、我ながら名推理!」

男「……お前それ、どういうことか、わかって言ってるのか?#」

市「?」

男「俺がこんな目にあってるのは誰のせいだっけ? ん?#」

市「……ハッ!? し、知らないですー! 呪いのせいですー! 捨てないでくださーい!」ピュー

男(この野郎……#)


21: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:43:26 ID:PYH1hmFC0

▼某日/夜/男宅

男「待て! この呪い人形野郎!」ダダダッ

市「わわ、私のせいじゃないですよー!」ピュー

男「うるさい! せっかく作った飯が食えなくなったろうが!」

市「知りません! 私のせいじゃありません! 呪いが悪いんですー!」


22: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:47:24 ID:PYH1hmFC0

男「追いつめたぞ」ハァ ハァ

市「はわわっ」アセアセ

男「ほら捕まえた――って、あれ?」スカッ

市「あっ、そうだ。私、霊だから捕まらないんだ」

男「ぐぬぬ……」

市「やーいやーい。呪いを甘く見た男さんが悪いんですー」


24: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:50:42 ID:PYH1hmFC0

男「……仕方ない。あきらめよう」

市「ふふん。参りましたか?」

男「そのかわりコイツの服を脱がし、辱めることで鬱憤を晴らす!」

人形 ヌギヌギ

市「ちょっ、服脱がさないで! ダメー!///」スルスル


25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/27 15:54:52 ID:PYH1hmFC0

市「もう!」プンプン

男「悪い。まさかお前まで服が脱げるとは……」

市「男さんの変態! 痴漢! セクハラ大魔神!」

男「悪かったって。ほら、この通り!」ペコペコ

市「いーっだ! ふん!」プイッ


26: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 15:56:59 ID:XB8nAD1m0

▼某日/夜/男宅

男「なぁ市。お前って一体何なんだ?」

市「どうしたんですか急に?」

市「まさか……不幸な事が起き過ぎて脳に支障が……」アセアセ

男「違う違う。俺はまともだ」

市「よかった」ホッ


27: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:01:36 ID:XB8nAD1m0

男「持ち主に呪いが、ってのは初耳だったけど」

男「呪いの市松人形が本当にあったってのは身をもって理解したよ」

市「最初から言ってるじゃないですか。私は呪いの市松人形ですって」

男「その呪いの市松人形ってのは、この人形のことだろ?」

男「なら、お前自体は何なんだ? 人形の呪いが具現化した霊? まさか人形に宿る神様とか?」

市「…………」


28: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:03:46 ID:XB8nAD1m0

市「……ついにそれを明かす時がきましたか」

男「そんなに意味深なことなのかよ」

市「私は何なのか。何故人形の霊としているのか。それはですね……」

男「それは……」

市「実は……」

男「実は……(ゴクリ)」

市「私にもさっぱりわかんないんです。テヘッ☆」ペロッ


29: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:06:21 ID:XB8nAD1m0

男「…………」

市「……テ、テヘッ☆」ペロッ

男「…………」ジトー

市「い、いやですよぉ! そんな見つめないでください! 照れちゃいますから!」アセアセ

男「…………」スタスタ

市「ウソです! 黙って行かないでください! せめて何か言ってください!」アセアセ


30: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:09:41 ID:XB8nAD1m0

男「で、本当はどうなんだ?#」

市「それが私にもわからないんです」

男「わからないって、自分のことだろ?」

市「そうなんですけど、本当に何にもわからないんですよ」

男「じゃあ、いつから人形の霊なんかやってるんだ?」

市「古くは奈良時代から霊やってます」

男「長っ!! ホントかよ!?」

市「ウソです。テヘッ☆」ペロッ

男「……さて、捨ててくるか#」

市「ごめんなさい! 正直に言います! だから捨てないで!」


31: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:12:21 ID:XB8nAD1m0

男「で、いつごろからなんだ?##」

市「すみません。それも本当に覚えてないんです」

市「というより、男さんと会う前のことは覚えてないんですよね」

男「本当に何も覚えてないのか?」

市「はい。全く……」


32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/27 16:16:32 ID:XB8nAD1m0

市「もしかしたら前にも誰かに拾われてたのかもしれないですけど」

市「男さんに拾われる前のことは、本当に何も覚えてません」

男「…………」

市「わかってるのは呪いの事だけで、いつから人形の霊になったとか」

市「そもそもこの人形のことすらも、わからないんです」


33: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:20:06 ID:XB8nAD1m0

市「得体が知れなくて気持ち悪いですよね。すみません、あははは……」ポリポリ

男「別にそんなこと思ってねぇよ」

市「え?」

男「そんなに気にすんなよ。少し気になって聞いてみただけだから」

市「そうですか……」

男「ま~、その、そりゃお前のその呪いは本当に面倒で大変だけどな」

市「うぅ……」

男「……でも、お前がいるおかげで楽しいから」ボソッ

市「えっ?///」


34: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:21:57 ID:XB8nAD1m0

市「お、男さん、今何て言いました?///」

男「……///」

市「すみません、よく聞こえなくて。もう一回だけ――」

男「あぁーもう! うっさい!///」

男「やっぱお前なんかなんかさっさと捨ててやる!///」

市「お、男さんのイジワル! 鬼! 悪魔将軍! 呪ってやるー!」


35: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:24:52 ID:XB8nAD1m0

男「呪ってやるって言われても、もう既に呪われてるんだけどな」

市「テヘッ☆」ペロッ

男「やっぱり燃やして供養してやる」

市「や、やめてー!」


36: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:26:56 ID:XB8nAD1m0

市も自分のことをよくわかってないらしい。
でも、呪いの話は本当だった。

俺が不運に遭うその度に人形の髪が伸びていく。
そして、市の髪の毛も日々伸びていく様を見ていると、

なんだか、市が生きている人間そのものにも見えた。


38: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:29:59 ID:PYH1hmFC0

▼某日/男宅/男の部屋

男「お前、だいぶ髪伸びたな」

市「そうですね。もう足元まで伸びてきてます」

市「手間もかからないので気にしてなかったですけど、改めて見るとさすがに長いですよね」

男「俺がこれだけ不幸な目にあってきたのかと実感はできるけどな」

市「す、すみません……」

男「冗談だよ」


39: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:35:01 ID:PYH1hmFC0

男「よかったら髪、切ってやろうか?」

市「え!?」

男「お前も人形も、そのままにしとくのはさすがに気が引けるからな」

市「でもその……、そんなこと出来るんですか?」

男「たまにだけど、節約で自分の髪も自分で切ってるし」

男「短くして切りそろえるくらいならできる……んじゃないかな。……たぶん」

市「やってもらっても……良いんですか?」

男「上手くできる保証は無いけど、それでもいいか?」

市「もちろんです! わぁーい! お願いします!」


40: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:39:45 ID:PYH1hmFC0

男「とは言ってみたものの、どうすればいいんだか」

市「そう言えばそうですよ。私には触れられませんし……」

男「ん~……」

人形「   」

男(そういえばこの前、人形の服を脱がしたら市も脱げたことあったよな)

男(人形の髪が伸びれば市も伸びる……もしかして……)


41: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:44:16 ID:PYH1hmFC0

男「まさか……いやでも……」

市「どうしました?」

男「……やってみるか。えい」ジョキッ

市「なっ! 男さん!?」

男「お~。やっぱりね。人形の髪を切れば、お前にも影響するみたいだ」

市「え!? あっ、ホントだ!」

男「なるほど。謎現象だが理屈はわかった」

男「じゃ、始めますか」


43: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:49:29 ID:PYH1hmFC0

男「お客様。今日はどんな髪形にしますか?」

市「どどどどどんなのでもくぁwせdrftgyふじこlp;@」アセアセ

男「なに緊張してんだよ」

市「だだだって、こんなの初めてなんですから」アセアセ

男「どのくらいまで切ってほしいとか、何か要望はある?」

市「ありません! お任せします!」


44: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:53:33 ID:PYH1hmFC0

男「任せられてもなぁ。……よし決めた!」

市「モヒカンとか変な髪形にしないでくださいよ?」

男「……チッ」

市「今、舌打ちしましたね!? やろうとしてましたね!?」

男「してないしてない。大丈夫。任せとけって」

市(不安だなぁ……)

男「じゃあ始めるぞ?」

市「は、はい!」

チョキチョキチョキ……


45: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 16:57:49 ID:PYH1hmFC0

チョキチョキチョキ、チョキ

男「よし出来た。こんなもんだろ」

市「終わりました?」

男「終わった――って、なに目ぇ瞑ってんだよ」

市「だって、絶対モヒカンにされてますよ……」

男「バカ。してないから。早く鏡見てみろって」

市「うぅ~……」チラッ

市「――――っ!?」


46: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:02:50 ID:PYH1hmFC0

市「ふわぁ……」サワサワ

男「肩ぐらいで切りそろえようと頑張ったんだけど、やっぱりあんまりウマくいかなかったよ。下手糞でゴメンな」

市「そんなことないです! スゴイです! 素敵な髪形じゃないですか!」

男「そっか。良かった」

市「はわわぁ~……私すごく嬉しいです。ありがとうございます」ニコッ

男「(ドキッ///) ま、まぁ喜んでもらえて俺も嬉しいよ///」アセアセ

市「~♪」ニコニコ

男(……今度、ヘアカタログでも買ってみるか)


48: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:07:35 ID:PYH1hmFC0

市「~♪」ニコニコ

男「なぁ。いつまで鏡の前にいるんだ?」

市「え? だってカワイくなってスゴイ嬉しいんですもん」ニコニコ

男「喜んでくれるのはありがたいんだけど……」

市「あっ。まさか男さん、照れてるんですか?」

男「はぁ!?/// そんな訳ねぇだろ!///」

市「あはははっ。照れてる照れてるー! 男さんカワイ~!」

男「――っのヤロっ! もういい! 夕飯作ってくる!///」ダッ

―タッタッタ

市「……男さん、本当にありがとうございます」


49: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:10:51 ID:XB8nAD1m0

▼夜/男宅

男「今日の夕飯はハンバーグです」

市「はぁ~、いいなぁ~」ウロウロ

男「では、いただきます」

市「おいしそうだなぁ~。ハンバーグゥ~」 ウロウロ


50: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:14:36 ID:XB8nAD1m0

男「……」 モグモグ モグモグ

市「そういえば、最近お供えもらってないなぁ~」ウロウロ

市「いいなぁ~。食べたいな~」ウロウロ

市「誰かお供えしてくれないかな~」チラッ ウロウロ

男「(ハァ……) わかったわかった。後でお供えしとくからウロウロすんな」

市「わぁーい! やったー! バンザーイ!」


51: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:19:56 ID:XB8nAD1m0

男「ほら、お前の分だ」

市「わぁい! ありがとうございます!」





市「まぁ、お供えしてもらった所で食べれるワケじゃないんですけどね」

男「知ってるわ! だからやりたくなかったんだよ!」

市「なんせ私、呪われてますから……」シクシク

男「ごまかすな! 違うから!」


52: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:29:49 ID:XB8nAD1m0

▼某日/昼/男宅

男「お前さ、俺が学校行ってる間は何してるの?」

市「んー、特に何もしてないですよ」

男「何もって、せめて散歩ぐらいしてくればいいのに」

市「それができればいいんですけど、私、人形から10mも離れられないんですよ」


53: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:35:42 ID:XB8nAD1m0

男「そうだったのか。そんなんじゃ退屈だったよな」

市「大丈夫です! 置いてもらえるだけ幸せですから!」

男「……お前意外と健気なんだな」ジ~ン

市「えへへ///」

男(これからはTVくらいつけといてやるか)


55: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:42:27 ID:XB8nAD1m0

▼某日/昼/男宅

男「いらない。これもいらない。これは……いらないか」ガサゴソ

市「ゴミ捨てですか?」

男「そうだよ。家は常に綺麗にが俺のモットーだ」ガサゴソ

市「感心感心……って私(人形)もゴミ袋に入ってるじゃないですか!?」

男「チッ、バレたか」

市「バレたかじゃありませんよ! ドサクサに紛れてなんてことを!」

男「へいへい。すみませんでした」

市「捨てられても呪いの力でまた戻ってきてやるんですからね!」

男「本当に戻ってきそうで怖えな……」


56: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:45:51 ID:XB8nAD1m0

▼某日/夜/男宅

男「なぁ、市。お前も夜は寝たりするの?」

市「寝るというか、人形の中に入って休んでますね」

男「それって寝るのとは違うのか?」

市「そうですねぇ。見ようと思えば外も見れますし、音も聞けますけど」

市「男さんが寝られた後とかは、中でずっとボーッとしてる感じですかね」

男「そうやって呪いパワーを充電してるのか……」

市「違いますよ! 人形の中だと落ち着くんです!」

男「冗談だよ。そんなに怒んなって」

市「もう!」


57: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:55:11 ID:XB8nAD1m0

▼某日/夜/男宅

男「お前って幽霊みたいなもんなんだよな」

市「そうですね。普通の人には視えませんし、触れませんし」

男「ってことは、お前が見える俺には霊感があるのか?」

市「ん~。それとはちょっと違う気がします」


58: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 17:59:07 ID:XB8nAD1m0

市「私を見れるのは人形の持ち主だけですし」

市「だから男さんの霊感の有無は関係無いと思います」

男「そっか……」

市「もしかして、『俺には特別な力が!?』とか思ってたんですか?」ニヤリ

男「バーカ。違うよ」

男「そんなんじゃないけど、ちょっと、残念だなって……」

市「……男さん?」

男「悪い、何でもない。忘れてくれ」

市「はい。……わかりました」

市(男さん、なんか寂しそう……)


59: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:00:58 ID:XB8nAD1m0

▼某日/夜/男宅

男「そうだ。明日の宿題しなきゃ」ガサガサ

市「これは数学ですか。うむむ」

男「おっ。この問題わかるか?」

市「……私、呪われてますから」シクシク

男「だからごまかすな。わからないならそう言え」

市「全くわかりません」キリッ

男「素直過ぎる!」


61: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:06:04 ID:XB8nAD1m0

男「……」カリカリ

市「男さ~ん。遊びましょうよ~」

男「……」カリカリ

市「暇ですよ~。将棋しましょうよ、男さ~ん」

男「……なぁ市」

市「はい、なんですか!? 将棋の用意なら出来てますよ!?」

男「邪魔」

市「……うぅ」

男「……」カリカリ


62: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:09:36 ID:XB8nAD1m0

市「うわぁ~ん! 男さん酷いよ~!」ボロボロ

市「私が呪われてるから遊んでくれないんだぁ~!」ボロボロ

男「(ハァ……) あと30分だけ待ってたら遊んでやるから」

市「わぁ~い! やっぱり男さんは優しいな~!」スリスリ

男「さわれないクセにほおずりすんな。邪魔」


63: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:16:02 ID:XB8nAD1m0

▼数時間後

市「ここに歩を置いて……いや、こっちに銀が……」ブツブツ

男「なぁ市、いいかげんもう寝たいんだけど……」

市「ダメです! まだこれからです!」

男「だってお前、もうこれ――」

市「男さん、恐れてますね?」

男「は?」

市「ここから始まる、私の大逆転劇を恐れてるんですね!?」

男「……続けたいならどうぞ」


64: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:19:07 ID:XB8nAD1m0

市「閃いた! これが私の神の一手です!」

市「あ。ここに角でお願いします」

男「はいはい」パチッ

市「ふふふ。覚悟して下さい、男さん! これが男さんの牙城を打ち砕く――」

男「はい王手。逃げても持ち駒で攻めれば結局詰むから」パチッ

市「ま、待ったぁ!」

男「待った無し! さぁて寝るぞー!」

市「うわぁ~ん! 酷いよ~! 男さんなんて呪ってやる~!」


65: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:22:40 ID:XB8nAD1m0

▼深夜

男「……」ZZZ

市「男さん寝ちゃいました?」

男「……」ZZZ

市「本当は起きてるんですよね?」

男「……」ZZZ

市「お・と・こ・さ~ん? 寝顔覗いちゃいますよ~? ……いつも覗いてますけど」

男「……」ZZZ

市「……よし」


66: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:27:20 ID:XB8nAD1m0

市(男さんの寝顔いつ見てもカワイイ~っ!///)

市(顔近づけても、もっと近づけてみてもいいですか!?////)ソロ~ッ

市(ひゃあ近いよ近いよ! これ以上近づいたら、唇が――///)

市(もうダメ! 市、突撃します!)

男「TKGは卵かけご飯の略です!」

市「うひゃいっ!?」ビクッ

男「じゃあQBKって何じゃらほい……」ムニャムニャ

市「ね、寝言ですか……。も、もう!」ドキドキ


67: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:30:00 ID:XB8nAD1m0

▼朝/男宅

男「ふわぁ~。あっ、おはよ、市」

市「お、おはようございます」ドキドキ

男「ん。どうしたの?」

市「いや、その……」ドキドキ

男「何?顔になんかついてる?」

市「なな何でもないです! 男さんなんか呪ってやるですー!」ピュー

男「おい! ちょっと待てよ! ……なんだよ朝っぱらから」

市(ドキドキしてまともに顔見れません///)ドキドキ


68: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:35:57 ID:PYH1hmFC0

▼某日/昼/男宅

市「む~……」フワフワ

市(男さんは学校行ってしまってヒマですね……)

市(たまにはおウチの中を散策してみましょうか)

市(何か面白いものでも見つかるかも――あっ!)

市「そういえばずっと気になってるものがありました」

市「リビングにある、このお仏壇は誰のなんでしょう」

市「遺影は……もしかして、男さんのお父さんとお母さん……ですか?」


69: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:39:07 ID:PYH1hmFC0

市(男さん、ご自分のことあまり話さないから知りませんでしたけど)

市(よくよく考えると、男さんはこの広い家でお一人ですよね……)

市(そっか。この前の自分に霊感が無いのかって話はこれだったんですね)

市(あれはきっと、お父さんとお母さんを……)

市「…………」


71: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:41:21 ID:PYH1hmFC0

市(……男さんのお父さん、お母さん)

市(男さんは真面目で、勤勉で、とても立派な方です)

市(だから、ご心配なさらないで大丈夫ですよ)

市(それになんてったって――)

市「男さんには私がいますから!」ニコッ


72: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:44:12 ID:PYH1hmFC0

▼某日/夕方/男宅

男「たまには一緒に外に出て散歩でもしてみるか?」

市「えっ、どうしたんですか急に!?」

男「家の中ばっかりじゃ退屈だろ? 気分転換だよ」

市「いいんですか!? 行きたいです!」


74: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:49:05 ID:PYH1hmFC0

市「あっ。でも私、ここから動けませんし……」

男「人形から離れられないってやつなら、人形も一緒に連れていけば問題ないだろ?」

市「それだけじゃなくて、私ほら、男さん以外の人には見えないですから、外で話すのも……」

男「夜ならこの辺りは人通りも少ないし、よっぽど大声で話さなきゃ怪しまれないだろ」

男「もし何か言われたら、『独り言です』で済ませばいいんだよ」

市「でも……」

男「余計なことは気にするな。お前が行きたいかどうかを聞かせてくれ」

市「……本当にいいんですか?」

男「いいんですよ」

市「迷惑じゃないですか?」

男「俺が誘ってるんだからそんなわけないだろ」


75: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:52:36 ID:PYH1hmFC0

市「なら、行きたいです!」

男「よし決まり!」

市「わぁーい! お外だー! お散歩だー!」

男「そんなにはしゃぐことかよ」

市「男さんとデートだぁ!」

男「は、はぁ!?///」


76: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:57:06 ID:PYH1hmFC0

▼夜/丘の上公園

市「男さん、着きましたよ! 公園ですよ!」

男「わかったわかった。はしゃぐなって」

市「うわぁ、ここ広いですね! 夜空もよく見えます!」

男「ふふふ、この公園の良さは広さだけじゃないんだよなぁ」

市「何かあるんですか?」

男「奥に行けばわかるよ。それまでのお楽しみ」スタスタ

市「奥ですか、――!?」


77: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 18:59:55 ID:PYH1hmFC0

市「ふわぁ……綺麗……」

男「この公園、街の一番高い丘の上にあるから街中が一望できるんだ」

市「家の明かりって、集まるとこんなに綺麗なんですね」

男「だろ? それに今夜は月も綺麗だよな」

市「え!?///」

男「ん?どうした?」

市「い、いや、何でもありません///」アセアセ

男「?」


78: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:06:28 ID:PYH1hmFC0

――ガタンゴトン、ガタンゴトン

市「男さん、電車! 電車が見えますよ!」

男「公園のすぐ隣に線路が通ってるんだよ。ほら、この先のあの明るいところが駅。わかる?」

市「あそこですか? 他よりもっと明るいですね」

男「駅前は朝までやってる店が多いからな」

市「そうなんですか。でもホントに、すごいキラキラしてます!」


79: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:09:45 ID:PYH1hmFC0

男「よし。せっかくだから、ここで夜景でも見ながら髪切ってくか」チャキチャキ

市「何でハサミなんか持ってきてるんですか!?」

男「髪を切ってやる為だよ」

市「本気ですか!?」

男「本気だよ。家を掃除する手間も省けるし、いいだろ?」

市「でも、恥ずかしいですよ///」

男「誰にも見られないクセに何言ってるんだよ。それとも嫌か?」

市「そんなことないですけど……///

男「じゃあ切ろう。最近だいぶ伸びてきたし」

市「わ、わかりました///」


80: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:14:17 ID:PYH1hmFC0

――チョキチョキチョキ、チョキ

男「……よし。はい、お仕舞い」

市「ありがとうございます」

男「今日はいつもより短めに切ってみた」

市「今回も素敵です。男さん、前回よりさらにお上手になりましたね」

男「フフン。実はけっこう勉強と練習してるからな」チャキチャキ

市「それって、私のためにですか?///」

男「はっ?/// いや、それは……///」アセアセ

市「私、すごい嬉しいです!///」テレテレ

男「お、おう///」


82: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:20:05 ID:PYH1hmFC0

市「男さん、ありがとうございます」

男「おう。また伸びてきたら切ってやるよ」

市「そうじゃなくて」

男「?」

市「私をそばに置いてくれて、です」

男「はぁ? き、急にどうしたんだよ///」

市「最初はいつか捨てられるんだろうと思ってましたから」


83: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:23:03 ID:PYH1hmFC0

市「私、今すごい楽しいです。幸せです」

市「こんな風にずっと続いてくれるといいなって思ってます」

男「そっか///」

市「……男さんはどうですか?」

男「え?」

市「男さんは何で私なんかを近くに置いてくれるんですか?」


84: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:26:35 ID:PYH1hmFC0

市「本当は嫌々なんじゃないですか?」

市「本当に捨てたいって思う時もあるんじゃないですか?」

男「……初めは面倒なことに巻き込まれたなと思ったよ」

男「でも、今ではお前がいてくれてよかったと思ってる」

男「お前がいると家の中が明るいんだ」

男「こんなに明るく感じるのは、まだ親父たちがいた時以来だな」

市「……」


85: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:28:45 ID:PYH1hmFC0

男「だからそんなこと気にしなくていいんだよ」

男「これからも、何てゆうか……わかるだろ?///」

市「ふふっ。そうですね」クスッ

市「これからもこんな感じで、よろしくお願いします!///」

男「おう、よろしくな///」

市「はい!///」ニコッ


86: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:34:22 ID:PYH1hmFC0

男「じゃあ帰ろうか」

市「はい、帰りましょー!」

男「いやぁでもよかったな。警察とかに補導されなくて」スタスタ

市「……」ジーッ

男「市、どうした? ボーッとして」

市「えっ!? いえ、何でもないです!」

男「すごいマヌケ面してたぞ」

市「ほ、本当ですか!?」

男「嘘嘘。冗談だよ」

市「もう! 男さん!」


89: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:38:11 ID:PYH1hmFC0

男「で、どうしたんだよ」

市「別に何でもないですよ! いーだ!」

男「そんなに怒るなって」

市「マヌケ面で悪かったですね」ツン

男「冗談だって。ゴメンゴメン」

市「……」

男「市、本当にどうした?」

市「……いえ、本当に何でもないです」

男「そんなハズないだろ。気になることがあるなら言えって」

市「…………」


91: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:40:49 ID:PYH1hmFC0

市「……笑いませんか?」

男「は?」

市「私が何言っても笑わないって約束しますか?」

男「あぁ。約束するよ」

市「…………あのですね。あの……その……」

男「?」

市「私、霊じゃないですか。フワフワしてるじゃないですか」

男「そうだな」

市「それで家の壁とか柱とか、男さんのこともスカスカって通り抜けられちゃうじゃないですか」

男「確かにな」


92: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:44:50 ID:PYH1hmFC0

市「でも、今、ちょっと思っちゃったんですよね」

市「男さんの……隣で……手をつないで歩けたらなぁ~って///」モジモジ

男「……///」

市「そ、それだけです!///」

男「……そ、そっか///」

市「あ、男さん笑ってますね!?」

男「はぁ!? わ、笑ってねぇよ!」

市「いえ、顔がニヤケてます!完全に笑ってます!」

男「そんなことねぇよ!あーもうウルサイ!」

市「うるさいってなんですか!?」

男「ウルサイうるさい!」


93: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:46:01 ID:PYH1hmFC0

市「だから言いたくなかったんですよ!」

男「だから笑ってねぇよ!」

市「あっ!逆ギレですか!?」

男「俺は笑ってない!断固認めない!」

市「もう!ホントに、もう!」


95: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:49:55 ID:PYH1hmFC0

▼後日/朝/男宅/男の部屋

―― チュンチュン。

男「……ん。朝か」

男「んン~っ、……と」

男(市は人形の中で休んでるみたいだな)

男(朝ごはん。何にしようかな……)

男(……とりあえず歯、磨こ)


96: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:52:06 ID:PYH1hmFC0

男「……」シャカシャカ

市「男さーん! おはようございまーす!」

男「……ほはほ。ほまへはいふへほへんほんふぁふぁいふぁ」
(訳:……おはよ。お前はいつでもテンション高いな)

市「そんなことないですよ。男さんが低すぎるんです」

男(……よく今の言葉が理解できたな)


97: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:55:13 ID:PYH1hmFC0

男「鞄よし。財布よし。宿題よし」

市「早く帰ってきてくださいね。今日こそ将棋の借りを返します」

男「1000年早ぇよ。それじゃ学校行ってくる」

男(あー。今日の昼飯はどうしよっかな……)

市「あっ。男さん、ちゃんと前見ないと――」

――ドゴォ!

男「足の小指ぶつけ☆%'~@<&+!!!!!」

市「だ、大丈夫ですか!? 痛いの痛いの飛んでけ~!」

男(くそ、帰ったら将棋で泣かせてやる……#)


98: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 19:57:25 ID:PYH1hmFC0

▼学校/下駄箱付近

ワイワイ ガヤガヤ

「おはよー!」
「あっ。おはよー!」

「おっす。おはよ」
「おぉ、お前か。はよー」

男「……」スタスタ



ワイワイ ガヤガヤ

「おはようございます、先輩!」
「後輩か。おはよーさん」
「センパーイ!おはよー!」
「げっ、出たな後輩女!」

男「……」スタスタスタ


100: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:00:52 ID:PYH1hmFC0

ワイワイ ガヤガヤ

「やべぇ!体育着忘れちまった!」
「バッカでー。他のクラスのヤツに借りてこいよ」

「ねぇねぇ、放課後に駅前行かない?」
「いいよ。ついでに新しいスマホ調べたいし!」

「なぁお前って今日バイトあんだっけ?」
「今日は無い。久々にゲーセンでも行くか」
「いいねぇ。他に行きたそうなヤツ誘ってみるわ」
「了解」

男「…………」スタスタスタ


101: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:04:44 ID:PYH1hmFC0

男「…………」スタスタスタ

男(今日の学校終わったら、家に帰って)スタスタ

男(すぐ着替えてバイト行く支度しなきゃな……)

―ミシッ

男(……バイト行きたくねぇ)

男(せめて店長がもっとまともな人だったらいいのに……)

―ミシミシッ


103: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:07:58 ID:PYH1hmFC0

―ミシミシッ メリメリメリ……

?「キミ、危ない! 上!」

―ガコッ

男「え?、――ぐあっ!」 ガンッ!

―ガシャーン!


「きゃあああああ!」
「マジかよ! 天井の板が落ちてきやがった!」
「おい! 誰か下敷きになったぞ!」

男「……うぅ…………」

?「大変、保健室運ばなきゃ! 誰か手伝って!」

「合点承知!」
「任せろ!」


104: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:10:49 ID:PYH1hmFC0

▼保健室

男「…………ん、んン」 パチッ

男「あれ、ここ……」

?「あっ、起きた!?よかったぁ~」

男「キミは……」

?「同じクラスの"女"だよ。わかる?」

男「あ……、うん」

女「よかった」ニコッ


105: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:17:39 ID:PYH1hmFC0

女「大丈夫? 気分はどう?」

男「あぁ。なんとか大丈夫。……今、何時?」

女「今は9時半を過ぎたところ。丁度1時間目の授業が終わって休み時間だよ」

男「そっか。そんなに寝てたのか」

女「ビックリしたよね。まさかあんなのが落ちてくるなんてね」

男「……俺、運が悪いからさ」


106: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:29:19 ID:PYH1hmFC0

男「よいしょ」ムクリ

女「ま、まだ起きちゃダメだよ! 保健の先生に診てもらわなきゃ!」アセアセ

男「大丈夫。頭打っただけだし、血も出てないみたいだし」

女「でも!」アセアセ

男「色々とありがとう。それじゃ」

女「ちょっと待って!」

男 スタスタ

女「……行っちゃった」


107: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:33:40 ID:PYH1hmFC0

▼昼休み/教室

キーンコーンカーンコーン

「やっと昼休みだよ。腹減ったー」
「早く飯食おうぜ。マジ腹減った」

男「……」ガタッ スタスタ



女「……ねぇ女友」

女友「なぁに?」

女「男くんのことなんだけどさ、ちょっと聞いてもいい?」

女友「あの根暗? アンタも朝からあんな奴の世話させられて大変だったね」

女「そ、そんな風に思ってないから」アセアセ


108: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:37:27 ID:PYH1hmFC0

女「そうじゃなくて男くんのことなんだけど」

女「昼休みになるとすぐ教室出て行くけど、いつもどこにいるのかな」

女友「知らないよ。中学の時からあんな感じだかんね」

女「話したことないの?」

女友「全っ然無い! アイツ、転校して来たんだけど初日からずっとあんな感じだし」

女「そうなんだ」


109: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:41:05 ID:PYH1hmFC0

女「その頃からあの噂があるの?」

女友「噂? あ~、人形がどうのってヤツ?」

女「うん」

女友「たぶん中学の時は無かったと思うけど、でも何かやってそうだよね。あの暗い感じは」

女「女友。さすがに言い過ぎだよ」


110: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:45:26 ID:PYH1hmFC0

女友「まさか女、あんなのが好きなの?」

女「ちょっ、違うよ!ただ、なんとなく気になっただけで……」

女友「ヤメときなヤメときな。あんなのに惚れたらアンタも変な噂が立っちゃうよ」

女「だから違うってば!女友!」

女友「あはははは」


112: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:49:13 ID:PYH1hmFC0

女「あっ、大変!」

女友「どした?」

女「吹奏楽部の顧問先生に呼ばれてたんだ!忘れてた!」

女友「あのデブ顧問に? 部長さんは大変だねぇ」

女「先生にそんな言い方しないの」

女友「へいへい」

女「女友も忘れずにちゃんと出てよね」

女友「へいへーい」

女「はいもへいも返事は1回。それじゃ行ってくるね」

女友「へ~い」


113: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:52:17 ID:PYH1hmFC0

▼職員室

顧問「これが今日から練習プラン。お前から皆に伝えといてくれ」

女「はい。わかりました」

顧問「すまんな。昼休みなのに」

女「大丈夫です。それでは失礼します」ペコッ

顧問「おう」


114: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 20:56:58 ID:PYH1hmFC0

▼廊下

女「…………」スタスタ

女「…………」キョロキョロ

女(見つからないや。校舎の中にはいないのかな。……裏門の方かな?)

女(あっ。いた)

タッタッタッ


115: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:01:50 ID:PYH1hmFC0

▼校舎裏

男「…………」ペラッ

男(こんな髪型もあるんだ……)

男(レイヤー入れて、ボリューム落として……)

男(ハサミの入れ方でこんなに変わるのか……)

男(ちょっと練習してみようかな……)

男「鞄にハサミあったよな……」ゴソゴソ


116: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:04:52 ID:PYH1hmFC0

女 コソコソ

女 ソロ~

女(何か読んでる。雑誌かな?)

女(ハサミでチョキチョキやってる……。あっ、鞄にしまった)

女(話しかけても大丈夫……だよね……?)

女 ソロリソロリ


117: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:07:39 ID:PYH1hmFC0

女「や、やほ」

男「!? ……女さんか。ビックリした」

女「脅かしてゴメンね。少しいい?」

男「どうぞ」

女「お邪魔します……」


118: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:11:13 ID:PYH1hmFC0

女「……それ、何読んでるの?」

男「ただの雑誌だよ」ペラッ

女(ヘアカタログ……女の子向けのだ……)

男「今朝はありがとう」

女「えっ?」

男「保健室に運んでくれて」

女「いや、私はたまたま通りかかっただけだし」

女「他にも手伝ってくれた人いたから……」

男「そっか。でも、ありがとう」

女「うん。どういたしまして」

男「……」ペラッ


119: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:18:41 ID:PYH1hmFC0

女「男くんってさ、女友って知ってる?」

男「知ってるよ」

女「同じ中学だったんだってね」

男「一応ね」ペラッ

女「中学の時、女友の学校に転校してきたんだって?」

男「そう。中三の時に」

女「地元はどこらへんなの?」

男「昔から転校してばっかりだったから、特に地元ってのは無いよ」

女「そっか」

男「……」ペラッ

女「……」


120: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:23:05 ID:PYH1hmFC0

男「話しかけてくるなんて初めてだね」

女「うん。でも、前からお話ししてみたかったんだ」

男「ふぅん」

女「……あのさ。答えたくなかったら答えなくていいから、1つ聞いてもいい?」

男「何?」

女「あの……男くんってさ」

女「人形に話しかけながら髪を切ってるって噂を聞いたことがあるだけど、それって本当?」

男「………………」


121: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:26:11 ID:PYH1hmFC0

男「…………」

男「…………ハァ。あぁ。本当だよ」パタン

男「気味悪くて変なヤツだと思うだろ? よいしょ」スッ

女「あっ、いや……」

男「だから、興味本位でもあまり話しかけない方がいいよ。女さんも変なヤツだって思われちゃうから」

女「そうじゃなくて――」

男「それじゃ」スタスタ

女「あの……」

女「…………」


122: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:29:36 ID:PYH1hmFC0

▼教室

女「ただいま戻りました」

女友「遅かったね。顧問先生の長話にでも捕まった?」

女「ううん。男くんと話してきた」

女友「げっ! あんなにやめときなって言ったのに……」

女「人形の噂、本当かどうか聞いてみたんだ」

女友「ホント!? 意外と度胸あるのね、アンタ」


124: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:33:52 ID:PYH1hmFC0

女友「それでどうだった、どうだったのさ?」ワクワク

女「本当みたい。女性向けのヘアカタログも読んでたし、ハサミで髪を切る練習みたいなのもしてたし……」

女友「うっわ~、怖っ! キショっ! やっぱり変な奴なんだよ!」

女「そう決め付けるのはどうかと思うけど……」

女友「いーや、そんなことない。あんなのにもう話しかけるのヤメときな」

女「でも――」

女友「デモもスモモも桃太郎! アンタまで変な噂立てられるよ? わかった!?」

女「……うん」


126: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:36:53 ID:PYH1hmFC0

▼帰りのHR/教室

担任「じゃあ今日はここまで。起立! 礼!」

担任&生徒「「ありがとうございましたー!」」

ワイワイ ガヤガヤ

男「…………」ガタッ スタスタ


127: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:41:44 ID:PYH1hmFC0

女友「女ー。部活行くよー」

女「ちょっと待って、……あっ。男くんだ」

女友「うわっ、アイツもう校庭にいるし! 早っ! ホームルーム終わったばっかじゃん!」

女「歩くの速いんだね」

女友「いや~、早く帰ってお人形遊びしたいんじゃない?」

女「う~ん……」

女友「うわっ! しかもアイツ、何も無い所でコケたし! ドンくさっ!」

女「だ、大丈夫かな」アセアセ

女友「根暗な上にドンくさいとか救いようがないわ」

女「……」

女友「ってそんなことよりほら女、ブ・カ・ツ!」

女「あ。うん。ゴメン」


129: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:46:29 ID:PYH1hmFC0

女「……女友。ゴメン、もうちょっとだけ待ってて」

――カチャッ ガラガラガラッ

女「(スゥ…) 男くーーん!」


男「!?」ビクッ


女「私、全然変だとか思ってないからー!また話そうねー!」ノシ ブンブン


男「……」

男 ノシ ヒラヒラ


131: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:51:06 ID:PYH1hmFC0

女「よし!」

女友「……」ポカーン

女「どうしたの?」

女友「……普通の子だと思ってたけど、アンタもけっこう変わってる子なんだね」

女「そう? ほら。部活に遅れるよ。急ご」ダッ

女友「こ、こらー! 私が待っててあげたんでしょー!」ダッ


133: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 21:55:53 ID:PYH1hmFC0

▼男宅

市「おかえりなさぁ~い」フヨフヨ

男「ただいま……って、何やってんの?」

市「浮遊死体ごっこです」フヨフヨ

男「なんだそれ。バカみたいだな」

市「バカみたいってなんですか! ……あれ、男さん? 学校で何かいいことありました?」

男「え、何で?」

市「なんとなく顔がほころんでるような気がします」

男「そうかな?」

市「う~……私の知らない所で何か良い事があったんだ」

男「そんなこと無いよ」

市「隠したってダメです! わかるんですからね! さあ白状してください!」ビシッ

男「さて。バイト行く支度しなきゃ」

市「無視ですか!?」ガーン


135: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:00:09 ID:PYH1hmFC0

▼男のバイト先・コンビニ

男「……」ピッピッピ

男(いつもよりオニギリが売れてる。多めに発注するか)

店長(男性)
「男君は本当によく働くわねぇ~。んもぅ! 大好き! チューしたい!」

男「すみません。店長がキモイのでもう仕事上がっていいですか?」

店長「照れないでいいのよ! ツンデレなんだからっ!」

男(店長すみません。けっこう本気です)


136: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:03:32 ID:PYH1hmFC0

店長「私は裏で事務作業してるから、何かあったら呼んでね?」

男「わかりました」

店長「……襲ってきちゃってもいいのよ?」

男「わかりました。襲います。金属バット持参で」

店長「んもう! ホントに照れ屋さんなんだから! 愛してるわよ!」

男(店長すみません。かなり本気です)


138: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:06:32 ID:PYH1hmFC0

店長「じゃあよろしくね~」

男「はい。任せてください」

店長「ああん! その声に痺れちゃうわぁ! またね~!」スタスタ

男(……バイト先選び、失敗したよなぁ)


140: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:09:57 ID:PYH1hmFC0

▼放課後/帰り道

女友「うひ~、疲れた~」

女「今日は先生も気合入ってたね」

女友「 『サボリ魔の女友が来るなんて! よーし、先生今日は張り切っちゃうぞー!』 とか、やめてよねホント。疲れるわ~」

女「あははははっ」

女友「それじゃ私こっちだから。また明日ね」

女「バイバイ。またねー」

女友「あいよー。バイバーイ」


141: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:12:49 ID:PYH1hmFC0

女(ホントに今日は疲れたな……)

女(頑張りすぎてお腹も空いてきちゃったし)

女(甘いもの食べたいな)

女(コンビニあるし、何か買って帰ろうかな~…… ――あっ!)

女 タッタッタ


142: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:17:03 ID:PYH1hmFC0

―― ウィーンッ

男「いらっしゃいませー」

女「こんばんは」

男「あ。こんばんは」

女「男くんここでバイトしてたんだ?」

男「まぁね。何か用?」

女「ううん。見掛けたから寄ってみたんだけど、話しかけちゃまずかった?」

男「一応仕事中だから」

女「あっ、そっか。ゴメンね。じゃあ、このハイチュウください」

男「105円です」ピッ

女「男くんってさ、話し方そっけないよね」

男「そうかな。……いや、そうかも」


144: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:20:12 ID:PYH1hmFC0

女「同じクラスなんだから、もっと親しくしてくれてもいいと思う。はいお金」

男「110円お預かりします。そんなこと言われてもいきなりは出来ないよ」ピピピッ ガシャーン

女「じゃあ、まずは明日から私のことは呼び捨てで呼ぶこと。いい?」

男「まぁいいけど。5円のお返しとレシートです」

女「決まり! じゃあ仲良しになった印と勤労のご褒美に、ハイチュウ1つあげます」

男「……ありがと」

女「(パクッ モグモグ) ……うん。おいしいね」

男「お客様。店内での飲食はご遠慮ください」

女「あははっ。ゴメンなさい。じゃあまた明日学校でね」タッタッタ


145: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:21:30 ID:PYH1hmFC0

男「あっ。女さん!」

女「ん。何?」クルッ

男「あの……、ご利用ありがとうございました」ペコッ

女「うん。またね」

―― ウィーン


147: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:24:10 ID:PYH1hmFC0

店長「……男君」スッ

男「!?」ビクッ

店長「誰なのあの子。もしかして彼女?」

男「ち、違いますよ。クラスメイトです」

店長「私の男君に手を出そうとする泥棒猫! 許すまじ! ブチコロス!」

男(もうダメだこの人……)

店長「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」ブツブツ


148: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:29:18 ID:PYH1hmFC0

男「店長。心配しなくても大丈夫ですよ」

店長「え……お、男君。大丈夫って何が?///」ドキッ

男「店長のものになるくらいなら、僕は喜んで自害しますから」

店長「それは男君が私の為に死ぬってこと!? これは究極の愛の形! ハフゥーン!」バタンキュー

男(ホントもうダメだなこの人は……)


149: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:36:45 ID:PYH1hmFC0

▼夜/男宅

―― ガチャッ

男「ただいまー」

市「おかえりなさーい。・……あれ、男さん。だいぶお疲れなお顔してますね」

男「今日の店長の相手がより一層キツくてな……」

市「あのオカマ店長さんですか。お話聞くかぎりだとイイ人そうですけど」

男「すごいイイ人だよ。俺の家の事情知ってるし、雇ってもらって感謝してる」

男「ただ、あのオカマっぷりがどうしても慣れないんだよな……」

市「男さん、がっつり狙われてますもんね……」


150: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:40:08 ID:PYH1hmFC0

男「あーもう! お風呂に入って忘れよう! それから夜ご飯だ!」

市「お供えも忘れないでくださいね!」

男「はいはい」

市「ご飯の後は、また将棋で勝負です!」

男「今日はハンデとして飛車角落ちで戦ってやるよ」

市「何ですと!? ナメて痛い目に遭っても知りませんよ!?」

男「上等だ!」


151: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:45:45 ID:PYH1hmFC0

▼数週間後/朝/男宅

市「男さん、ほら見てください! また髪がだいぶ長くなってきましたよー!」

男「ほぉー。こりゃまた随分伸びたなー」

市「ですよね! ですよね!」

男「つまりそれだけ俺を不幸にしてきたってことだな。よーし、今日のお供えは無しだ」

市「うぅ~……男さんのイジワル……」

男「冗談だよ。そんな顔すんな」


152: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:49:15 ID:PYH1hmFC0

市「うぅ~……」

男「わかったわかった。学校から帰ったら髪切ってやるから機嫌直せって」

市「本当ですか!? 約束ですよ!?」

男「はいはい。約束約束」

市「わーい! 楽しみです! 早く帰ってきてくださいね!」

男「ゲンキンな奴だなお前は。それじゃ、行ってくるよ」

市「はい、行ってらっしゃい! 変な人についてっちゃダメですよ~!」

男「ガキ扱いすんな!」


153: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:51:56 ID:PYH1hmFC0

▼学校/校門付近

女「男くん、おはよ」

男「ん? なんだ女か。おはよう」

女「『なんだ』って、そんな言い方は失礼じゃない?」

男「なんだ"女様"ですか」

女「違う違う。そうじゃないって」

男「なんだ"麗しき女公爵夫人"でございますか」

女「……もうイイよ。よくわかんないし」

男「ふふっ」ニヤリ

女「ずいぶんと嫌な顔するようになったね……」


154: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:55:22 ID:PYH1hmFC0

男「朝から話しかけてくるなんて珍しいな。何かご用で?」

女「ご用ってほどでもないんだけど。……あのさ、今日の放課後は暇?」

男「残念ながら大忙しだ」

女「暇なんだね。よかった」

男「おいおい待て待て。人の話を聞け」


155: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 22:58:47 ID:PYH1hmFC0

女「だって、どうせ暇でしょ?」

男「『どうせ暇』って、それこそ失礼な言い方じゃないか?」

女「どうせ暇で"いらっしゃいますよね"?」

男「違う違う。そうじゃない」

女「どうせ暇で"時間をもてあそばされてます"ことでしょう?」

男「……もうイイよ。さっきの仕返しだろ?」

女「ふふふ」ニヤリ

男「お前もずいぶん嫌な顔するようになったなぁ……」


156: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:03:25 ID:PYH1hmFC0

女「でさ。もしよかったら、放課後一緒に帰らない?」

男「どういう風の吹き回しだ? 雪でも降らしたいのか?」

女「違うよ。今日は部活が休みだから放課後が暇なの。男くんはバイト?」

男「そう、今日もバイトだ」

女「そっか。でもどっか寄り道する訳じゃないし、いいでしょ?」

男「女友がいい顔しないんじゃないか?」

女「その女友が用事ですぐ帰っちゃうから気にしないでいいの」


157: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:07:55 ID:PYH1hmFC0

男「う~ん……」

女「ダメかな?」

男(今日は早く帰って市の髪を切る準備しておきたかったけど)

男(バイトの後か、アイツの機嫌損ねなきゃいいけど……)

男「ん~……」

女「ごめん、用事あったかな? 無理なら無理でいいんだよ?」アセアセ

男(それより問題は呪いだよな。女を変なことに巻き込まなきゃいいけど)

男(……って言っても、どうせ何かあるのは俺だけか)

男「いや、……まぁ大丈夫かな」

女「本当!? なら決まり! 絶対だよ!?」

男「はいはい」


159: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:12:49 ID:PYH1hmFC0

▼昼休み/教室

女(男くん、いまだに昼休みはいなくなっちゃうなぁ……)キョロキョロ

女友「……ねぇ、女。もしかして男と付き合ってんの?」

女「え!?」

女友「よく一緒にいるとこ見るって、けっこう噂になってるよ?」

女「たしかに話しはよくするようになったけど……」

女友「しかも、だいぶ仲睦まじそうらしいじゃない?」

女「そ、そうかな。えへへ」

女友「アンタ、やっぱりあんな変なのが好きだったんだね」

女「ち、違うよ! 男くんは全然変じゃないよ! いい人だよ!」

女友「ほぉ。なるほどね」

女「何よ。なるほどって……」

女友「いや、『好き』ってのは否定しないんだなと」

女「え、あっ……///」カァァ


161: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:16:29 ID:PYH1hmFC0

女「で、でも! 本当にそういうのじゃないから!///」

女友「はいはい。でも今日は男と一緒に帰るんでしょ?」

女「な、何で知ってるの!?」ドキッ

女友「カマかけてみました」

女「えっ!?」

女友「女さん、実に積極的に攻めてますな~」ニヤニヤ

女「//////」カァ~

女「も、もう女友なんて知らないんだから~!/////」ダダダッ

女友「早く帰ってこいよ~。さて弁当弁当」


162: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:20:35 ID:PYH1hmFC0

▼昼休み/校舎裏

男「……」モグモグ ペラッ

男(今日は女と下校か……)

男(誰かと一緒に帰るのなんて、いつ振りだろう)

男(つーかクラスメイトとこんなに話すこと自体久しぶりだもんな)

男(……これって友達ってことでいいのかな)

男(帰ったら支度してすぐバイト行って、その後に市の髪切って――)

男「――なんか、忙しいな俺」ボソッ

「それヤバイwwwアゲアゲすぎるww」ゲラゲラ

「アゲアゲとかもう古いからwww」ゲラゲラ

男「!?」


164: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:23:47 ID:PYH1hmFC0

男(うわ。ウチのクラスのギャルたちだ……)

男(最悪なの来ちゃったな。隠れよう)コソコソ

「そういやさぁ、あの話知ってる?」

「なに? 都市伝説?www」

「違う違う。ウチのクラスに『男』っているじゃん」

男(俺の話……?)

「そんなのいたっけ? イケメン?www」

「いや、むしろモヤシみたいな奴なんだけどさ、そいつなんかヤバイらしいよ」

「なになに? 何がヤバイの?www」

「私もよく知らないんだけど、お人形に話しかけてるとか」

男(……)


165: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:27:19 ID:PYH1hmFC0

「なにそれ?wwwパペットマペット?www」

「いちいちネタが古いwwwじゃなくて、人形に話しかけながら髪切るのが趣味らしい」

「キショイwwwイケメンだったとしてもさすがにキショイwww」

「だよねwww私もこの話聞いた時はさすがにドン引いたわwww」

「ちなみにそれどこ情報?wwwどこ情報よそれー?www」

「『女』と『女友』っているじゃん。最近アイツラが教室でその話してたの聞いてさー」

男(!?)


166: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:30:49 ID:PYH1hmFC0

「女? そんなのいたっけ?」

「お前はクラスメイトくらい覚えろよwww」

「ごっめーんwwwイメケンだけは忘れないんだけどなーwww」

「でさ。そのキショ男と女が最近仲良さそうしてて、付き合ってるのかもって噂もあんだよ」

「キショイ!www男を見る目がまるで無い!wwww」

「だよねwwwwキショ男とか友達としてもマジありえないわwww」

「いやでも、その女って奴、良い人ぶってるだけっしょwww」

「だよね!www 『仲間外れの人に話しかける私って良い人』、みたいな?www」

「それか罰ゲームで仲良くさせられてるとか?wwww」

「それだ!間違いない!wwww」

「「キャハハハハハハッッッ」」ゲラゲラゲラ


167: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:32:19 ID:PYH1hmFC0

男(…………)

男(…………)

男(…………そっか)

男(やっぱ、そうだよな)

男(…………)

男(…………)


168: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:37:47 ID:PYH1hmFC0

▼放課後/校門付近

男「……」スタスタ

女「あっ、男くん!」

男「……」スタスタ

女「男くん、歩くの早いから先回りしてたんだ」

男「……」スタスタ

女(あれ……?)

女「男くん、聞こえてます?」

男「……」スタスタ

女「無視ですかー? 男くーん? おーい!」

男「……」ピタッ


169: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:41:21 ID:PYH1hmFC0

男「……れ」ボソッ

女「何?」

男「俺のことは放っておいてくれ!」

女「!?」ビクッ

女「お、男君……どうしたの? 私何か悪いことした?」オロオロ

男「……」

女「今日ホントは忙しかったの? なら謝るから」オロオロ

男「……悪い。もう、俺にかまうな」タッタッタ

女「あ、待っ……」

女「……」


170: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:44:25 ID:PYH1hmFC0

▼男宅

――ガチャ バタン

男「……」

市「お帰りなさい、男さん」

男「……」スタスタ

市「あれ、男さん? どうしたんですか?」

男「……」スタスタ

市「なんで無視するんですか男さ~ん」

男「……」

市「む~。そんな無愛想じゃ学校で嫌われちゃいますよ!?」


172: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:48:08 ID:PYH1hmFC0

―― プチッ。

男「うるさい!」バン

市「!?」ビクッ

男「無愛想で悪かったな! だからなんだってんだよ!」

市「お、男さん!?」

男「誰に嫌われようがかまわないんだよ!」

男「話したこともねぇクソ野郎までグチグチ言いやがって……」

男「俺のことは放っておけよ! シカトでもなんでもしてりゃいいだろうが!」

市「お男さん……どうしたんですか? 落ち着いてください……」オロオロ


173: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:52:32 ID:PYH1hmFC0

男「なぁ。これも呪いせいだってゆうのか?」

市「え?」オロオロ

男「気持ち悪いだの何だの陰で言われんのも……」

男「それが俺にわかるように言われるのもお前の呪いのせいなのかよ!?」

市「男さん……落ち着いて――」オロオロ

男「こんな胸糞悪いことになるんだったら……」

男「お前なんかとっとと捨てちまえばよかったんだ!」

市「!?」


175: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:54:34 ID:PYH1hmFC0

男「……」ハァ ハア

市「…………」

市「…………」ポロ

男「!? ――あっ、いや」アセアセ

市「……グスッ」ポロポロ

市「うっ……うぅっ……ひぐっ……」ポロポロ

市「うぅぅっ……」ポロポロ

男「市。違うんだ。ご、ごめ――」

―― フワッ シュルルル スポッ

人形「    」

男「市……」


176: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:56:36 ID:PYH1hmFC0

『市は何も言わず、人形の中に飛び込むように消えてしまった。
 
 市が泣いていた……。いつも笑顔のアイツが泣いていた。

 思えば、市が泣いている所を見たのは初めてだった。

 俺は自分の弱さを市のせいにして酷い悪態をついてしまった。
 
 ――最低だ、俺』


180: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/27 23:59:22 ID:PYH1hmFC0

▼夜/バイト先・コンビニ

男「……」ピッピッピ

男「……」ガサゴソ ガサゴソ


――――――――――

男『お前なんかとっとと捨てちまえばよかったんだ!』


市『うっ……うぅっ……ひぐっ……』ポロポロ

――――――――――


男「…………」


181: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:00:27 ID:GTJxri1i0

男「店長。もう時間なんで上がりますね」

店長「はい、お疲れ様」

男「お疲れ様です」

店長「……良かったら、お別れのキスしてあげてもいいのよ、なんてキャー! 恥ずかしいわー!」

男「お気遣いありがとうございます。お先に失礼します」スタスタ

店長「……あれ?」


182: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:03:00 ID:GTJxri1i0

▼夜/男宅

――ガチャッ バタン

男「……」

男「……ただいま」

―― シーン。

男「……」

男「……静かだな」


185: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:07:18 ID:GTJxri1i0

▼男の部屋

男「……ただいま。帰ったよ」

人形「   」

男「…………」

男「……そういえば、帰ったら髪切ってやる約束だったよな」

人形「   」

男「……よし」


186: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:09:34 ID:GTJxri1i0

チョキチョキ チョキチョキ

男「…………」

チョキチョキ、チョキ

男「……はい、できました」

人形「   」

男「……」

男「……なぁ市、聞こえてるかな?」

人形「   」

男「そのままで良いからさ、いっこ聞いて欲しいことがあるんだ」


188: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:14:20 ID:GTJxri1i0

男「俺、昔から転校が多かったんだ」

男「親父の仕事は転勤が多くて、かといって親戚もいないから俺も母親もついていくしかなくて」

男「ほぼ毎年、多い時は年に数回は引っ越ししてたよ」

男「そんなだから転校先の学校はなかなか馴染めないし、馴染んだとしてもその頃にはもうお別れ」

男「……小さい時からずっとその繰り返しだった」

男「友達と仲良くなるほど別れるのが辛くなるし、『どうせまた転校するんだろ』って思い始めたら」

男「段々学校の人と話さなくなって、友達もつくらなくなって」

男「そしたら、クラスメイトとどう接すればいいのかわかんなくなっちゃって」

男「気がつけば、学校で嫌われ者になってた」


189: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:17:54 ID:GTJxri1i0

男「でも気にしてなかったよ。どうせすぐ親父の仕事で引っ越すんだから」

男「……って思ってた罰かな。中学の時に両親とも事故で死んじまったのは」

男「それから転校は無くなったけど、そのかわり、まわりに誰もいなくなった」

男「友達なんてもちろん一人もいない。学校でも一人。家でも一人」

男「毎日がすごい退屈だった」


191: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:21:58 ID:GTJxri1i0

男「……けど、市が来てから毎日が楽しいよ」

男「静かなこの家が、お前のおかげで騒がしくて、楽しくて」

男「退屈だなんて思わなくなってた」

男「だから市には本当に感謝してるんだ」

男「なのに……なのに俺は……!」


194: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:30:43 ID:GTJxri1i0

男「さっきはゴメン! あんなこと言っちまって……ゴメン!」

男「学校でイヤなことがあって、八つ当たりしちまったんだ!」

男「お前のせいなんかじゃない、俺のせいなのにお前に酷いこと言っちまった!」

男「俺が馬鹿だった! 許して欲しい!」

男「本当に、本当にゴメン!」

男「ゴメン……市! ゴメンなさい!」


197: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:33:58 ID:GTJxri1i0

『俺の声は市に届いているのかわからなかったけど、

 俺はひたすら市に謝りつづけた。

 俺にできることは、それしか思いつかなかったから』


199: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:36:01 ID:GTJxri1i0

▼翌朝/男の部屋

―チュンチュン

市「……」

男 ZZZ

市(机につっぷしたまま寝ちゃってる……)

市(私が出てくるのを待ってたんですね)


202: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:39:50 ID:GTJxri1i0

市(男さん、辛い事があったんですね……)

市(私の方こそ、男さんのことをわかってあげられてなくてゴメンなさい)

市(心無いこと言ってしまってゴメンなさい)

市「男さん……ゴメンなさい」

男 ZZZ


203: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:42:30 ID:GTJxri1i0

市 ジーッ

男 ZZZ

市「……よし」

市(せっかくですから、この前の続きをしてあげましょう)

市(どうせ実際には出来ませんし、ホッペにするフリくらいなら……)

市(これは私からお詫びの気持ちで、決してやましい思いなんかじゃないんです!///)


205: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:45:10 ID:GTJxri1i0

市(女は度胸! はい、深呼吸!)スゥーハァー スゥーハァー

市(よし、いくのよ市!)

市「お、男さん……////」ン~

男「んん……、ん?」パチッ

市「うひゃあ!」

男「市!? ――うわっ!」ゴロン

―ドシン!

男「いててて…」

市「男さん!大丈夫ですか!?」

男「あぁ大丈夫。――って市!?」

市「はい!?」ビクッ

男「昨日は……昨日はゴメン!」


208: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:49:20 ID:t1cqsg2W0

男「本当にゴメン!」

男「お前は悪くないのに酷いこと言っちまって、ゴメン!」

市「いや、あの、え~っと……」

男「ゴメンなさい!」

市「……わ、わかりました。許してあげます」

市「髪も切ってくださいましたし、私も……その……無神経なこと言っちゃいましたし……」

市「だからもう無しにしましょう! ね!」

男「市……ありがとう。ゴメン」

市「私の方こそ、ごめんなさいです」


209: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 00:51:22 ID:t1cqsg2W0

市「でも、もしまた酷いこと言ったら……」

市「呪っちゃいますからね」ニコッ


216: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:09:24 ID:t1cqsg2W0

▼翌朝/学校/校門

男「…………」スタスタ

男「……あっ」ピタッ

女「あっ」ピタッ

男「…………」

女「…………」

女「昨日はごめんなさい」ペコッ
男「昨日はゴメン」ペコリ

女「えっ?」

男「あれ?」


218: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:13:45 ID:t1cqsg2W0

女「な、何で男くんが謝るの!?」

男「女の方こそ何で謝ってんの?」

女「だって昨日、男くん本当は大切な用事があったのに」

女「私が無理矢理に帰りの約束取り付けたから、それで怒ってるのかなって……」

男「いや、大切な用事なんてなかったけど……」

女「えっ!? じゃあ何で怒ってたの!? 何で謝るの!?」

男「いや、その……」

男「実は昨日の昼休みなんだけど――」


219: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:16:04 ID:t1cqsg2W0

男「――って話をたまたま聞いちゃって」

男「だから変な風に思い込んで、それで……」

女「……なるほどね」

女「つまり、私が本当は面白半分で、しかも嫌々で男くんに話しかけてると思った、ってこと?」

男「……はい」


221: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:20:24 ID:t1cqsg2W0

女「男くん?」

男「……何でしょうか?」

女「バカ!」

男「!?」ビクッ

女「そんなことする訳ないでしょ!」

男「……ごめんなさい」

女「バカ! もう、大バカ!」

男「返す言葉もありません」ペコ

女「そんな風に思ったなんて……許せない! もう本当に怒った!」

男「本当に、本当にごめんなさい」ペコペコ


223: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:24:59 ID:t1cqsg2W0

男「俺に出来る事があれば何でもしますので」

男「その……、どうにか許して欲しいです」

女「じゃあ、もう絶対私を無視しないこと!」

男「へっ?」

女「朝と帰りには挨拶を忘れずにすること! いいね!?」

男「あっ、えっ、でも」

女「わかった!?」

男「は、はい! わかりました!」


224: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:30:35 ID:t1cqsg2W0

女「それと、お詫びに今日の放課後こそ一緒に帰ってもらうからね」

男「でも今日は部活とか――」

女「口答え禁止!」

男「わ、わかりました!」

女「よろしい。じゃあ私、先に教室行ってるね」

男「は……はい」

女「男くんも早く来なよ~」タッタッタ

男「…………」ポリポリ


226: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:34:03 ID:t1cqsg2W0

▼数週間後/朝/学校/教室

担任「唐突だが、皆に話しておきたいことがある」

担任「来月に行われる学園祭でウチのクラスがやる出し物だが、決めるのをすっかり忘れてた」

クラス一同「「「えぇー!?」」」

担任「それでだ。我がクラスの出し物はお好み焼きに決めた。俺が食いたいからだ。異論は認めない」

「えー!?何で勝手に決めてんの!?」
「しかもアンタが食いたいからかよ!」
「横暴にも程があんだろ!」

担任「何とでも言え。これが権力だ」


ワー ワー ガヤガヤ ガヤガヤ


228: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:39:27 ID:t1cqsg2W0

担任「そんな訳で1時間目は自習だ。学園祭の準備に使え」

担任「段取りは……そうだな、委員長に任せた」

委員長「ふぇ!?」

担任「そして俺は職員室で寝る」


「結局は委員長ちゃん任せかよ!」
「しかも自分は寝るんかい!」
「しょ、職権乱用だろ! ふざけんな!」


担任「うるさい小蝿どもだ。悔しかったら早く大人になることだな」

担任「それでは諸君、さらばだ」スタスタ

ワー ワー ガヤガヤ ガヤガヤ


229: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:43:04 ID:t1cqsg2W0

がやがや… がやがや…


「マジかよ、あの先公……」
「職務意欲がまるで無い……腐ってやがるぜ……」
「準備しろって言われても、材料も道具も何も無いじゃんね」
「委員長ちゃん、どうするー?」


委員長「あの……えと……」オロオロ

委員長「まずは役割を分担しましょう……」

委員長「それと、急いで看板や内装等を作り始めたいので……」

委員長「皆さん、あの……放課後、残ってください……!」


231: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:46:50 ID:t1cqsg2W0

▼放課後/教室

男 キョロキョロ ソロ~リ

女「男くん!」

男「!?」ビクッ

男「な、何でしょうか女さん?」

女「何じゃないよ。帰ろうとしてるでしょ!?」

男「きょ……今日はそろばん塾が!」ダッ

女「はい嘘!」ガシッ

男「駅前のスーパーが特売日なんです!」ジタバタ

女「ダーメッ! 男くんもやらないとダメだよ!」


234: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:50:51 ID:t1cqsg2W0

男「わかりました、降参です。残りますから……」

女「当たり前です」

女「私はこれから女友と委員長ちゃんと一緒に美術室に借り物してくるから、ちゃんと待ってるんだよ?」

男「はい。了解です」

女「素直でよろしい」


236: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:55:23 ID:t1cqsg2W0

委員長「あの……女さ~ん、そろそろ……」

女友「声ちっちゃ! 委員長ちゃん、こんくらい叫ばなきゃ。お~い女ー! はよ行くよー!」

女「今行くー! ……すぐ戻ってくるからね! 逃げちゃダメだからね!」m9 ビシ

男「あ、あぁ。わかったよ」

女「絶対だからねー!」タッタッタ


オソイヨ!ナニシテタノ!
ゴメンネゴメンネー。
ア、アノ。ケンカハ……ダメデス……。


男「…………ハァ」


237: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 01:58:40 ID:t1cqsg2W0

「よーし! 俺たちは看板作りだ!」
「せっかくだからデッケェの作ろうぜ!」
「色もド派手なやつがいいな!」


「クラスのみんなで着るTシャツつくろうよ!」
「賛成ー! 異議なーし!」
「じゃあ私がデザインやる!」


男 ボーッ

男(みんな真面目にやってるな)

男(手伝えって言われても何すればいいのか……)

男(みんな仲良い同士で集まって分かれてるみたいだし……)

男(……早く帰りたい)


239: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:04:30 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「くそっ、この!」ピコピコ

DQN男2「もう少しだ! いけるべ!」ピコピコ

DQN男1「うおおぉ! うわっ、また死んだよ……」 チュドーン

DQN男2「お主はガードが甘いべ。そのランスと盾は飾りだか?」

DQN男1「後ろの方でずっと笛吹いてる奴にゃ言われたかねぇ」ゲシッ

DQN男2「コ、コラ! 暴力は反対だべよ!」

DQN男1「あーあ。学園祭とかカッタリーよなぁー」


240: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:07:32 ID:t1cqsg2W0

男 ボーッ

DQN男1「……なぁ。暇だしアイツいじって遊ばね?」ヒソヒソ

DQN男2「あのハブられをか? 放っとけばいいべよ」ヒソヒソ

DQN男1「なぁに。ちょっとからかってやるだけよ」ヒソヒソ

DQN男2「まったく。お主は悪よのう」ヒソヒソ

DQN男1「うへへ。よし、行くか」ヒソヒソ


243: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:09:50 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「おい、男! お前何サボってんだよ!」

DQN男2「サボリ!? そいつは見逃せないべなぁ~!」

男「…………」

DQN男1「あ? シカトか? お前も少しぐらい手伝ったらどうなんだよ!」

DQN男2「自分だけ楽しようとしちゃいかんべよ」

男(お前らもずっとPSPで遊んでたろ。からんでくるなよ……)


244: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:13:21 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「何黙ってんだよ! おい!」

男「……別に俺がしなくてもどうにかなりそうだし」

DQN男1「は? そうやって何もしないでいるつもりかよ」

男「その分当日に何かやれば良いだろ?」

DQN男1「言い訳ばっかしやがって。 お前、クズ野朗だな」


247: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:19:07 ID:t1cqsg2W0

―― カチン

男「お前らだってさっきからずっとゲームしてるだけだろ」

男「自分らのことは棚に上げてつっかかってくんなよ」

DQN男1「出たよ、言い訳。今はお前の話してるんだっつーの」

男「お前らに言われたくねぇってことだよ。分かれよ」

DQN男1「はいはい。根暗でハブのクセに、口だけは達者みたいだな」

男「根暗でハブだろうが、お前よりはまともな人間だよ」

DQN男1「は? お前なに調子乗ってんの?」

DQN男2「お主、そんなんだからハブにされるって自覚してるべか?」

男 ピクッ


248: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:21:32 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「ウゼェな。お前ホントにウゼェよ。何なのお前?」

男「ウザくて結構。なら俺もう帰るわ」スタスタ

DQN男1「待てよ人形野郎!」

男 ピタッ

DQN男1「お前、どうせ家に帰っても一人でキモイ人形いじくって遊んでるだけなんだろ?」

男「……は?」


249: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:24:17 ID:t1cqsg2W0

▼校舎内/廊下

女「美術道具、一通り借りれてよかったね」

女友「さては美術の先生、私の美貌に惚れたな?」ニヤリ

委員長「女友さん……胸大きいですもんね……」

女友「そう?」ボインッ

女「むむ。たしかに……」ペタッ

委員長「うらやましいな……」ペッターン


250: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:27:26 ID:t1cqsg2W0

女「委員長ちゃんは髪の毛すごいキレイだよね」

委員長「そ、そうかな……///」

女「腰まであるのに毛先までサラサラだし」

女友「ほんともうシルクのような肌触りでクセになるわ……」サワサワ

委員長「うぅ……///」

女「私なんていつもパサつくからウラやましいなぁ~」

委員長「実はね、シャンプーとか……こだわりがあるの……///」

女友「ん~。こだわるだけあって、イイ匂いですねぇ」クンカクンカ

委員長「あっ、やめ……頭嗅がないで///」

女友「んー! 委員長キャワイー!」スリスリ

委員長「ひゃうぅっ……//////」

女「何してるのよ……」ハァ


252: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:32:26 ID:t1cqsg2W0

女「前髪もすごい長いよね。もう少し短くしてみたらどう? 前見えにくくて大変でしょ?」

委員長「ううん……これでいいの。私ね、顔見られるのが…・…恥ずかしいから……」

女友「恥ずかしがり屋の委員長ちゃん、もっとキャワイー!」スリスリスリ

委員長「ふわぁっ……//////」

女(顔もカワイイのに、勿体無いなぁ)


253: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:34:59 ID:t1cqsg2W0

▼教室


ざわざわ… ざわざわ…


ネェ、ドウシタノ? ワカラナイケド、ケンカシテルミタイ…


DQN男1「知ってんだよ!お前、キモイ人形の髪の毛切って遊んでるキチガイなんだろ!?」

DQN男2「おやおや。そうだったんだべか?」

男「…………」


254: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:36:57 ID:t1cqsg2W0

DQN男2「高校生にもなって人形遊びとは、マジでウケるべ」

DQN男1「みんなー、聞いてくれよー! コイツね、人形の髪の毛切って遊ぶのが趣味なんだよー! キモイよねー!?」

男「…………」


マジカヨ… アノウワサホントダッタンダ… ナイワァ…


がやがや… がやがや…


255: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:39:26 ID:t1cqsg2W0

▼教室付近/廊下


ガヤガヤ… ガヤガヤ…


女友「ん? 何かウチの教室の方、騒がしくない?」

委員長「どうしたんでしょうか……」

女「男子の声がするね」

女友「どうせくだらない事で騒いでるんでしょ」

委員長「人形が何かって……話してるみたいです……」

女「人形……?」


256: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:42:14 ID:t1cqsg2W0

▼教室


がやがや… がやがや…


DQN男1「なぁ男、そうだよな。人形の髪切るのが大好きなんだよな?」

DQN男2「リカちゃんだか? それともバービーちゃんだか? ん?」

男「…………」

DQN男1「何だダンマリかよ。さっきまであんなにツッパってきたクセによぉ……」

DQN男1「人形の髪切って喜んでるオタク野朗が調子乗ってんじゃねぇよ!」


258: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:46:21 ID:t1cqsg2W0

▼教室付近/廊下


「人形の髪切って喜んでるオタク野朗が調子乗ってんじゃねぇよ!」


女「!?」

女友「あーあー。なんて大声で叫んでんだか……」

委員長「人形……髪……?」

女「……女友、ゴメン。ちょっとこれ持ってて」バッ

女友「え? おっとぉ!」ガシャガシャ

女 ダッ

女友「ちょっと、女!?」

委員長「?」


259: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:49:30 ID:t1cqsg2W0

▼教室

がやがや… がやがや…


男「……」


ホントニヤッテタンダ…

モシカシテ、ガッコウニモ、ソノニンギョウモッテキテルトカ…

ウワッ、キモチワル…

コレハマジデ、キショイ…


男「…………」

男「……気持ち悪いオタクで悪かったな。じゃあな」

男 スタスタ


260: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:53:07 ID:t1cqsg2W0

▼教室の前/廊下

―― ガラガラッ。

男 スタスタ

女「お、男くん!」

男「……悪い。今日はもう帰るわ」

女「ちょっと待って!」

男 スタスタスタ

女「……」


261: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 02:56:55 ID:t1cqsg2W0

▼教室

DQN男1「いや~。あーゆう調子乗ったバカがいると、ホント困るんだよな」ケラケラ

DQN男2「俺達かっこいいべよ。悪を正すって感じで」ケラケラ


アンタタチモ、カエッテイイケドネ…

ウルサイシ、アソンデルダケダシ…


がやがや… がやがや…


262: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:00:19 ID:t1cqsg2W0

女友「アイツらもまぁ、やってくれたわよね」

女「私、あの人たち嫌い」プイッ

女友「愛しの男を馬鹿にしたから?」ニヤニヤ

女「女友! 怒るよ!」

女友「ヒィー! 怖ろしや怖ろしやー!」

女「もう!」

委員長「男君って、人形の髪を……切ってるの……?」

女「あっ、あのね、違うの委員長ちゃん! 誤解しないで!」アセアセ

委員長「……私はそういうの、素敵だと思うな///」

女「えぇ!?」

女友「ウヒョー! まさかの展開wwww」


265: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:02:50 ID:t1cqsg2W0

▼校庭

男 スタスタ

男(だから帰りたかったんだよ#)イライラ

男(俺がいても結局こうなるんだから#)イライラ

男(帰ったら市の髪切る練習でもして……、――あっ!)ピタッ

男(……鞄、教室に忘れてるし)

男「…………クソッ!」クルリ スタスタ


266: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:06:30 ID:t1cqsg2W0

▼教室


がやがや… がやがや…


「Tシャツのデザインできたよー!」
「いいじゃん! カッコいいよ!」
「『和』って感じがしていいよね!」
「えへへ///」


「看板、こんな感じでどうよ?」
「う~ん。もう少し派手にしようぜ」
「オーケー。あれ、ペンキどこだ?」
「そこらへんに置いてあるだろ?」


がやがや… がやがや…


269: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:09:53 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「あ~、また退屈になっちまったな」

DQN男2「PSPもついにバッテリー切れ……。暇だべや」

DQN男1「おっ、新聞紙発見。こいつを丸めて……」グシャグシャ

DQN男2「何してるだか?」

DQN男1「よし出来た。へへっ、左手はそえるだけってね……シュウッ!」ポイ

DQN男2「甘いべ! ハエタタキ!」パシッ!

DQN男1「打ち落した……だと……?」

DQN男2「ゴール下は戦場だべや。ウホッ!」


270: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:13:28 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「なんの……もういっちょう!」ポイ

DQN男2「ふんっ!」パシッ

DQN男1「ちょっ、バカ! 飛ばしすぎ――あぶねぇ!」ドンッ!

委員長「きゃあ!」ドカッ!!

ガシャーン!! カラカラカラ…


271: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:15:40 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「いてて、悪い悪い……うわっ!」

女「委員長女ちゃん、大丈――!?」

女友「ちょっとアンタ達何してるのよ!――あっ!」

委員長女「痛い……、――!?」

委員長女「わ、私の……髪……ペンキ……」

委員長女「そんな……ヒドイ…・…」ポロッ

委員長女「ヒドイよ……うぅ……」ポロポロ

委員長女「うあぁ~ん!!」ボロボロ


273: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:18:54 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「お……おい! 誰だこんな所にペンキ置きっぱの奴は!?」

DQN男2「は、早く名乗り出ると良いべ。こいつキレると手がつけられんからのぉ!」

女友「ふざけないでよ!アンタら自分が何したかわかってるの!?」

女「そうだよ!」

DQN男1「はぁ!? そっちもチョロチョロしてんのが悪いんだろうが!」

DQN男2「こっちだけが悪いわけじゃねぇべよ!」

女友「アンタらって人は!」

女「最低! 謝りなよ!」

DQN男1「し……、知るか! このペンキ置きっぱの奴に謝らせろや!」ドカッ

――ガンッ カラカラカラ…


274: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:21:06 ID:t1cqsg2W0

―― シーン…。

女友「何なのコイツら……。女、委員長ちゃんは大丈夫?」

女「うん。怪我はなさそうだけど、制服の後ろとシャツ、あと髪に……ペンキが……」

女友「ペンキって落とせないっけ? ほら、水とかかければ!」

女「ううん。そんなんじゃ無理だよ……」

委員長「ひっく……ひぐっ……うう……」ボロボロ


275: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:22:35 ID:t1cqsg2W0

ざわざわ… ざわざわ…


ガクエンサイノジュンビドウスンノ…
アヤマレバイイノニ…
アレハヒドイヨネ…


女友「委員長ちゃん。とりあえず今日は帰ろう? ね?」

委員長「ひぐっ……イヤだよ……、このままじゃ……ぐすっ……帰れないよぉ……」

女友「何とかしてあげたいけど……」

女「どうしよう……」


278: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:23:56 ID:t1cqsg2W0

――ガラガラッ

女「!?」

女友「!?」

DQN男1&2「!?」

クラスメイト 「「「 !? 」」」



男「…………?」



男(えっ。な、何この張りつめた空気……)

女「そっ、そうだ!男くん!」ガシッ

男「うわっ! 何だよ!?」

女「頼みがあるの!」

男「だから何だっての!?」

女「お願い! 委員長ちゃんの髪を切ってあげて!」

男「……は?」


279: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:26:35 ID:t1cqsg2W0

男「霧吹きは美術室の備品。散髪用洋服カバーは新聞紙で代用」

男「そしてコーム、ブラシ、ドライヤー、さらにはコテやらワックスまで……」

男「よくもまぁ揃いも揃ったもんだ」

女「今時の女の子たちはこのくらい持ってて当然だよ」

男「何しに学校に来てんだよ……」

女「い、いいでしょ! 必要なの!」

男「ハァ……。そんで、このデカイ鏡は?」

女友「美容院といえばやっぱ大きな鏡っしょ」

女友「だから女子トイレの借りてきちゃった。テヘッ☆」ペロッ

男「なんというパワフル」


280: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:28:58 ID:t1cqsg2W0

委員長「グスッ……グスッ……」

男(しかしずいぶんとペンキついちゃってんな)

男(でも、肩から下だけなのが不幸中の幸いか。そこは切り落として……)

男(後は全体のバランス整えて……うん)

男「なぁ委員長。ペンキのついてる部分はバッサリ切っちゃうけど、いい?」

委員長「グスッ……、うん」コクン

委員長「このままじゃ……帰れないから……」

男「……わかった」

委員長「男君……あの……」

男「大丈夫。俺に任せて」ニコッ

委員長「……う、うん///」


281: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:32:47 ID:t1cqsg2W0

男(とはいえ人間相手は初めてだし、少し不安だ……)

男(市の人形がそのままデカくなったと思えば……いけるかな……)

男(……いや、迷ってられないぞ。委員長の為にもやらないと。とりあえず一回深呼吸して……)スゥ ハァ

男(――よし!)

男「……では、始めます」

チャキチャキチャキチャキ…

チャッチャッチャッチャッチャ


283: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:36:48 ID:t1cqsg2W0

チャキチャキ
チャッチャッチャッ


「……おい。アイツ、けっこう上手くないか?」
「上手いとかいうレベルじゃないだろ。プロかよ、アイツ」
「ハサミさばきが素人じゃねぇ」

「本当の美容師みたいじゃない?」
「男って美容室でバイトかなんかしてんのかな」
「私、なんかカッコよく見えてきたんだけど……」


ざわざわ… ざわざわ…


女(……男くん)


287: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:39:53 ID:t1cqsg2W0

ブォーー

サッサッサッ

男「よし。こんなもんかな」

委員長「終わりました……?」

男「あっ。ちょっと待って。せっかくだし最後に軽くセットするから」

ササササッ

男「……これでよし。はい、完成」


―― シーン…。


男(やべぇ。調子乗りすぎたかな……)


288: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:42:12 ID:t1cqsg2W0

パチ… パチ…

パチパチパチ…

パチパチパチパチパチ!!

クラスメイト 「「「 ス……スゲェェーー!!!! 」」」

男「!?」ビクッ

「お前すげえな! とんだ隠れ技持ってやがって!」
「男でも惚れるわ、あんなハサミ使い見せられたら!」

男「あははは……///」ポリポリ

「ペンキももう全然ついて無いよ! よかったね委員長ちゃん!」
「一時はどうなるかと思ったけど、逆にもっとカワイくなったよ!」
「ほんとほんと! すごいカワイイよ!」

委員長「あっ、その……どうも///」オロオロ


290: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:46:13 ID:t1cqsg2W0

女「男くん!」

男「おぉ、女か」

女「スゴイよ! 男くんに頼んでよかった! ありがとう!」

男「ま、まあな///」

女友「やるじゃんアンタ! 見直したよ!」ゲシッ

男「痛ッ! なんだお前!」


292: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:48:40 ID:t1cqsg2W0

委員長「お、男君!」

男「はい!?」

委員長「あの……その……」

委員長「あ、ありがとうございます。髪型、素敵です///」

男「いや、え~っと、どういたしまして……///」ポリポリ

委員長「//////」

男「前髪も勝手に切っちゃったけど、よかったかな?」

委員長「本当は長い方が好きだったんですけど……」

委員長「男君に切ってもらって、短いのも好きになりました///」

男「そ、そっか。ども///」


293: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:51:37 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「おい、男ぉ!」

クラスメイト 「「「 !? 」」」

男「……なんだよ」

DQN男2「そんな怖い顔しなさんな。委員長さんも、ちょっとこっち来るべや」

委員長「は、はい……」

ナニスルキカシラ… マタケンカウルノカナ…

ざわざわ… ざわざわ…


294: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:53:48 ID:t1cqsg2W0

女「あの人たち、また!」

女友「女、ちょっと待ちなさい」ガシッ

女「女友!」

女友「いいから。黙って見てなさい」

女「……わかった」


296: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 03:57:13 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「……」

DQN男2「……」

男「……」

委員長「……」

女「……」

女友「……」


DQN男1&2 「「 うおおおぉぉぉぉーーー!! 」」バッ



\ スミマセンデシタァァーー!! /
DQN男1  orz
DQN男2  _o2  



クラスメイト 「「「 ウ……ウオォォーー!! 土下座だーーー!! 」」」


297: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:02:52 ID:t1cqsg2W0

DQN男1「調子に乗ったのは俺たちの方だ! 本当にすまなかった!」

DQN男2「男、委員長さん! 許してくれんべか! この通りだ!」

男「別にいいよ、俺はもう。俺より委員長にもっと謝りなよ」

DQN男1「スマネェ! 謝って許されることじゃねぇけど、スマネェ!」

DQN男2「堪忍してくだされ、委員長!」

委員長「私も、いいですよ。男君が許すなら……私も許します」ニコッ

DQN男1「あ……ありがとうございます!」

DQN男2「ありがたや! ありがたや!」


300: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:06:38 ID:t1cqsg2W0

女友「うむ! これにて一件落着ぅ~!」デデン

女「女友、はしゃぎ過ぎ」

男「あははは……」

委員長「男さん……」チョイチョイ

男「ん、何? 委員長――」



委員長「//////」

ホッペニチュッ




男「え?」

女&女友「え!?」

クラスメイト 「「「 えええぇぇぇぇ!!!? 」」」

委員長「……私からの、お礼です///」ニコッ



男 ポカ~ン


302: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:11:30 ID:t1cqsg2W0

▼夜/男の自宅

―― ガチャッ

男(今日は大変な一日だったな……)

男「ただいまー」

―― シーン。

男「あれ? 市?」


304: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:13:50 ID:t1cqsg2W0

▼男の部屋

市「…………」

男「市、ただいま。……あれ、どうした?」

市「男さん!? お、おかえりなさい! すみません、ちょっと考え事をしてました」

男「へぇ。市も真面目な顔して考え事なんかするんだな」

市「はい……」

男「……あれ?」


307: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:15:37 ID:t1cqsg2W0

市「でも……その……だ、大丈夫です! なんでもないです!」ニコッ

男「本当に大丈夫なのかよ」

市「大丈夫ですよ。ほら、私は元気ですから!」

男「……何を考えてたのかわからんが、あまり思いつめるなよ?」

市「はい! ありがとうございます!」ニコッ


309: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:20:24 ID:t1cqsg2W0

市「ところで、今日は遅かったですね」

男「近々、学校で学園祭があるんだけど、その準備があってな」

市「学園祭ですか! 何か催しをやるんですか!?」

男「まぁな」

市「うわぁー、スゴイです! 男さんは何をするんですか!?」

男「呪いの市松人形を見世物小屋にでも出そうかと」

市「……え?」

男「……ぷっ。あははは。嘘だよ。ただのお好み焼き屋だよ」

市「ちょっ、男さん! 言って良い事と悪い事があるんですよ!」

男「あはははは。ゴメンゴメン。冗談だって」

市「もう!」


310: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:23:42 ID:t1cqsg2W0

男「そんなに怒るなって。今日は土産話しがあるんだ。夕飯でも食べながら話すよ」

市「何ですか? 面白いことですか?」

男「まだ内緒。よし、今日はお好み焼きにするか」

市「ということは今日のお供え物も!?」

男「お供えは青ノリと紅ショウガのみだ」

市「ガーン! そんなぁ……」

男「あはははは。嘘嘘。ちゃんと市の分もつくるよ」

市「お、男さん!もう! ホントにもう!」


313: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:26:59 ID:t1cqsg2W0

『後日、学園祭は多大な盛り上がりをみせ、
 出し物のお好み焼き屋も大成功に終わった。
 
 学園祭準備の一件から、俺はクラスメイトとも打ち解けることができ、
 これまでの学園生活は一変して明るいものとなった』


314: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:29:58 ID:t1cqsg2W0

▼後日/昼休み/教室

「あー腹減った。体育の後ってマジ腹減るよなー」
「男ー。一緒に飯食おうぜー」

男「おー」


「男クン。私たちも一緒にご飯食べていいかな?」

男「あ、あぁ。いいよ」

「やったぁ! いいってー!」
「お邪魔しまーす!」


DQN男1「男、あのよ……」

DQN男2「俺らも一緒にいいべか……?」

男「仕方ないな。ほら、来いよ」

DQN男1&2「「やった!」」


がやがや… がやがや…


316: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:33:35 ID:t1cqsg2W0

女「む~……」チュー

委員長「女さん……あの……」

女友「女、パックのジュースはちゃんと手に持って飲まないとこぼすよ?」

女「むむ~……」チュー

女友「それにしてもアイツ。あの日からずいぶん人気者だこと」

委員長「他のクラスの人も、よく、見に来てますし……」


317: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:35:04 ID:t1cqsg2W0

女友「ねぇ。女」

女「ふぁい?」チュー

女友「すっかり取られちゃったね、マイラブ男くん」

女「ぶはっ!」ブバッ

女友「うわ! 汚っ!」ササッ

女「ごほっごほっ! ……女友!」

女友「アンタ、もうクラスメイトにもバレバレよ。ねぇ委員長ちゃん」

委員長「女さんが行かないなら、私……行こうかな」

女友「おっ。委員長ちゃんはけっこう積極的だね」

委員長「あっ、いえ、そんなことは……///」

女「うぐぐ」


318: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:37:41 ID:t1cqsg2W0

女友「人形のあの話は美容師になる為の練習、ってことだったのかな」

女「そうかも。だからヘアカタログもよく読んでたんだね」

委員長「勉強家……なんですね」

女友「そしてここに来て恋のライバル多数出現! どうする女!」

女「べ、別にどうもしないから!///」アセアセ

委員長「じゃあ私、立候補してきちゃいます……///」

女「ダ、ダメー!」


319: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:40:34 ID:t1cqsg2W0

▼放課後/進路相談室

担任「………………」

男「………………」

担任「学園祭終わっても、決まってないのはお前だけだぞ?」

男「……はい」

担任「そろそろどうするか決めないと、間に合わんぞ?」

男「……はい」

担任「お前は成績も良いし授業態度も申し分ない。大学進学を勧めたいが、お前にはお前の都合があるだろうしなぁ……」

男「…………」

担任「仕方ない。今週末にまた聞くから、それまでに考えとけ」

男「……わかりました」


321: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:44:11 ID:t1cqsg2W0

▼帰り道

男(進路か……)

男(進学出来るものならとっくに決めてるよ)

男(でも、大学通いながら学費稼ぐ自信ないし、奨学金ってのもなぁ……)

男(親父たちのお金も残しておきたいし……)

男(このままずっと、あのバイトでも続けてよっかな)

男(それでそのまま就職ってのも1つの手かも……)

男(でもそんなことなったら……)



……
………


322: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:47:54 ID:t1cqsg2W0

店長『男くんがこの店に就職!? ずっと私と一緒にいてくれるってこと!?』

店長『そしてゆくゆくは……結婚!? ハフゥーン!!』バタッ

………
……



男(…………)

男(……進路についてはまた後日検討しよう)


325: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:51:20 ID:t1cqsg2W0

▼男宅

――カチャッ パタン。

男 コソコソ

男(今日はこっそり帰って市を驚かしてやろう)

―― シーン。

男(この感じだと、市は俺の部屋かな……)

男(いきなり部屋入ったら驚くかな。ウシシ)

男 コソコソ


326: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:53:59 ID:t1cqsg2W0

▼男の部屋

男「よっ! ただいま!」

市「!?」

男「!?」

市「あ……いや……」アセアセ ゴシゴシ

市「お、男さん! お帰りなさい!」ニコッ

男「市……。お前……泣いてたのか?」


328: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:56:06 ID:t1cqsg2W0

市「ち、違います! 目にホコリが入っちゃって!」ゴシゴシ

男「何言ってんだよ! どうした!? 何かあったのか!?」

市「お……お腹が痛くなっちゃったんですよ」

男「嘘つくな」バシッ

市「ちょっと! 私(人形)を叩かないで下さい!」


329: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 04:59:38 ID:t1cqsg2W0

男「どうしたんだよ。何で泣いてたんだよ?」

市「いや……その……」

男「俺にも言えないことなのか?」

市「…………」

男「そうか……。言えないのなら仕方ない…」ゴソゴソ

市「え?」

男「こんなことはしたくないが、言えないのなら仕方がない!」クワッ

人形 ヌギヌギ

市「や、やめてー! 言いますから! だから着物取るのはヤメてー!///」


331: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:02:53 ID:t1cqsg2W0

市「あのですね、考えごとをしてたんですよ」

男「考え事? そういや前もそうやってボーっとしてたよな」

市「はい……」

男「何考えてたんだ? 夕飯か? 夜ご飯か? 晩飯か?」

市「全部ご飯じゃないですか! 違いますよ!」

男「まさかデザートまで考えているとは……。食べれないクセになんという食い意地……」

市「だから違いますよ!」


333: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:07:19 ID:t1cqsg2W0

市「あの……怒らないで聞いてもらえますか?」

男「あぁ。わかったから話してみろ」

市「え~っと……前にケンカした時のこと覚えてます?」

男「ケンカした時のこと?」

市「男さんが私のことなんか捨てちゃえばよかったって言った時ことです……」

男「あの時は、その……ゴメン! ほとんど八つ当たりみたいなもんで!」アセアセ

市「ち、違うんです! そうじゃないんです! そうじゃなくて!」

男「?」


336: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:10:22 ID:t1cqsg2W0

市「男さん。制服もボロボロで、お怪我も多いじゃないですか」

市「私の呪いのせいで、本当に迷惑かけてるんだなって」

市「私は男さんの傍にいない方が良いんじゃないかと思っちゃって……」

市「もしかしたら私のせいで、この先もっと取り返しのつかない事を起こしちゃうんじゃないかと……」

市「それで、いつか本当に捨てられちゃうんじゃないかって、やっぱり思っちゃって……」ジワッ

男「…………」

男「……まったく、市はバカだなぁ」

市「えっ?」グスッ


337: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:13:20 ID:t1cqsg2W0

男「確かに俺の制服はボロボロで、体のあちこちは傷だらけ」

男「オマケに通常の人生の100倍以上は鳥のフンを浴びていると自負している」

市「うぅ……」

男「でもそれで、市がいなくなればいいなんて思ったことなんて一度も無い!」

男「この前のは……、あんなのは俺の本心じゃない」

男「いっぱい大変な目に遭ってる。けど、前にも言ったように、俺はお前がいてくれることに感謝してるんだ」

男「俺はこの先、何があっても絶対にお前を捨てたりなんかしない」

男「だから、勝手に変な想像して泣くなって」


338: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:15:52 ID:t1cqsg2W0

市「でも……」

男「まだ納得してないみたいだな」

市「……」

男「……ならわかった。こうしよう」

市「?」

男「俺はお前の呪いなんかに負けないことを証明してやる!」

市「……証明?」


341: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:19:03 ID:t1cqsg2W0

男「実は俺な、そろそろ進路を決めなきゃいけないんだ」

市「進路……ですか?」

男「そう。要は高校卒業した後は大学に進学するのか、就職するのか決めろってことだ」

男「元々進学希望だったんだけど、なかなか決めきれなくてさ」

男「どうするか迷ってたんだけど、決めた。大学を受験する!」


343: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:23:09 ID:t1cqsg2W0

男「お前の呪いはきっと俺を落とす為にあの手この手を使って邪魔してくるだろう……」

男「でも、そのすべてに打ち勝って、大学も合格して……」

男「俺は市の呪いなんかには負けないことを証明してやる!」

男「それでどうだ!」

市「…………」

男「……あの、……どう……でしょうか?」

市「…………う、うえぇぇぇ~~ん!」ボロボロ

男「え!? な、何で!? どうしたんだよ!?」

市「だっで、だって男さん優しいんだもん!」ボロボロ

男「はぁ!?」

市「私ずっと不安だったんですよ! ホントに不安だったんです!」ゴシゴシ

男「まったく……、市はバカだなぁ」

市「バカじゃありませんよ!」グスッ


344: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/28 05:24:08 ID:EWs7I0tj0

(美容師は…?)


348: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:30:59 ID:t1cqsg2W0

>>344 そのあたりの話は、一通り書き終えたらお話しますね。


347: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:29:36 ID:t1cqsg2W0

男「市。呪いって漢字で書くと、"マジナイ"とも読むのは知ってるよな」

市「はい。でも呪いとマジナイじゃ全然違いますよね……」

男「そうだな。ただ、どっちも同じ、相手への願いや想いなんだよ」

市「願いや想い……ですか?」

男「そう。良いことでも悪いことでも、相手を強く想う気持ちとか願いが、呪いやマジナイになるんだ」

男「だから、市が俺の為を想って願ってくれれば、呪いの力もきっとマジナイに変わる」

男「市が祈ってくれれば、俺は何でも出来る気がするんだ」

市「男さん……」

男「だから、これからは毎日俺の為に祈っててくれよな。頼んだぞ?」ニコッ

市「は、はい!」


352: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:35:23 ID:t1cqsg2W0

男「よし! それじゃあ早速今日から受験勉強だ!」

市「はい! 私も手伝います!」

男「机よし! 参考書よし! 文房具よし!」

市「将棋よし! オセロよし! 人生ゲームよし! 休憩したくなったらいつでも言ってください!」

男「……お前、手伝う気ないだろ?」

市「……ダメですか?」

男「ダメ」

市 (・x・)

男「そんな顔してもダメ」


353: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:38:42 ID:t1cqsg2W0

男「…………」カリカリカリカリカリカリ

市(…………)


男「この時バルキスの定理はd=4を証明している為~」ブツブツ

市(退屈だなぁ……。かまってほしいなぁ……)


男「Carbon in this form remained locked up in the fuel ~」ブツブツ

市(ダメよ市! 男さんの勉強の邪魔にならないようにしないと!)


男「ダンボールで構成したハニカム構造を基礎に微小変形理論における~」ブツブツ

市(私にできることは……そう! オマジナイだ!)


355: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:41:35 ID:t1cqsg2W0

市(そうだ、願わなきゃ!)

市(魂で叫び、願うのよ! 祈るのよ! 市!)クワッ

市「神よー!我が祈りを、我が願いを聞きたもれー!」

市「この男に神のご加護を! 神の祝福をー!」

男「……なぁ市」

市「は、はい! なんでしょうか!? 私、祈ってますよ!?」

男「うるさい」

市「す、すみませんです……」ショボン

男(…………)


356: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:43:43 ID:t1cqsg2W0

市「うぅ~……」フワフワ

男(……ハァ)

男「あー、勉強つかれたなー。ちょっと休憩しよっかなー」

市「!?」

男「気分転換にオセロでもやりたいけど一人じゃできないしなー。どうしよっかなー」

市「し、仕方ないですね! なら私が休憩のお相手してあげますよ!」

男「悪いね。じゃあ俺、白で良いよ」

市「ふっ。先行を譲るとは、男さん既に敗れたり!」


358: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:45:24 ID:t1cqsg2W0

― 30分後 ―

市 orz

男「ものの見事に隅から隅まで真っ白な訳だが……」

市「男さんのイジワルー! うぇーん!」

男「ま、受験に白星で縁起が良いってことで」

市「うまくないです!」


360: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:48:05 ID:t1cqsg2W0

▼後日/学校/進路相談室


担任「そうか。進学することにしたのか」

男「はい」

担任「俺はてっきり就職にするかと思ったがな」

男「僕自身も最初はそう考えてました」

男「でも、どうしてもやらなくちゃいけないことができたんです」

担任「……」


362: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:52:56 ID:t1cqsg2W0

男「本当はもっと簡単な道もあったかもしれません」

男「自分を甘やかして、その道に逃げることは簡単です」

男「でも、守りたいものがあるから、大切なものがあるから僕は逃げません」

担任「……昨日までとは打って変わって、ずいぶんと決意の固い目をしてるな」

男「……」

担任「まぁお前ならヘタさえ踏まなきゃ問題ないだろう」

担任「やらなきゃいけないことってのが何かは知らんが、一度決めたことは曲げるなよ?」

男「はい」

担任「よし! 頑張れ若者!」ニカッ

男「ありがとうございます!」ペコッ


363: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:55:37 ID:t1cqsg2W0

▼大学受験・当日/朝/男宅

男「うぅー、寒い……。まさか試験当日に風邪引くとわ……」

市「やっぱり私の呪いのせいですかね……」

男「市。そういうことは言うなって。大丈夫だから」

市「すみません……」

男「じゃ、行ってくる」

市「男さん! 頑張ってくださいね!」

男「おう、任せとけ」


366: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 05:58:01 ID:t1cqsg2W0

▼電車の中

ガタンゴトン… ガタンゴトン…

男(任せろとは言ったものの、さすがに緊張してきた)

男(大丈夫だろうか……不安だ……)

男(いや、そんな弱気じゃダメだ! 俺は絶対受かる!)

男(市の為にも受からなきゃいけないんだ!)

男(今ごろ市も祈ってくれてるに違いない)

男(大丈夫。いい知らせ持って帰るから……待ってろよ!)


367: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:00:35 ID:t1cqsg2W0

▼男宅

市(行っちゃいました……)

市(ちゃんと試験受けられるでしょうか……風邪も引いてましたし……)

市(ダメ! そんなこと考えちゃいけない!)

市(男さん、あんなに勉強頑張ってたんですから、きっと大丈夫です!)

市(きっと受かります! 絶対受かります!)

市(私、祈ってますよ。男さん……)

市「頑張ってください……」


368: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:03:41 ID:t1cqsg2W0

▼大学/試験会場

男(とうとうここまで来た……)

男(あと少して試験が始まる……)

男(お、怖気づくな! 弱気じゃダメだ!)

男「スゥ~……ハァ~……」

男(……よし!頑張るぞ!)

試験管「時間になりました。それでは試験を始めてください」

男 ペラッ

男「…………」

男(おいおいマジかよ……)

男(今年の問題、難易度高くないか!?)

男(しかも俺が苦手な問題ばっか出てやがる!)

男(まさか、これも呪いの影響だっていうのかよ……)

男(終わったか、俺――)


369: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:04:54 ID:t1cqsg2W0

▼男宅

市(今頃もう試験中ですね」

市(私はもう今こそもう祈る事しか出来ません)

市(どうか、男さんが受かりますように)

市(お願いします……神様……)


372: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:07:29 ID:t1cqsg2W0

▼大学/試験会場

男(終わったか、俺――なんて簡単にあきらめるハズないだろ)

男(ここまで俺がどれだけ勉強してきたと思ってんだ)

男(呪い如きがちょいと問題の難易度あげたぐらいで俺を止められると思ってんじゃねぇ! ナメんな!)

男(俺はアイツの笑顔が見たくて……)

男(アイツを笑顔にしてやりたくて、ここまで頑張ってきたんだ)

男(どんな問題でも、どんな呪いでもかかってこい!)

男(すべて打ち負かしてやる!)クワッ


373: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:10:13 ID:t1cqsg2W0

▼夕方/男宅

――ガチャッ バタン。

男「ただいまー」

市「お、男さん! どうでしたか!?」

男「…………」

市「…………」ゴクッ

男「…………ハァ」

市「そんな、まさか……」

男 b サッ

男「上出来だったぜ」ニヤリ

市「や……やったー! 合格だぁー!」

男「バカ。まだ気が早いよ」

市「えっ、でも上出来だったって?」

男「俺の手応えではだ。万が一ってこともあるし」


374: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:11:53 ID:t1cqsg2W0

市「そんなことないです!大丈夫ですよ!」

男「だと良いけどな」

市「受かってるに決まってます! 間違いないです!」

男「ま、何はともあれ終わったものは終わったんだ」

男「とりあえず、今晩は前勝祝いでもやるか!」

市「やりましょー! 今日はパーティーだー!」


375: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:14:15 ID:t1cqsg2W0

▼大学受験・合格発表日/男宅

市「ついに……ついにこの日が来ましたよ! 男さん!」

男「そうだな」

市「運命の日ですよ! 宿命の時ですよ! 男さん!」

男「わかってるって」

市「む~。ずいぶんと冷静ですね。緊張しないんですか?」

男「もう結果出てるんだし、ジタバタしても仕方ないだろ」

男「ならドシっと構えて臨もうじゃないか」


377: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:17:26 ID:t1cqsg2W0

市「……男さん……あのぉ」

男「ん、どうした?」

市「シャツのボタンを掛け違えてますよ。あと、ズボンの前と後ろが逆です」

男「何……だと……!?」

市「カッコいいこと言ってましたけど、やっぱり緊張してるんですね」

男「う、うるさい! 悪いか!///」ゴソゴソ


378: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:19:37 ID:t1cqsg2W0

男「よし……行くか」

市「あっ。待ってください。髪の毛にゴミが付いてます」

男「え? どこ?」

市「左の上の方です」

男「ん……、あっ、本当だ」

市「私が取ってあげられたらいいのに……」

男「そしたら、ついでに"行ってらっしゃいのチュー"も頼もうかな」

市「なっ…! セ、セクハラで訴えますよ!」

男「あはははっ。冗談だよ」

市(でももし男さんに触れられたなら……///)


379: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:21:35 ID:t1cqsg2W0

男「じゃ、行ってくる」

市「いってらっしゃーい。変な人についてっちゃダメですからねー」

男「だからガキ扱いすんなっての!」


380: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:25:11 ID:t1cqsg2W0

▼大学・合格発表会場

男「校門過ぎてA校舎側の……あそこか」


ワイワイ ガヤガヤ

ワーイウカッター ヤベーオチター 


男「俺はE-111番……」

男(E-111番……E-111番……E-111番……)

男「……………………嘘だろ」


382: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:28:42 ID:t1cqsg2W0

E-099

E-100

E-103

E-106

E-107

E-109

E-110

E-111

E-115

E-118


男「マジで受かった……」

男「よっしゃぁぁ!」

周りの人達 ビクゥッ!

男「あっ……ど、ども。スミマセン……」ペコリ


383: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:30:55 ID:t1cqsg2W0

▼男宅/男の部屋

市(男さん、まだでしょうか)

市(もしかして合格者に男さんの番号が無くて……)

市(ショックのあまり電車に飛び込んでるとか!?)クワッ

市(い、いやそんなことないです! 必ず受かってます!)ブンブン

市(だって男さん、あんなに頑張ってたんですから!)

―― ガタッ

市(あれ、今なんか窓の方から――)

中年男「よっこらせ、っと」

市「!?」

中年男「気をつけろ、窓の戸締りご用心。ってね」

中年男「まっ、戸締りしてもらってない方が仕事が捗るし、こちとら助かるんだがな」

中年男「さぁて。それでは早速、物色させて頂きますか」ニヤリ

市(この人、まさか……泥棒!?)


384: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:32:57 ID:t1cqsg2W0

▼帰り道/男宅付近

男(早く帰って市に知らせてやらないと)

男(あいつ、どんな顔するかな。嬉し泣きするかもな)

男(帰るのが楽しみだ)

男 キョロキョロ

男(そういえば最近、野良犬に絡まれなくなったな)

男(ってか不運らしい不運も起きてない……)

男(……それに越したことは無いけど)


387: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:35:58 ID:t1cqsg2W0

▼男宅/男の部屋

中年男「チッ。ろくなもん無ぇな、この家」

市「コラ! 男さんの部屋を散らかさないでください!」

中年男「ダメだ。こりゃ骨折り損のくたびれ儲けかもな」

市「どうでもいいですから! さっさと出て行きなさい!」

中年「しかし手ぶらで帰るのは俺のプライドが許さないしなぁ」

市「うぅ……。こんなに叫んでるのに聞こえないなんて、口惜しい……!」


388: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:38:39 ID:t1cqsg2W0

中年男「仕方ない」ガシッ

市「!?」

中年男「この古そうな日本人形でも頂いてくか」

市「ダッ、ダメ! 触らないでください!」

中年男「しっかし、不気味な人形だなコレ。呪われてんじゃねぇの?」

市「そうです! 呪われてるんです!」

市「だから離してください! 早く帰ってください!」

中年男「でも、こんなのもらっても金にならんよなぁ……」


389: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:40:37 ID:t1cqsg2W0

▼男宅/玄関

――ガチャッ バタン

男「ただいまー」

市「――!――――!」

男(市が何か叫んでる……どうしたんだ……?)


391: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:47:26 ID:GTJxri1i0

▼男宅/男の部屋

男「市、どうした、――!?」

市「男さん!」

中年男「!?」

男「……ア、アンタ誰?」

中年男「なはは……」

市「この人泥棒なんです! 私を盗んでるんです!」

男「なっ、泥棒!?」

中年男「!? これにて失礼!」ダダダッ

市「お、男さん! 助けてー!」ピュー

男「市!」


393: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:51:20 ID:GTJxri1i0

▼男宅付近

中年男「ハァッ! ハァッ!」タッタッタ

男「おい、待て!」タッタッタ

中年男「待てと言われて、待つ馬鹿が、いるかってんだ……」ゼェゼェ

市「男さん! こっちです! こっちにいますよ!」

男「そっちか!」

中年男「くそぉっ!」ダッ

男「待ちやがれ!」ダッ


394: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:55:44 ID:GTJxri1i0

中年男 タッタッタ

女「きゃあっ!」

中年男「危ねぇな!気をつけやがれ!」バッ

中年男 タッタッタ

女「も……もう!危ないのはどっちよ!」


395: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 06:59:39 ID:GTJxri1i0

男 タッタッタ

女「きゃあっ!」

男「うぉっ! ゴメンなさい!」

女「もう!今度は何、――男くん!?」

男「お、女か!」

女「さっきの人といい、どうしたの?」

男「女、丁度よかった。頼みがある!」

女「だから、どうしたの!?」

男「警察呼んでくれ! 俺の家、泥棒に入られたんだ!」

女「えっ!?」

男「今、変な男とすれ違ったろ? そいつが泥棒なんだよ!」


396: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:05:02 ID:GTJxri1i0

男「逃がさないように俺が追いかけてるから、代わりに警察呼んでおいてくれ!」

女「急にそんなこと言われても!」アタフタ

男「俺の大事なものを盗まれたんだ! 絶対逃がす訳にいかないんだよ!」

女「わ、わかった! 110番しておく!」

男「すまない、頼んだ!」ダッ

女「男くん! 気をつけてね!」


397: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:08:15 ID:GTJxri1i0

▼工事中のビルの中

中年男「くそっ! しつけぇ野朗だ!」

中年男「……しばらくこのビルに身を隠すか」

中年男 ダッ


男「ハァ……ハァ……」

男(くそっ。見失った……)

男(でもさっきまでそこにいたんだ)

男「市! どこだ!」

市「男さん! こっちです! この中にいます!」

男「このビルの中か……」

男「(スゥ…) おい、もう逃げれないぞ! あきらめろ!」

―― シーン。

男「…………」

男 スタスタ


398: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:12:58 ID:GTJxri1i0

▼工事中のビル/2階

中年男「ハァ……ハァ……」

中年男(くそっ! アイツ、何で俺の居場所がすぐにわかりやがる!)

中年男(まさか……メンタリストか!?)

中年男(……そんな訳ないだろ、アホか)

中年男(もしかしてこの人形に何か仕掛けがあるのか……?)

中年男(…………)


400: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:17:20 ID:GTJxri1i0

男「市! いるか!?」

市「男さん、こっちですよ! 早くー!」

男「そっちか! もうすぐだ! 待ってろ!」ダッ

男 タッタッタ


404: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:27:40 ID:GTJxri1i0

男「市! ここか!?」

人形「    」

男「人形がここにある、ってことは市も……!」

市「男さん!」

男「市!?」

市「男……さん……」ジワッ

男「良かった。どうにか無事だったみたいだな」

市「う……うわぁ~ん! 怖かったよぉ!」

男「ゴメンな。もう大丈夫だから」


405: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:31:00 ID:GTJxri1i0

男「そういや泥棒野朗はどこ行った?」

市「そういえば、さっきから見てませんが……」

男「人形だけ置いて逃げたか」

市「みたい……ですね」

男「まったく。捕まえて警察に突き出してやろうと思ったのに……」


407: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:35:47 ID:GTJxri1i0

中年男「……」スッ

市「男さん! 後ろ!」

男「えっ?」

―― ガンッ!

男「ぐあっ!」ドサッ

市「男さん!」

中年男「やっぱり人形に何か仕込みがあったんだな」

男「ぐっ……うぅ……」

中年男「何か変だと思ったんだよ。ことごとく逃げ道がバレてたし」

市「男さん! 男さん!」

男「うぅ……」


408: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:40:45 ID:GTJxri1i0

中年男「後頭部にもろ一発入れたのに、意識があるのは大したもんだ」

男「うぁ……ぐぅぅ……」ジリジリ

中年男「無理して立とうしても無駄だよ。頭が揺れて体が全然言うこと聞かないだろ?」

男「この……やろう……!」

市「男さん! 大丈夫ですか! 男さん!」

中年男「こんな人形の為にここまで追いかけてくるなんて……。もしかしたら、こいつは相当な値打ちモンなのかもしれねぇな」

男「……く……そ」

中年男「ちゃっちゃと帰って商売すっか。今晩は贅沢できるかもしれないぞ~」

男「ふ……ざけん……な!」


409: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:44:10 ID:GTJxri1i0

男「待ち……やがれ!」ガバッ

中年男「……おぉ。まさか立ち上がるとは」

男「返せよ……そいつを……!」フラッ

中年男「すごい根性だな、アンタ。でも足元フラついちゃってるぜ?」


411: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:50:42 ID:GTJxri1i0

男(くそ……マジで立つのがやっとだ……)

男(だけど、市を持ってかせてたまるか……!)

中年男「無理しないで寝てろって、な?」

男「うるせぇよ……そいつは俺のなんだ……返せよ……!」

中年男「彼はそう言うが、どうなんだね人形ちゃん」

中年男(裏声)「確かに今まではお兄さんのだったけど。今はもう、私の持ち主はオジサンだよー」

男「!?」

中年男「だってさ。残念だったねー」

市「ふざけないでください! 私はそんなこと言いません!」

男(人形の…………持ち主…………)


413: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:55:37 ID:GTJxri1i0

中年男「もうあきらめろよ、な?」

男「……わかった」

市「男さん!?」

男「捕まえようにも、見ての通り俺はフラフラ。どうせ何もできやしない」

男「アンタにその人形……くれてやるよ」

市「そんな……」

中年男「ずいぶん急に気前がよくなったな。さっきの威勢はどうした」

男「今の俺じゃ……どう考えても、捕まえんのはもう無理だ」

男「なら潔く認めてやる。そいつは今、アンタのもんだ」

市「嘘……嘘だよね……男さん!?」


414: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 07:59:41 ID:GTJxri1i0

中年男「いや~、素晴らしい決断だ。キミほどの男は見たことないね!」

市「男さん!」

男「……でも、タダじゃやれねぇな」

中年男「ん?なんだ、結局金か? 分け前が欲しいのか?」

男「違ぇよ。俺がお前に分けてやるんだよ」

男「……呪いをな」


415: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:02:45 ID:GTJxri1i0

中年男「はぁ? 呪いだ?」

男「市……呪え!」

市「はい!?」

男「市! 今すぐ思いっきり呪うんだ!」

市「えっ!?」

男「このアホに、"お前の持ち主"がどんな目に合うか教えてやれ」

市「!?」


417: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:05:05 ID:GTJxri1i0

市「でも呪うって言ったって、どうすれば!」アセアセ

男「忘れたのか。呪いとマジナイは同じだって」

市「呪いやマジナイは……相手への祈りと願い!」

男「……そう。このビルを壊すくらい本気で祈って呪うんだよ」

男「お前の呪いの力を……見せつけてやれ!」

市「!? わかりました!」

男「それと教えてやれ……。お前の持ち主になれるは俺だけだってこともな」

市「はい!」


420: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:11:06 ID:GTJxri1i0

市「……」ギュッ

市(私の中の呪いの力、どうかその力を貸してください……)

市(今、この場を壊すような巨大な力を……)

中年男「何言ってんだお前、頭イカれちまったか? 思いっきりブッ叩き過ぎたかな……」

男「……おい。おっさん」

中年男「あ?」

男「今からアンタを……地獄に連れてってやるよ」ニヤッ

中年男「あぁ?」


423: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:16:22 ID:GTJxri1i0

中年男「お前、実はクスリでも決めてんのか? さっきから訳わかんねぇことばっか言って――」


―― ゴゴゴ…


男「!?」

中年男「なんだ……地震か!?」


―― ゴゴゴゴッ

―― ゴゴゴゴゴゴゴッ


中年男「地震……じゃない! ビル自体が震えてやがる!」


425: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:24:06 ID:GTJxri1i0

――ゴゴゴゴゴゴゴッ!

――ピキピキッ、ガラガラガラッ!


中年男「ビ、ビルの床が、崩れ始めやがった! 何だよこれぇ!」

男「言っただろ……地獄に連れてってやるってよ!」

中年「お、お前! いったい何したんだよ!?」

男「俺がしたんじゃない。これが……市の呪いだ」


――ガラガラガラガラガラガラガラッ!


中年男「ひぃ! 床が崩れて落ち――うわあぁぁ!」ガラガラ

男「うおおぉぉ!」ガラガラ

市「!?、男さぁん!」


――ガラガラガラガラッ! ズゥゥン!


市「男さん! 男さぁん!」


426: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:26:43 ID:GTJxri1i0

▼崩れかけたビル/1階

市「男さん、大丈夫ですか! 男さん!」


―― シーン。


市「男さん! 男さん!」


―― ガラッ ガラガラッ


男「いてて……」

市「男さん!? 無事ですか!?」

男「あぁ、……大丈夫だ」


427: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:31:26 ID:GTJxri1i0

男「とんでもないな……お前の力は。マジで、建物が壊れるなんてな……」

市「あの泥棒の人はどこですか!?」

男「泥棒野郎は、アッチで瓦礫にはさまれてるよ……」


中年男「……」


市「動いてませんけど……もしかして……」

男「いや、ただ気絶してるだけで、大したケガもなさそうだ……。まったく、悪運の強いヤツだよ」


428: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:32:54 ID:GTJxri1i0

男「これで、あとは人形を探す、だけだな」

市「私がここにいますから、たぶんそこらへんに落ちてるかと――って男さん!? 」

男「ん? ……あぁ、コレか。気にすんな、お前の呪いの、せいじゃないよ……」

男「つくづく俺って、運がないの、な」

男「まさか、コンクリの鉄筋が、腹にぶっ刺さる、なん……て……」ドサッ

市「男さん! 男さん!?」


429: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:36:07 ID:GTJxri1i0

男「…………」

市「いつもの冗談、ですよね……。だってさっきまで男さん……」

男「…………」

市「だ……誰か、……誰か! 男さんが! 男さんを助けてください!」

市「男さん! しっかりしてください! 男さん!」


431: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:38:12 ID:GTJxri1i0

男(頭も腹も痛ぇ……つーか全身が痛ぇ……)

男(痛みで意識が飛びそうだ……体に力も入らねぇし……)


――オマワリサン、コッチデス! ヒトガタオレテマス!

――コイツハマズイ!パトカ-デビョウインニハコボウ!


市「―――! ――――!」

男(市、何か言ってるけど、聞こえねぇや……)

男(市の人形、壊れてねぇかな……大丈夫かな……)


432: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:40:48 ID:GTJxri1i0

――オトコクン! ダイジョウブ!? オトコクン!

――キミ、コノコヲハコブノヲテツダッテ!

――ハイ! オトコクン、スグビョウインニツクカラガンバッテネ!



男(そうだ……市に……大学のこと……教えてない……)

男(あのな市、俺――――――)

男「…………」



―― ブロロロロ! ウーウー!



市「男さん……ヤダよ……」

市「男さぁぁぁん!!!!」


434: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:43:49 ID:GTJxri1i0

▼病院/集中治療室

―― ピッ ピッ ピッ ピッ


男「…………」


―― ピッ ピッ ピッ ピッ


「先生、あの急患の彼はどうでしょうか?」

「最善は尽くした。・……だが傷が深く、出血も多い」

「…………」

「……今夜が峠だ」


435: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:45:16 ID:GTJxri1i0

▼深夜/崩れかけたビルの中

――グスッ。

――グスッ グスッ。

市「私のせいだ……」グスッ

市「私が連れてかれるから……私が何もできないから……」

市「私が……、私の呪いのせいで……」グスッ

市「やっぱり私なんかが、男さんの近くにいちゃいけなかったんだ……」

市「男さん……ごめんなさい。ごめんなさい」ボロボロ

市「男さん……男さぁん……」ボロボロ


436: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:48:26 ID:GTJxri1i0

市は膝を抱え、何度も自らを責め、男に謝り続けていた。
誰もいない冷たい静寂に包まれ、誰にも聞こえない市の泣き声が響く。



市「お願いします……神様……」

市「神様、男さんを助けてください……」

市「お願いします……」



市が小さく呟いた時、白金色の光が市から溢れ出した。

光は大きくなり徐々に市を飲み込み――



――そして市は消えた。


437: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:52:13 ID:GTJxri1i0

▼深夜/病院/集中治療室

市『あれ……ここは……?』

男「……」 ピッ ピッ ピッ ピッ

市『お、男さん……!』

市『ごめんなさい……私のせいで……』

市『男さん、ごめんなさい……』



市が男の頬を指で優しくなぞると、包むように透けていく。

人工呼吸器と包帯の痛々しさを除けば普段と男の変わらない寝顔がそこにある。

しかし男が目を覚ます気配は微塵も感じられなかった。

男の鼓動の有無を表す無機質な電子音が鳴り響いている。

この部屋の静寂もまた、冷たいものだった。


439: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:55:15 ID:GTJxri1i0

市『男さん、前に約束しましたよね……』

市『呪いなんかに負けないって……』

市『なのに……なのに……』グスッ

市『起きてください……お願いですから……』ボロボロ

市『イヤだよ……。グスッ、こんなのイヤだよっ……!』

市『一緒にいたいよ! 離れたくないよ!』

市『死なないで、男さん……グスッ、死んじゃヤダよぉ!』ボロボロ

市『男さん、お願いですから……目を開けてよ……』ボロボロ


440: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 08:58:40 ID:GTJxri1i0

市は男の体に顔を伏せ、泣き叫んだ。

しかし、院内に響き渡るような市の泣き声は、誰の耳にも届かない。

無情にも市の言葉は、どの人間にも聞こえない。


幾つもの市の涙が頬を伝って滴り落ちる。

その雫でさえも市の体と同じく絶対的不干渉な存在であり、男の体を透過し、地面にすら跡を残さず消えていく――





――そのはずだった。





市の体が再び白金色に輝き始める。

そして男に、光り輝く市の涙が零れ落ちると、男の体もそれに呼応するかのように光が伝わっていく。

やがて市と男は眩いの光に包まれた。

市は男の手を覆うように握り、男の寝顔に自分の額を寄せ、泣きながら祈り続けた。


441: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:02:07 ID:GTJxri1i0

市『神様、お願いします……』

市『私はどうなってもかまいません』

市『どうか……どうか男さんを助けてください……』

市『お願いします……!』



男と市を覆う光は輝きを増していき、やがて無数の光の粒となって大きく弾けた。

それと同時に市の姿は消えていた。

飛散した小さな光の粒たちがゆらゆらと粉雪のように降り注ぎ、男の体の中に溶け込んでいく。


443: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:04:25 ID:GTJxri1i0

――オトコサン……。








男「……ん、……んン」パチッ

男「…………あれ、……ここは?」

「!? せ、先生!男さんが、男さんが!」ダダダッ

男「…………市?」


444: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:08:13 ID:GTJxri1i0

▼朝/病院の外

男「先生、お世話になりました」

「いやいや。私は大したことはできてないよ」

「あの傷が翌日には塞がってる上に痕も無くなってるなんて……」

「私はまるで夢も見ているかのようだ」

「もしくは、これは奇跡だな」

男「奇跡、ですか……」

「具合が悪くなったらいつでも来なさい」

男「はい、わかりました。それでは」ペコッ


445: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:10:59 ID:GTJxri1i0

▼倒壊しかけたビルの中

男「……」

人形「    」

男「……」ヒョイッ

男(よかった。壊れてないし傷もないな。少し汚れちゃったけど……)

男(あとは……)

男 スタスタ


446: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:12:19 ID:GTJxri1i0

――グスッ。


男「……」


――グスッ、グスッ。


男「……市」

市「!?」

男「おまたせ」ニコッ

市「……男……さん」グスッ

男「心配かけてゴメンな。無事退院できたよ。さぁ、帰ろう」

市「うぅ~。グスッ」ボロボロ

男「そんなに泣くなよ」

市「だって……だって!」ダッ


448: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:14:08 ID:GTJxri1i0

市は俺の胸に飛び込んでくると、透き通った手を腰から背中へと回して、大きな声で泣き始めた。


市「うぇ~~ん! 男さぁん! 男さぁぁん~!」ボロボロ

男「市……」


触れられないとわかっていても、俺は市を抱き返していた。


449: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:16:34 ID:GTJxri1i0

男「落ち着いたか?」

市「……はい」グスッ

市「すみません。お見苦しい姿をお見せしまして……」

男「……なぁ、市」

市「はい、なんでしょうか?」

男「俺さ、倒れた後のこと、何となく覚えてんだ」


450: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:19:23 ID:GTJxri1i0

男「ずっと真っ暗な中にいたんだ」

男「立ってるのか、座ってるのか、寝てるのかもわからなくて」

男「時間の感覚もわからなくて、すごく不安だった」

男「そしたら突然目の前が明るくなって、体中が暖かくなって」

男「市が必死に俺のことを呼ぶ声が聞こえてきた」

男「……それでわかったんだ」

男「市がそばにいてくれてるんだって。俺が助かるように祈ってくれるんだって」

男「そう思ったらもう、何も不安なんてなかったよ」


451: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:23:44 ID:GTJxri1i0

市「……私、助けも呼べなくて、何も出来なくて」

市「男さんが運ばれてからも、ここでずっと泣いてたんです」

市「そしたらいつの間にか男さんの所にいて」

市「でも私、何もできないから、ずっと神様にお願いしてました」

市「男さんを助けてください、って」

市「男さんが助かったのは、もしかしたら神様が私の願いを叶えてくれたのかもしれませんね」ニコッ

男「……そうかもしれない。いや、もしかしたら根本的に違うのかもしれない」

市「?」


452: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:25:50 ID:GTJxri1i0

男「お前は本当は呪いの人形なんかじゃなくて」

男「願いを叶えるマジナイの人形なのかもな」ニコッ

市「そう、なんですかね。えへへ///」

男「アホだけど」

市「ア、アホじゃありませんよ!」


453: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:28:28 ID:GTJxri1i0

男「それにしても、本当によかったよ」

市「何がですか?」

男「こうやってまた、お前と話せることがすごく嬉しくて」ニコッ

市「そ、そう……ですか///」ゴニョゴニョ

男「……市、真面目に聞いてほしいんだけどさ」

市「何でしょうか?」

男「俺……お前に言いたいことがあるんだ」

市「男さん、それって、まさか……!?」


455: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:32:49 ID:GTJxri1i0

男「今回のことで俺、本当の意味で気づいたんだ」

市「あわわわわわ!」アセアセ

男「お前がどれだけ大切か、って」

市「はわわ! はわわわ!」アセアセ

男「俺、お前のことが――」

市「お、男さん! ちょっと待ってください! タイムです!」

男「……なんだよ。今、大事なとこなんだけど」

市「あのですね、そのですね。何と言うか……私、心の準備がまだ――」

男「市! 俺は、お前が好きだ!」

市「はぅ!?///」ドキ


456: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:34:48 ID:GTJxri1i0

男「お前とずっと一緒にいたい!」

男「呪いなんかにも、もう絶対負けない!」

男「お前に触れられないのが悔しいけど……」

男「ずっとずっと俺の傍にいて欲しいんだ!」

男「持ち主とか人形とかじゃなくて、恋人として!///」

市「……//////」

男「……//////」


457: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:36:01 ID:GTJxri1i0

男「……市は俺のことどう思ってるんだ?///」

市「私ですか!?///」

男 コクリ

市「あの……その……私にとって男さんは……その……」

市「もも、持ち主というか、ご主人様というか……」

男 ジトーッ

市「わっ、私は! そのっ、私も、おおお男さんのこと……、その……」

市「………………………好きですよ/////」ボソッ

男「よかった。大好きだよ、市」ニコッ 

市「うっ……うわー!男さんのバカー!助平ー!不埒物ー!/////」 ピュー

男「おい、どこ行くんだよ!」


458: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:38:04 ID:GTJxri1i0

男「おーい、市! 待てって!」

市 クルッ

男「?」

市「男さーん! 私も大好きですよー! 早くおウチに帰りましょー!」ノシ ブンブン

男「………」キョトン

男「………ぷっ。あははははっ」

市「男さん、何笑ってるんですか! 早く早くー!」

男「わかったよ! 今行く!」ダッ


460: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:39:38 ID:GTJxri1i0

▼卒業式の前日/朝/男宅

男「明日でこの制服ともお別れか」

市「うぅ~。最後に一度でいいから、私も学校行きたい~」

男「無茶言うなって。良い子でお留守番してなさい」

市「ふぁ~い……」

男「それでよし」

市「……」ジーッ

男「な、なんだよ」

市「いや……その……」

男「だからなんだっての」バシバシ

市「言います! 言いますから私(人形)を叩かないで!」


461: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:41:30 ID:GTJxri1i0

市「あのですね……。男さん、昔に比べて表情が豊かになったな~って思って」

男「ん? そうか?」

市「はい! 最初はこ~んな感じで何でも睨んでトゲトゲしかったですけど」

市「最近は笑顔が多くて。それがなんだか嬉しくて……えへへ///」

男「…………お前のおかげだよ」ボソッ

市「えっ? 何ですか?」

男「――うるさいっ!/// お前なんかこうだ!///」バサバサ

市「やめてー! 髪の毛ボサボサにしないでー!」


462: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:44:30 ID:GTJxri1i0

男「それじゃ。行ってきます」

市「はーい!行ってらっしゃーい!」ノシ ブンブン


―― ガチャッ、パタン。


市「制服姿の男さんを見送れるのも、もうあと少しなんですね」

市「大人になられましたよね。初めて会った時なんて、ふふ」クスクス












市「……あれっ」

市「私、手が……消えかけてる……」


463: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:46:13 ID:GTJxri1i0

▼学校/教室

担任「……明日はついにお前らの卒業式だな」

クラスメイト 「「「 ………… 」」」

担任「長いようで短かった3年間、それぞれ思うことはあるだろう」

担任「お前たちに最後に言っておきたいことがある」

担任「俺は、お前たちのクラスを担任できてよかったと本当に思ってる」

担任「俺はこれからも、どんな時でもお前らの味方だ」

担任「いつでも応援してる、見守ってるのを忘れないでほしい」


女友「な~に最後だけカッコつけちゃってんだか、アイツ」

女「でも先生、学園祭とか本当に楽しんでたよね」

委員長「先生……」グスッ

男「……」


担任「明日は高校生活最後の大舞台だ! 気合入れて行けよ!」

クラスメイト 「「「 ハイッ! 」」」


464: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:46:56 ID:GTJxri1i0

▼放課後/学校/下駄箱

女「男くん」

男「ん、女か」

女「……もう卒業なんだね」

男「そうだな。早かったよな」

女「うん。早かった」

女「特に、男くんと仲良くなってからは早かったよ。本当に」

男「俺もだ」ニコッ

女「///」ドキッ


465: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:48:43 ID:GTJxri1i0

女「…………」

男「…………」

女「……あ、あのね男くん」

男「何?」

女「私……私ね……」

女「………………」

男「?」


466: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:50:19 ID:GTJxri1i0

女「…・………」

女「……え~っと、その、高校卒業しても、私と友達でいてよね!」

男「あぁ、当たり前だろ。これからもよろしくな」

女「うん!///」

男「それじゃ、また明日な」

女「うん。バイバイ///」


467: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:51:38 ID:GTJxri1i0

女「…………行っちゃった。」

女「好きだよ、男くん……」

女友「よっ。お疲れさん」

女「なっ、女友! いつからいたの!?」

女友「最初からいたよ」

委員長「女さん。抜け駆けは……ズルイです……」

女「委員長ちゃんまで!?」

女友「いや~、見事なヘタレっぷりだったな!」

女「う……うるさいな! これからなの!///」

委員長「私も……負けませんよ!」

女友「やれやれ……」


468: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:53:59 ID:GTJxri1i0

▼夕方/男宅

―― ガチャッ パタン。

男「ただいまー」

市「おかえりなさい」

男「いや~、俺ももう卒業なんだって今日改めて実感したよ」

市「そうですか……」

男「市も本当に卒業式来てみるか? 鞄か何かに人形忍びこませれば、いけなくもないよな」

市「……」

男「お前のことだからきっと泣きじゃくるんだろうな~」

市「……」

男「天井とかグルグル飛び回ったりとかして……って市、どうした?」

市「えっ?」

男「なんか、また思いつめてるみたいだけど」

市「……」


470: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 09:58:05 ID:GTJxri1i0

市「……男さん。残念ですけど私、男さんの卒業する姿は見れそうにありません」

男「何だよ。泣き顔みられるのが恥ずかしいのか?」

市「…………ごめんなさい、私――」スッ

男「!?」

市「私、どうやら消えちゃうみたいです。ほら、右手はもうほとんどありませんし」

男「…………」

市「今朝、男さんが出て行かれた後に気づいたんです。右手が少し透けてるのに」

市「そしたらどんどん透けてきちゃって」

市「たぶんこのままだと、もうすぐ全身も消えちゃうと思います。あはは……」

男「…………嘘だろ」


471: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:03:44 ID:GTJxri1i0

男「そんな……。だってお前、昨日まで普通だったろ……」

男「何で、何でだよ……」

市「きっとこの前、神様にお願いした見返りですかね」

男「この前のって何だよ!」

市「……あの工事中のビルで大けがされて、運ばれた時のことです」

男(あの時……?)

市「前に『気がついたら男さんの所にいた』って話しましたよね」

男「…………」

市「私、本当に祈るだけしか出来なくて、ずっと男さんのそばで泣いてました」

市「その時にですね、私、神様にお願いしたんです」

市「『男さんを助けてください。』」

市「『その代わり、私はどうなってもいいですから』、って」


472: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:04:49 ID:GTJxri1i0

男「まさかそんなことで……ってか何でだよ」

男「俺なんかの為に……何でそんな……」

市「男さんが助かって欲しくて必死でしたから」

男「けど、お前がいなくなったら元も子も無いだろ!」

市「……いえ、これでいいんですよ」

男「これでいいって、何でだよ!」

市「だって……」

市「私……呪われてますから」ニコッ


475: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:08:55 ID:GTJxri1i0

市「私は不幸を振りまく呪いの人形です」

市「傍にいる人を、好きな人を傷つけて、悲しませて」

市「結局不幸にさせる疫病神なんです」

男「そんなことない! 俺はそんなこと思っちゃいない!」

男「現に、お前のおかげで俺はこうやって生きてられてるんだぞ!」

市「男さんは優しい人ですから、そう思ってくれるんです」クスッ

市「私は男さんにはもっと幸せになって欲しいんですよ」

市「これからきっと、男さんを幸せにしてくれる人ができるはずです」


477: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:13:34 ID:GTJxri1i0

男「ふざけんなよ……、お前がいなきゃ……幸せもクソもあるかよ!」

市「そう言ってもらえて私、本当に嬉しいです」

市「私、男さんと出会ってからずっと幸せでした」

男「やめろ……!」

市「呪われた人形の私には十分すぎるほど幸せでした」

男「やめろ!"でした"なんて言うな!」

男「これからもっと、幸せになればいいだろ!」

男「人を呪って生きられるなら、俺のことを好きなだけ呪えよ!」

男「だから、消えないでくれ……グスッ、お前まで、俺を一人にしないでくれよ!」

男「お願いだから……グスッ、頼むよ……!」

市「……ごめんんさい。でも私、消えちゃう今でも本当に幸せなんです」

市「この幸せは、全部男さんのおかげです」ニコッ

男「…………グスッ……」


478: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:16:17 ID:GTJxri1i0

市「…………でも、ひとつだけ」

男「?」グスッ

市「最後に1つだけお願い聞いてくれますか?」

男「…………」

男 ゴシゴシ

男「バカ、気なんて使うなよ。ほら、言ってみな?」ニコッ

市「最後にもう一度、髪を切って欲しいな」


479: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:17:23 ID:GTJxri1i0

―― バサッ。

男「……じゃあ、始めるぞ」

市「…・…はい」

チョキチョキチョキ…


480: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:18:44 ID:GTJxri1i0

チャキチャキチャキチャキ…


市「そういえば、前に話してくれましたよね。呪いはマジナイとも読めるって」

市「『相手を強く思う気持ちが、呪いをマジナイに変えるんだ』。あの時の男さん、カッコよかったです」

男「…………」

市「私はただの人形になっちゃいますけど、大丈夫です」

市「男さんとの思い出も、この気持ちも、絶対に忘れませんよ」

男「…………」


チャキチャキチャキチャキ…


481: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:21:35 ID:GTJxri1i0

チョキチョキ、――チョキ。

男「……終わったよ」

市「やっぱり、いいですね。男さんに切ってもらうのは」

市「後ろ髪が少し内巻きになってて、今回のもすごいカワイイです」

男「…・…当たり前だろ、俺が切ってるんだ」

市「でもせっかく切ってもらったのに、だいぶ消えてきちゃいましたね、私……」

男「…………」


482: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:23:16 ID:GTJxri1i0

市「せっかくなら、もっと色々な髪型試してもよかったかもしれないですね」

市「あっ、でもモヒカンはダメですよ? それだけは絶対無しです!」

市「男さんの大学の話も、新しく出来るお友達の話も聞きたかったです」

市「もっと色々と、もっと男さんと一緒に」

市「もっと……ずっと……」

男「市、お前……」

市「えっ?」ポロ


484: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:24:43 ID:GTJxri1i0

市「……あれ、何でだろう」

市「せっかく、泣かないように……我慢してたのに」

市「…………ダメだ。もう、グスッ……もう止まらないよ」ポロ

市「本当は消えたくない、グスッ、男さんと一緒にいたい……グスッ」ポロポロ

市「男さんと一緒にいたいよ……ずっと一緒にいたいよぉ!」ボロボロ


485: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:26:22 ID:GTJxri1i0

男「市っ!」ガバッ

男「市、消えるな! 行くなよ!」

男「お前がいなきゃ……イヤだ!」

男「俺だって、お前と一緒にいたいんだよ!」

市「男さん……」


486: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:27:51 ID:GTJxri1i0

俺の回した腕の中は、他人からすれば空虚なものに見えるだろう。

市の身体はもうほとんどが消えてしまっている。


しかし市はここにいる。確かにここにいるんだ。

ぬくもりも感触も無くても、ここに市は生きているんだ。



男「……市」

市「男さん…・…」


俺たちは何も言葉にすることなく、お互いの背中に手をまわして、しばらくそうしていた。

互いに触れ合うように、

ぬくもりを感じ合うように、

お互いの気持ちを確かめ合うように。


488: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:28:49 ID:GTJxri1i0

市「私、男さんのこと絶対に忘れません」

男「当たり前だ! 忘れたら絶対に許さないからな!」

市「男さん……大好きです」

市「大好きです。ずっとずっと大好きです」

男「市……」

市「もしオマジナイが、私の願いが叶うなら」

市「私――」

市(――    )スゥーッ


493: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:32:32 ID:GTJxri1i0

男「市……? 市!?」


―― シーン…。


男「…………」

男「アイツ、最後はサヨナラの一言も無しに消えやがって」

男「アイツらしいって言えばらしいけどさ」

男「ははは……」

男「…………」

――――――――――

市『はじめまして。市松人形の市と申します』

市『先に申し上げますと、私、呪われてますから』ニコッ

――――――――――


男「…………」

男「…………市」ポロッ


494: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:35:08 ID:GTJxri1i0

――――――――――

市『いいなぁ~。食べたいな~』

市『おいしそうだなぁ。ハンバーグゥ~』

――――――――――

市『う……うわぁ~ん! 男さん酷いよ~!」ボロボロ

市『私が呪われてるから遊んでくれないんだぁ!』ボロボロ

――――――――――


男「ったく。あのバカ野郎、…………グスッ、ふざけんなよ」ポロポロ

男「ふざけんな……」 ボロボロ


497: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:40:20 ID:GTJxri1i0

――――――――――

市『私の呪いのせいで、本当に不幸にしてるんだなって思って…』

市『私なんか、男さんの傍にいない方が良いんじゃないかと思っちゃって……』

市『それで、いつか本当に捨てられちゃうんじゃないかって、やっぱり思っちゃって……』

――――――――――

市『うええぇぇ~~ん!だって男さん優しいんだもん!』

市『私ずっと不安だったんですよ! ホントに不安だったんです!』

――――――――――

市『わっ私は!そのっ、私も、おおお男さんのこと……、その……』

市『………………………好きですよ/////』

市『男さーん! 私も大好きですよー! 早くおウチに帰りましょー!』

――――――――――


499: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:45:17 ID:GTJxri1i0

――――――――――

市『私、どうやら消えちゃうみたいです』

市『だって私……呪われてますから』ニコッ

――――――――――

市『最後に1つだけお願い聞いてくれますか?』

市『最後にもう一度、髪を切って欲しいな』

――――――――――

市『本当は消えたくない、グスッ、男さんと一緒にいたい……グスッ』ボロボロ

市『男さんと一緒にいたいよ……ずっと一緒にいたいよぉ!』ボロボロ

――――――――――

市『私、男さんのこと絶対に忘れません』

市『男さん……大好きです。ずっとずっと大好きです』

――――――――――

男「市……、市……!」ボロボロ

男「うあああぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」


501: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:46:12 ID:GTJxri1i0

男の声が空しく響く。

強く握ったこぶしを何度も床に叩きつけ、

もう戻らない者の名前を幾度となく呼び続けた。


どこからともなく風が吹いた。

涙で濡れた男の頬を撫でて行くように、

とても優しい風が1つだけ吹いて消えていった。


502: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:47:56 ID:GTJxri1i0

▼春/大学/昼休み

男友「あの教授の講義はつまらん! 実につまらん!」

男「生徒なんかお構いなしで勝手に授業進めてくしな」

男友「あーマジ腹減った! 男! 早く学食行こうぜ、学食!」

男「わかったわかった」

男友「今日は何たべよっかな~」


504: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:48:57 ID:GTJxri1i0

▼学生食堂

男友「いや~、今日もまたすっげぇ混んでるのな」

男「ここはウマくて安いからな。男友は何にした?」

男友「俺はハンバーグ定食だ!」

男「…………」

男友「あふれ出す肉汁、柔らかい肉の食感と旨み……」

男友「ハンバーグってホント最高の料理だよな」

男友「俺が死んだら、お仏壇にはハンバーグをお供えしてもらおう!」

男「……」

男(ハンバーグ、か………)


506: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:50:26 ID:GTJxri1i0

男友「男、どうした。そんな遠い眼して」

男「……いや、悪い。普通にボーッとしてた」

男友「まさか俺のハンバーグに目が眩んだのか!? やらんぞ!」

男「そんなんじゃないって。さぁ、早く食べようぜ」

男友「よーし、いっただきまーす!」


507: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:51:47 ID:GTJxri1i0

▼夕方/男宅/男の部屋

――ガチャッ パタン。

男「…………」

男「……ただいま、市」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
市松人形「     」


508: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:52:59 ID:GTJxri1i0

男「――で、今日の昼飯なんだけどさ」

人形「     」

男「ほら、前も話した男友って奴。大学でできた友達」

人形「     」

男「あいつがハンバーグ定食を食べてたんだけど、これがまたでっかいハンバーグなんだ」

人形「     」

男「お前が見てたらきっとヨダレ垂らして欲しがってたんだろうな」

人形「     」

男「で、午後の授業はって言うとな――」


509: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:53:51 ID:GTJxri1i0

男「――ってな感じで、大学の勉強も順調だよ」

人形「     」

男「…………ちょっと窓開けるか」

―カチャッ ガラガラガラッ

男「桜、もう全部散っちゃったな……」

人形「     」


510: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:55:47 ID:GTJxri1i0

男「あのな、市」

男「前に何度も言ったけど俺、本当に、お前にすごい感謝してるんだ」

男「俺、ガキの頃からすごいヒネくれてて」

男「誰と話すこともなくてずっと一人でいてさ」

男「それをすべて転校のせいにして……」

男「ずっと、ずっと毎日が退屈だったんだ」

男「……でもお前が来てからは毎日が楽しかったよ」

男「気がつけば友達もまた出来るようになってた」

男「それもきっとお前のおかげだな」

男「お前がいつも俺のことを笑顔にしてくれたから」

男「俺のヒネくれた性格も、少しは丸くなったんだと思う」


511: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:56:49 ID:GTJxri1i0

男「もしお前が皆に見えたら、女や女友とか、委員長たちとも友達になれたかな」

男「もし俺たちみたいに歩けたなら、またあの公園に連れて行ってやりたかったし」

男「ハンバーグも実際に食べさせてやりたかったな」

人形「     」

男「……なーんてな。あはははは……」

男「…………」


512: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:57:57 ID:GTJxri1i0

男「…………」

男「……グスッ……グスッ」


もう、込み上げてくる衝動を抑えられなかった。

堰を切ったようにあふれ出した涙は、ぬぐってもぬぐっても止まらず、

俺は、市松人形を抱きしめて叫んだ。



男「もっと髪を切ってやりたかった!」

男「もっとどこかに連れて行ってやりたかった!」

男「お前に触れたかった!」

男「お前を抱きしめたかった!」

男「お前ともっと……もっと、もっと!」

男「もっと一緒に……ずっと傍に、いて欲しかったのに……」


513: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 10:59:04 ID:GTJxri1i0

男「神様……」

男「神様……お願いします」

男「どうかもう一度、市に会わせてください……」

男「市と、ずっと一緒に、いたいんだ……」

男「市に……会いたいよ……」

男「市……、市!」ギュッ


514: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:01:00 ID:GTJxri1i0

男の涙が零れ落ち、人形の頬に落ちた。

すると、それに呼応するかのように人形が輝き出す。

白金色の光は人形と男を包み込みながら大きくなっていく。



目が眩むほどの強烈な輝きの中、男が恐る恐る目を開けると、

男の手にしっかりと抱いていたはずの市の人形は――、




――跡形もなく消え去ってしまっていた……。
 
 
 


516: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:01:59 ID:GTJxri1i0

そして――、









?「ふぇっきし!」










市「……あれ? 男さん?」

男「えっ?」


代わりに、目の前に人形と同じ着物を着た市が座っていた。


518: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:03:03 ID:GTJxri1i0

市「あっ、あれ、私……」

男「市……、お前!」ガシッ

市「おっ、男さん! 痛いですよ! ……あれ?」

男「えっ、痛い……?」

市「あれれ?」ノシ ブンブン

男「お前、体……」

市「……なんということでしょう!」

市「男さん! 大変です! 私、浮けなくなっちゃいました!」アセアセ


519: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:04:14 ID:GTJxri1i0

男「……ぷっ。あはは、あはははは!」

市「な、何で笑うんですか!?」

男「だってお前、それどころの問題じゃないだろ!」ケラケラ

市「わ、私には大問題なんですよ! もう!」

男「市!」ガバッ

市「きゃあ!///」

男「会いたかった」ギュッ

市「……男さん」ギュッ


521: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:06:08 ID:GTJxri1i0

男「なぁ、市」

市「なんでしょうか?」

男「ちょっと大きな声出すけど、我慢してくれよ?」

市「はい?」

男 スゥ…

男「俺、市が好きだ! 大好きだ!」

市「!?///」

男「神様お願いします!」

男「これからもずっと市と一緒にいさせてください!」

男「もう二度と、俺の傍から市を離さないでください!」

市「//////」

男「……神様、聞いてくれたかな?///」

市「……はい! きっと聞いてくれてますよ!///」


522: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:06:51 ID:GTJxri1i0

▼夜/男宅

男「……あの~、市さん?」

市「~♪」スリスリ

男「その……いつまでくっついていらっしゃるんでしょうか……?」

市「もちろんずっとですよ~♪」


525: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:08:48 ID:GTJxri1i0

市「男さんが傍にいて欲しいって言ってたじゃないですか」スリスリ

男「うっ/// それにしても、少しくっつき過ぎじゃないか?///」

市「そんなことないです。少なくとも今日一日はずっとこうしてますからね~」

男「いやでもまだ夜ご飯作ってないし、お風呂とかもあるし……」

市「そんなこと言ってもダメです。私は絶ーっ対に離れませんよ!」

男「あははは……」

市「無理やり離そうとしたってダメなんですからね」

市「『ずっと一緒』、これが私の新しい呪いですから」ニコッ


~ fin ~


527: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:12:03 ID:GTJxri1i0

以上で、

市松人形「私……呪われてますから」

は終了です。


ご支援くださった方、ご覧になられた方、
皆様に感謝御礼申し上げます。

特に夜通し付き合ってくださった方、
お疲れ様です。




……実は、ちょっとした後日談もつくってありまして、このまま投下してもよろしいでしょうか?


529: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/28 11:14:24 ID:MdOcArzo0

乙!
久しぶりにいいものを見た!

・・・まだあるの?
眠れないんですがwwwww


531: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/28 11:15:19 ID:RrdbBoSH0


まだ寝れないのか、続きよろしくです


532: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:18:38 ID:GTJxri1i0

その前に、途中で出た疑問にお答えしておきます。

Q、美容師になるんじゃないの?

A、あれは「人形に話しかけながら髪を切っている」という男はキショイということで、
  男に、「それをやっているのは理由があるんだよ」という正当性のようなものを持たせるため、
  女や女友たちが勝手に勘違いしてるだけという設定です。
  
  わかりにくくてスミマセン。
  この説明もわかりにくですね。スミマセン。


では、後日談始めます。


535: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:22:27 ID:GTJxri1i0

【後日談】 ~After story~



▼後日/夜/男宅

市「ハンバーグ……何度食べてもおいしすぎます……」ウルウル

男「おおげさだよ」

市「だって本当においしいんですもん!」

男「そうですか。ま、お口に合ったようで何よりだ」

市「なんで男さんのハンバーグはこんなにおいしいんですか!?」

男「実は俺のハンバーグは特別な調味料を使ってるから、ウマイはずなんだよね」フフン

市「特別な調味料!? 何々、何を入れたんですか!?」ワクワク

男「市への愛」

市「ふぇっ!?///」


538: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:23:48 ID:GTJxri1i0

男「なーんて冗談だよ。実は俺のはひき肉じゃなくて、牛こま切れ肉を細かく切りたたいて――」

市「//////」

男「あれ。市、どうした?」

市「う、うるさいです! 男さんの変態! 助べえ! スケコマシー!///」タッタッタ

男「おい、市!? どこ行くんだよ!?」


539: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:25:28 ID:GTJxri1i0

▼某日/夜/男宅

男「市―。お皿取ってー」

市「はーい。……あっ!」ツルッ

―― ガチャーン!

男「うおっ! 大丈夫か!?」

市「うぅ……またやってしまいました」


▼某日/昼/男宅の庭

市「男さん、面白いの見つけました! これ見てください!」

男「どうした?」

市「ほら!このカタツムリの殻――」

―― ドゴォ。

市「足の小指ぶつけ○▼*#$%」ジタバタ

男「おいおい。大丈夫か……」


543: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:28:06 ID:GTJxri1i0

市「うわーん! 男さーん! 車に泥はねられたー!」ボロボロ



市「うわーん! 鳥のフンが落ちてきたー!」ボロボロ



市「うわーん! 野良猫にひっかかれたー!」ボロボロ




男「……なぁ市」

市「何ですか?」

男「今まで俺にかかってた呪いってさ……」

市「はい」

男「お前の運の無さが移ったんじゃないか……?」

市「……」

男「……」

市「……はっ!? 言われてみればそんな気がする!」


544: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:29:29 ID:GTJxri1i0

男「気がするじゃねぇ! この感染源が! 成敗してくれる!#」

市「し、知りません! 呪いのせいですー!」タッタッタ

男「待ちやがれ! もう逃がさねえぞ!」タッタッタ

市「知らないですー! 許してくださーい!」


546: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:31:55 ID:GTJxri1i0

▼某日/昼/コンビニ

―― ウィーン。

市「い、いらっさいませー!」

「マイセンライト、ボックス」ボソッ

市「へっ?」

「マイルドセブンのライト、ボックス!37番のヤツだよ!#」

市「は、はいっ! 少々お待ちください!」アセアセ




男「すみません。アイツまで雇ってもらっちゃって」

男「こんな事情ですから他じゃ頼めなくて……」

店長「いいのよん。人形から人間にだなんて素敵じゃない」

店長「普通なら信じられない話だけど、私は男君たちのこと信じるわ!」


547: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:33:13 ID:GTJxri1i0

男「何から何までお世話になります」

店長「大丈夫! 男君の頼みなら、例え火の中水の中草の中ドブの中よ!」キリッ

男「ありがとうございます。相変わらずキモイですけど」

店長「イヤン! その冷たさにシビレちゃうわー!」クネクネ

男(すごい感謝してるんだけど、ホント慣れないなコレ……)


549: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:34:13 ID:GTJxri1i0

市「―――!――!」アセアセ

客 スタスタ

市「―――――!」ペコペコ



店長「ちょっとそそっかしいけど、真面目だし、素直でいい子よね」

男「はい。ビシっと指導してやってください」ペコッ

店長「……わかったわ。私に任せなさい」クルッ

男「店長?」


550: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:38:45 ID:GTJxri1i0

店長(あの男君が、誰かの為に頭下げるだなんて)

店長(よっぽどあの子のことが好きなのね。……妬けちゃうわ)

店長(でも、それだけ男君が成長して大人になったってことじゃない)グスッ

店長(それに、あの男君が、あんなに楽しそうなんですもの……)グスッ グスッ

店長(これ以上に、嬉しいことないじゃない!)グスッ

男「店長……?」

店長「オドゴぐん!」グスッ

男「はっ、はい!」ビクッ

店長「幸ぜに……幸ぜにな゛っでね゛っ!」グスッ

男「……ありがとうございます、店長」


552: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:40:02 ID:GTJxri1i0

▼某日/昼/駅前

女友「ほら、これが私の彼氏よ」

女友彼「はじめまして。女友がお世話になってます」

女「はじめまして」ペコッ

委員長「はじめまして……」ペコリ

女友「大学の1つ上の先輩で、私がゾッコンして口説き落としたわ」 b ビシッ

女友彼「いやまぁ、あはは……」ポリポリ

女「いいなぁ。幸せそうで」

委員長「はい。うらやましいです……」


554: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:41:15 ID:GTJxri1i0

女友「そういうアンタたちは男とはどうなってるの?」

女&委員長 「「えっ!?」」

女友「どっちでもいいから、卒業してから少しは進展したの?」

女「わ、私はその、たまにメールしたりとかしてるよ///」

委員長「私も……メールしてます///」

女友「メールって、ダメだこりゃ。 ――って、あそこに歩いてんの男じゃん?」

女&委員長 「「えっ!?」」

女友「おーい!男ー!ちょっとこっち来―い!」


556: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:44:31 ID:GTJxri1i0

男「大きな声で呼ぶなよ、恥ずかしい……」

女友「いいじゃないの、いいじゃなの」

女「や、やぁ! 久しぶり!」

委員長「お久しぶり、です……///」

男「二人とも久しぶり。なんか懐かしいな、このメンツ」

女友「そこに新入りが一人! ホイこれ、私の彼氏! ちなみに1コ上よ!」

女友彼「はじめまして」

男「どうも、はじめまして」ペコッ

女友彼「キミが噂のハサミ使いのプリンスか、会えて光栄だよ」

男「そ、そういう言い方はヤメてください///」

女友彼「ははは」


559: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:48:36 ID:GTJxri1i0

女友「ところで男、後ろの女性はどなた?」

市「わ、私ですか!?」アセアセ

女友「そっ」

男「あっ、いや、え~っとコイツはね……」

市「わ、私は市と申します! 皆さん、初めまして!」

女友「ワタシは女友。よろしくね」

女「お、女です。はじめまして」ペコッ

委員長「委員長……です」ペコッ

女友彼「初めまして、女友彼です」ペコ

市「あわわわっ。どうもどうも!」ペコペコ


560: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:50:56 ID:GTJxri1i0

女友「市さんは男の大学の人?」

市「いえ、ちっ、違います!」

女友「違うんだ? 男、何繋がりの人なの? こんな子、高校にはいなかったし……」

男「え~っと、あの……」

女「もしかして、男くんの恋人……?」ドキドキ

男「えっ!?///」

委員長「彼女さん……なんですか?」ドキドキ

男「うぇっ!? いや、彼女っつーか、なんとゆうか……///」チラッ

市「!?」


562: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:52:01 ID:GTJxri1i0

市(わかりましたよ、男さん!)

市(元人形の霊が人間にだなんて、普通はそう簡単に信じもらえないですもんね!)

市(……店長さんは別ですけど)

市(大丈夫です! ここは私に任せてください!)

市(この場は私が上手くおさめてみせますから!)クワッ


563: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:53:06 ID:GTJxri1i0

市「いや、彼女だなんて違いますよ!」

市「私はただ、男さんと一緒に暮らしてるだけの者です!」

男「んなっ!?」

女「えっ……」

委員長「うそ……」

女友「ウヒョヒョー!まさかの展開ktkr!www」


565: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:57:37 ID:GTJxri1i0

女「男くん、それって……どういう意味?」ゴゴゴゴ

男「待て! 落ち着け女!」アセアセ

委員長「彼女じゃない、でも、一緒に住んでるの……?」ゴゴゴゴ

市「はい!男さんが高校生の時からお邪魔させてもらってます!」

男「ちょっ、バカ!」アセアセ

女&委員長 「「高校の時から……?」」 ゴゴゴゴゴゴゴ

市「はい! 寝る部屋も同じでした!」

女&委員長 「「寝るのが同じ部屋……?」」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

市「 あっ、ちなみに男さんの寝顔ってすごいカワイイんですよー」ニコニコ

女&委員長 「「寝顔がカワイイ……?」 」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

女友「うひー!www こいつはたまらんwww」


566: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 11:59:06 ID:GTJxri1i0

男「ちょ、市! 何話してんだよ!」ヒソヒソ

市「へっ?」キョトン

女「男くん。それってどういうことかな? かな?」ゴゴゴ

委員長「ちょっとそこの路地裏で詳しく聞かせてもらっていいですか……?」ゴゴゴ

男「うっ……」ギクッ

市「?」


567: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:00:58 ID:GTJxri1i0

男「い、市! 逃げるぞ!」ガシッ

市「えっ!? でも――」

男「いいから! 行くぞ!」ダッ

市「うわわー!」ダッ

女「あっ! 委員長ちゃん、追うよ!?」ダッ

委員長「はい、逃がしません……!」ダッ

女友「頑張れよー」ノシ ヒラヒラ





女友彼「……俺の出番ってこれだけ?」

女友「仕方ないよ。後日談だけのキャラなんだし」

女友彼「トホホ……」

女友「それでも、私はアンタが大好きだよ///」ダキッ

女友彼「そっか。ありがと、俺もだよ///」

女友「///」


571: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:02:23 ID:GTJxri1i0

▼夕方/男宅

男「あぁ~……疲れた……」

市「結局、女さんたちにも捕まってしまいましたしね……」

男「誰かさんが肝心な所で転んじまったからな」

市「うぅ……。で、でもいいじゃないですか。私の事信じてもらえたんですし!」

男「女友は最後まで半信半疑だったぞ?」

市「い、いいんですよ!大丈夫なんです!」

男「何が大丈夫なんだか……」



市(でも別れ際に女さんと委員長さんから)

市(「私達はまだ負けたわけじゃない!これからが勝負!」 と言われましたけど)

市(アレはどういう意味なんでしょうか……)



男「どうした?」

市「いえ、何でもないです」


572: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:03:54 ID:GTJxri1i0

▼某日/夜/丘の上公園

男「懐かしいな、ここ」

市「あれから来てなかったですもんね」

男「前はよく来てたんだけどなぁ」

市「私が来る前ですか?」

男「そう。友達はいない、家に帰っても誰もいない」

男「出かける所も無くて、やりたいことも何も無い」

男「だからここで、日が暮れて夜になっても、ずっと街を眺めてたよ」

男「何考えて眺めてたのかは思い出せないけど」

市「……」


574: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:06:10 ID:GTJxri1i0

男「悪い。なんか暗い話になっちゃったな」

市「そんなことないですよ」

市「ただ、それも信じられないくらい――」

男「?」

市「――男さん、本当によく笑ってくれるようになりました」

男「//////」

市「最初のトゲトゲしさが嘘みたいに、今はもう何でも話してくれますしね。ふふ」クスッ

男「……ふん///」


576: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:07:28 ID:GTJxri1i0

男「そういえばあの時、何言おうとしてたんだ?」

市「あの時?いつのことですか?」

男「卒業式の前日、市が消えちゃう時のだよ」

市「消える……時?」

男「ほら、願いが叶うなら~って」

市「ん~……」


577: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:08:16 ID:GTJxri1i0

市(あの時はたしか、消えちゃうならもっといろんなことしたかったな、とか)

市(男さんみたいに私もなれたら、って思って///)

市(それでずっと、……って///)

市「わ、忘れちゃいました!///」

男「……嘘だな?」

市「嘘じゃないです! ホントに忘れちゃったんです!///」

男「ふぅ~ん」


578: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:08:58 ID:GTJxri1i0

市「おっ、男さんこそ、私がいなくなったら泣いてたんじゃないですか?」

男「はぁっ!?///」

市「そういえば私が戻ってきた時、男さん涙ぐんでたような気がしますし」

男「そ、そんなことねぇよ!///」

市「私がまた男さんに会えたのも」

市「男さんが『私に会いたい』って願ったからなんじゃないですか?」

男「違う! ってか覚えてない!///」プイッ

市「じゃあ私の方も全然覚えてません!///」プイッ


579: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:09:51 ID:GTJxri1i0

男「…………//////」

市「…………//////」

男「……もしかしたらだけど」

市「?」

男「もしかしたら俺達、同じこと願ったのかもな……///」

市「そうかもしれない、ですね///」

男「//////」

市「//////」


580: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:11:00 ID:GTJxri1i0

市「私達、ずっとですよね」

男「?」

市「これからもずっと一緒にいられるんですよね!?」

男「あぁ。そうだよ」

市「本当にずっと一緒ですよね!?」

男「もちろん。神様にもお願いしたろ?」


581: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:12:29 ID:GTJxri1i0

市「…………うん。よし! あの、男さん」スッ

男「何?」

市「え~っと、あのですね……」

男「どうした。急にそんな姿勢正して」

市「コホン。改めまして、私、元市松人形の霊だった市と申します」

男「……」

市「不束者ですが、これからもよろしくお願い致します」

男「あぁ。よろしくな」




市「先に申しあげておきますと、私――」

市「男さんを愛してます///」ニコッ


582: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:12:47 ID:GTJxri1i0

▼公園からの帰り道

男「―――――――。―――。」

市「――――。」

男「――。――――?」

市「――。―――。」クスクス


583: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:13:27 ID:GTJxri1i0

市「――あっ」

男「ん、どうした?」

市「い、いえ。大したことじゃないんですけど……」

市「そういえば、もう1つの願いも叶ったなぁ~って思いまして」

男「もう1つの願い?」

市「いえ、やっぱり何でもないです! 忘れてください!」アセアセ

男「?」


585: ◆j9t2MtZrb2 2013/03/28 12:14:14 ID:GTJxri1i0

夜空に幾千の星たちが浮かび輝く、公園から帰り道。

繋いだ男さんの手はとても温かく、このままどこまでも歩いて行けるような気がした。

神様……私の声はまだ聞こえていますでしょうか。

私からの、最後のお願いです。

このままずっと。これからもずっと。

男さんとこうして、一緒に……。

大好きな男さんと一緒に、ずっと、ずっと。


――The end.


586: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/28 12:15:15 ID:jN0zM2RQ0


ほっこりした


587: 梓--° ☆ ◆Azusa.RUX. 2013/03/28 12:16:44 ID:HKhgnuEp0

泣いた(´;ω;`)

市ちゃんください…


589: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/28 12:17:28 ID:MdOcArzo0

乙!
今度こそ寝る!


・・・これマジに単行本化できるんじゃね?


引用元: 市松人形「私……呪われてますから」

[ 2013年03月30日 06:22 ] [オリジナル]人外・妖怪 | TB(0) | CM(0)
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